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逢坂冬馬著「同志少女よ、敵を撃て」

いよいよ来週発表の直木賞ですが、今回はデビュー作が候補になった作品があって、とても楽しみです。その作品がこちら

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独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵"とは?(本作品カバーによる)

主人公セラフィマが、似た境遇の仲間との葛藤、狙撃手という軍内部での嫌われ者としての差別、女性としての差別を引き受けながら変化していく過程の描写は秀逸だと思います。参考文献を読み解いた結果だと思いますが、旧ソ連が仲間といっても実は多様で、ロシア人だけではない。カザフ人、ウクライナのコサック、貴族出身の娘など出身立場が様々であることは抱える問題や意識も多様であることなど、私のような無知な人間が読むと物語の大きさに驚いてしまいました。

さらに実際の歴史において実在人物リュドミラ・パヴリチェンコは309人のドイツ兵を射殺した英雄ですが、実は孤独で悲しみに満ちた小柄な女性であったことも初めて知りました。

しかしこの小説は戦争を描いてその教訓を示したものでなく、主人公がただ一つの「命の意味」を知り得たことが尊いということをテーマにしている点も評価されたのではないかと思います。

アガサ・クリスティ賞受賞では選者が満場一致だったそうですが、さて直木賞としてどうなのか、気になるところですね。

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