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てのひらに 名前なきまま

気になるバンドを高円寺まで

なじみのない道を
知った顔で歩いていく
通りすぎたり 止まっている人たち
多くもなく 少なくもない
生活の営みが見えるほど
だれかとの距離は近くもないのに

ライブハウスの暗がりには
見たら思い出した顔

めんどうなわけではない
嫌いになったわけではない
いまの気分の動きを求めていない
ストーリーやルールに入ってこない
それだけのこと

ベーシストの足もとに
ペットボトル置くのが合図
ひかり落とされライブは始まる

バンドとステージと僕
目に映る知らない人たち
遮るもの なにもなく

すべて 音にくるまれ 広がる

ただ感情が動かされていく
知っている言葉になる前に

意外なあのときの記憶
鼓膜と皮膚のあいだ 透明に流れゆく
そうか そうだったんだ

音は止み
名前のないままの感情を
名前つけないまま

革の鞄 背負いなおして
なじみのない道を
知った顔で歩いていく

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