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ペアリングイベント2の話 ②

イベントあるとネタには困らないなあ。
というわけでカクテルから話しましょうか。

今回は前回書いた通り、ケーキ用にクリエイション(No.1)とプティフール用にクラシック(No.2)という構成。

なぜクラシックを組み込んだか。
「手を抜いたな?」という印象を受けるかもしれないけど然にあらず。
ざっくり書くとクラシックは十分にデザートに対応し得るというのを証明したかった。
今回はNo.1、ケーキ用カクテルの解説なのでそちらの話はまた次回にでも。
ではとりあえずレシピ。

Cocktail No.1
<swirling / champagne glass>
ドランブイ 20ml
シャルトリューズ ジョーヌ 10ml
タリスカー10y 2tsp
スパークリングワイン 50ml
河内晩柑 15ml
ライム 1tsp
ピンクペッパー 少々(潰しながら散らす)
ローズマリー (炙ってグラスの縁に添える)

今回はアルコール感ゴリゴリのハードなカクテルとなってしまった。
お酒の弱い方には申し訳ないと思いつつも、主軸となったドランブイ+シャルトリューズ ジョーヌ×スパークリングワインという(自分にとっては)新鮮なアプローチをどうしても手放すことができなかった。
このカクテルは「ソースをドリンクとして飲める粘度まで下げる」という発想から生まれた。
今回のケーキ、ドリンク側からするとかなり道を塞がれた作りになっている(前回もそこそこ塞がれていたが)。
おさらいとしてケーキの構成をもう一度。

フェルネットブランカのジュレ、フェルネットブランカとカルダモンのムース、レモンチーズケーキ、砕いたサブレ

食べないとわかりづらいだろうけど、食や飲料に関する要素がほぼ全て詰め込まれている。
僕の感覚だとだいたい以下のような構成要素という印象を受けた。

ジュレ=苦味、仄かな甘味
ムース=香、甘味
レモンチーズケーキ=甘味、酸味、仄かな苦味、油脂
砕いたサブレ=テクスチャ、塩味、油脂

つまり、ドリンクの付け入る隙が無いとまでは言わないが、極端に狭い。ちなみにジュレのパートはアルコールもある程度残っている。
救いだったのは甘みが軽かったこと。
もうひとつ、頭をひねりながら食べていて気づいた「ケーキは香りを大きくは発散しない」ということだ。
これは大きな発見だった。
つまり、ドリンクが注力すべくは「甘み」と「香り」。

まず甘み。
ケーキ全体から見てジュレは間違いなくアクセント。ムースは導入と緩衝。ボトム(=メイン)は誰が見たってチーズケーキ。
ならばチーズケーキに合うソースを考える。
オレンジ、グレープフルーツ、チョコレート、カシス、イチゴ…どれも凡庸かつ支配的過ぎるものばかりでピンと来ていなかった。
その時にチーズならハチミツ!と思い浮かんだ(ハチミツだって凡庸ではあるが…)。
そこから、「まんまは重い。ならそれを使っているリキュールを真ん中に据えれば良いのでは?」と繋がってドランブイとジョーヌが浮かぶ。
甘さと重さの軽減に河内晩柑とライムを少々。
あとはある程度の酸味を持つスパークリングでupすれば発泡感でキレも出せる、とまとまった。

そして「香り」。
これはフェルネットブランカとの繋ぎを目的とした。
使ったのはローズマリー。
おそらくこのアマーロ自体にも使われているんじゃないだろうか(使用ハーブは非公開となっている)。
単に飾るだけでは弱いので炙ってからグラスの縁に乗せることにした。
飲むには少々難儀するけど、あの独特な香りで飲む前の印象づけには非常に効果的。
そしてこれだけだと全体に少し物足りなさを感じたので、視覚的演出+口に含んで潰した時のテクスチャ&華やかな香りの広がりで変化を持たせたくてピンクペッパーを散らした。

本来、これで完成だったのだけど、最後の最後でリキュール2種の状態でテイスティングしてみるとウイスキーの香りがとてもよく香った。それならドランブイのベースと言われているタリスカーを少し加えてもうちょっと輪郭を強くしようとわずかに加えることに。
ドリンクとして仕上がるとやや取りづらかったかも知れないとは思うけど(ご参加いただいた方々、いかがでしたでしょうか?)、こういう隠し味が大事だと思っている。ソース製作時におけるローリエみたいなポジション。

次回はNo.2、クラシックの名作”Hanky Panky”の話をお送りします。(予定)

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