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Dempsey ~僕らは古典の上で踊るだけ(かも知れない)

今回のカクテルはツイストではなくクラシックそのもの。
なぜ取り上げたかというと、先日の”Jack the Juniper”が出来上がってスッキリした気持ちになっていた時に見つけて「しまった」からだ。
載っていたのは愛読書(?)のSavoy Cocktail Book。
全く見落としていた。
考え始める前に見つけていたらあんなに悩んで作らなかったのに…まあ隅から隅まで読み込むといった本でもないし、作ったこと自体は糧になったと思う(いや、何がなんでもそういうことにしたい)から良しとしよう。
まずはレシピ。

Dempsey
<stir / cocktail glass>
カルヴァドス 1/2
ジン 1/2
アブサン 2dash
グレナデンシロップ 2dash

ライムジュース&シュガーシロップを抜いてアブサンとグレナデンシロップ。
違うと言えば違うけど酷似していると言えばしている。なにしろ方向性もレシピもほぼ同じ。

誓って書くけど、自分のレシピを作り上げるまで知りもしなかった。
これは1:1+bittersで化粧を施す構成。
微かな酸味をグレナデンで、カルヴァドスとジンをアブサンで繋ぐイメージだろうか。
なかなかパンチの効いたカクテル。
名前の由来は同名のボクサーかららしい(正確には当時「世紀の決戦」とされたジェス・ウィラードとのマッチを観たことからのようだ。もちろんデンプシーの勝利に終わった)。
なぜジンとカルヴァドスの組み合わせとしたかの理由は見つけられなかった。たぶん迫力その他を度数の高さで表現したかったのだろうというところは想像がつく。

で、作ってみた感想。
なんとまあしっかりバランス取れているんだよ。自分のレシピで作ったときは1:1じゃバランス悪いと思って銘柄までこっちは指定したのに。
これは超がつく有名なcocktail bookに掲載されていたというプラシーボとかそういうものなんだろうか。
ちなみにstirとあったけど個人的好みはshake。その方がキャラクターが立つ。他の技法ならスローイングが適当と思う。
香りを立たせたい2種の合わせだし、エアを含ませた方が口当たりも良くなる。
まあだからといってサラッと飲んでしまったら後が大変かも知れない度数だけども。
なんならロックスタイルで少しゆっくり愉しんでもよし。
これは常時オーダー可能です。気になったらぜひ。
構成と度数の割にスイスイ飲めます(つまり危険)。

しかし今回のこの一件、古典とそれを作り上げてきた先達の偉大さを改めて感じさせられましたね。
去年(2022)伺ったBARでのバーテンダー氏の言葉を思い出した。

「今の人たちがやろうとしていることは大概はもう試されていて、残っていないものはそういうことなんですよ」

と。
あの時は「なるほどそんなもんか。」だったけど、自分が作ったものが酷似したものであった今、あの言葉とは少しズレるものの、やはりヒトの思考とは時代が違えど根本は変わらないのだ、と身を以て実感。

けっきょく僕らは古典(≒先達)の上で踊っているだけなのかも知れない…。
とは言え自分なりに思考してものを作り上げるのは楽しいし、糧にもなるので今後も続けていく所存です。

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