バルトの森

旅する食文化研究家、エッセイスト。エストニア共和国外務省公認市民外交官。駐日エスト… もっとみる

バルトの森

旅する食文化研究家、エッセイスト。エストニア共和国外務省公認市民外交官。駐日エストニア共和国大使館、駐日欧州連合代表部、来日アーティストに料理提供。レシピ開発やワークショップ、食文化講演を行う。 書籍『旅するエストニア料理レシピ』『バルト三国のキッチンから』(産業編集センター)

最近の記事

リトアニアでハチミツケーキを教えてもらったら大変なことになった話(前編)

「どの話から書けば良いか」というほど2023年夏のバルト三国にもさまざまな記憶が残った。今回はリトアニアのハチミツケーキから巻き起こった話を書くことにしよう。 バルト三国のハチミツケーキ ラトビアに行くと、カフェには大体ショーケースの向こう側にハチミツケーキが並んでいることが多い。 ラトビアではMedus Kūka(メドゥースクーカ)という名前で呼ばれている。ただ、ラトビアだけかというとそうでもなく、エストニアではMesi kook(メシコーク)、リトアニアではMedut

    • バルト三国へ旅をする荷造り(長期(1ヶ月〜編))

      2023年夏。8月の最初から最後までをバルト三国で過ごすこととなった。旅程はこんな感じだ。 8月1日から9日 エストニア 8月10日から11日 ラトビア 8月12日から19日 リトアニア・ラトビア 8月20日から27日 エストニア 8月28日から31日 フィンランド 今年の夏は異常に暑かった。いや、まだ続いているから、異常に暑い。という現在形を使おう。 日本の夏に比べれば大したことない北欧やバルト三国の夏ということは明らかだが、その代わりクーラーはほとんどないので30度を超

      • 夏のバルト三国の旅は、果たして最高なのか?

        バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)には大体夏に渡航するのが我が家の習わしである。2017年の年末から年始にかけて行った10日間は、ずっと曇りか漆黒の夜だった。エストニアの帰りは乗り換えのために寄ったヘルシンキの1泊で初めて輝かしい太陽を見て「太陽って大事だよ」と、外で感動して泣きそうになったのを記憶している。 「太陽がないだけで、本当に鬱になって自殺する人がいるのか?」という眉唾話を信じていなかった私だった。が、本当なんだろうなと実感した。 それからは、太陽がない

        • タルトゥの壁を楽しむ

          エストニアのタルトゥの街歩きはいつも私の目を楽しませてくれる。 ほとんどの日本の皆さんは、エストニアに行くということは、イコールタリン日帰りか1泊、フィンランドのヘルシンキから2時間のクルーズでエストニアに「立ち寄る」のだ。観光客にとってはタリンは行きやすい便利な場所なのだから納得である。 だから、自ずとタルトゥに来る観光客は圧倒的に少なくなる。タルトゥという街はエストニアで2番目に大きな街である。首都のタリンが43万人(2018年)で、タルトゥは9万3000人(2018年

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          黒いツェペリナイ

          リトアニアで有名な料理がいくつかあるが、現地に行ったことのある方なら知っているのが「ツェペリナイ」だ。ツェペリナイは簡単に説明すると肉がマッシュ状になったじゃがいもに包まれた料理だ。 この料理を教えてもらう前に、ネット上に載ったさまざまなレシピでこの料理を数回作ったことがあるのだが、1度として成功したことがなかった。何が成功ではないと言えるのか? 一目瞭然。この料理の肝である挽肉を包むじゃがいもがすべて溶けてなくなってしまうのである。この原因を解明すべく、リトアニア滞在時には

          黒いツェペリナイ

          カウナスの「芍薬園」

          植物園に行くことが好きな私は、旅に出かけると時間があれば、植物園に向かう。 リトアニアのカウナスという国内第二の都市に植物園があることに気づいた。カウナスはリトアニアの首都ヴィリニュスに比べて人が少なくて街がのんびりしているところが好きで、取材と取材の間にカウナスをうろうろしていることが多かった。 この日は何も予定がなかったので、カウナスの中心地からバスで30分程度離れた植物園(VDU Botanical Garden)に行くことにした。 6月下旬に差し掛かる頃だったのだが、

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          平坦な国の最長の川 

          ラトビア最長の川であるガウヤ川(Gauja)は長い。452kmである。日本最長の川は信濃川だが、その距離は367kmだから長さとしてはガウヤ川には及ばない。ラトビアの国土は東西に長く、北海道のおよそ80%の国土を持つ。 地図を見るとその流れが面白い。日本の河川はたいてい一直線なのだが、ラトビアの場合は高低差がほとんどないため、どんな流れにもなり得る。 ちなみに、ラトビアの最高峰はガイジンカルス(Gaiziņkalns)という丘で312mでそれ以上高い地点はない。この国がどれ

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          ブログ「旅、またたび」を始めます

          こんにちは。リアルを伝えるバルト三国の情報サイトを始めて、はや3年が経過しました。 コロナ禍だったことで現地に行く手段を閉ざされたため、情報を入手し日本の皆さんにバルト三国を紹介するためのwebサイト「バルトの森」を始めたのがきっかけです。 2022年夏に3カ国を取材した本『バルト三国のキッチン』(産業編集センター)が2023年6月14日に日本で発売されました。ありのままのバルト三国を自分が経験したことを書き綴った本です。 ブログのタイトルは「旅、またたび」です。旅に行くと

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