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写真家の池本さんに「あんたも色々書いたものがあるだろう
見せてもらえないか」と言われたので
「ありますけど、何処にしまったのか…」とゴソゴソすると
「そういう記事はな、コピーするか、パソコンに入れるんだよ」
と言われたので、今日からアーカイブを始めます😅
下の記事は読売新聞の文化欄「潮音・風声」2006年の1月の連載です
「匿名の時代」
手元に「アメリカンバーバーショップ」という本がある
著者は心理療法士で、全米の半分の州を廻り
多くの古い理容店をカメラで記録したのである
なぜ心理療法士が理容店の本なのか
アメリカはかつて人種の坩堝と呼ばれ
様々な人や文化が溶け合うことで
多様性と活力を生んで来た
しかし今では
夫婦で経営していた食料品店や衣料店などが
大型スーパーやチェーン店に代わられてしまい
どこもコピーしたように同じ顔の街になってしまった
そこでは名前も知られず、言葉を交わすこともなく
人は匿名の存在になってしまう
この匿名という自由で不安定な存在が
現代の多くの病理を生んでいるのではないか
しかし、昔ながらの理容店は違うと彼は言う
そこではブルーカラーもホワイトカラーも老若も関係なく
ゴシップから政治まで様々な話題が語り合われ
コミュニティの要となり
アメリカのデモクラシーの草の根となった
そんな場所を我々は失っても良いのだろうか、と
我が国でも地方の時代と言われながら
モータリーゼーションやグローバリズムという波の襲来で
全国の商店街は疲弊し、郊外には大規模店やチェーン店が立ち並び
どの町も同じ顔になってしまった
そして匿名の存在はネットの中でも増え続けている
江戸時代には浮世床として、近年では地域のサロンとして
コミュニティーの要であった理容店は
匿名の時代に、希薄化する人間関係の中で
豊かな時間をどう取り戻すのか、模索している

明日に続きます😅

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