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香港にあるお金のゆくえ

震災じゃない離婚

そろそろ「あれ」から13年も経つから勝手に時効としよう。
「あれ」とは離婚だ。かつて私は27歳で結婚して35歳で離婚した。
2011年東日本大震災の年だった。「震災離婚」「震災結婚」という言葉が流行っていた記憶もあるが、震災とは関係なくそれよりも先に私たちは離婚を決めていた。

私は離婚後に親から受けた姓に戸籍、保険証、自動車免許、パスポートなどすべてを戻した。謎に多くの銀行口座があり(どれもたいして入っていないのだが)その名義変更にはおよそ2年かかった。
すべて旧姓に戻したはずだったが、実はひとつ放置していたものがあった。

香港

それは、香港の銀行口座の名義だ。
2008年から2年ほど私は香港に駐在していた。当時はネットで手続きなどない時代で用があれば、ATMか銀行の窓口に行くのが普通だった。
折しもリーマンショックが2009年に起こり、例に漏れず景気に左右されるため、帰任が命ぜられた。私は香港から完全帰国することを渋り、日本の本社で働きたくないという理由から、会社を辞めるほど香港の生活好きだった。そんなことだったから、旅行でもまた香港にたまに行こうという気持ちを持ち続けるためにも香港の銀行口座は閉じなかった。
どこの国でもそうだが、銀行口座を持つということはハードルが高く現地法人を通じて給与を日本側の銀行と香港の銀行に半分ずつ入金してもらうことで生活していたので、香港の銀行は必要だったし、一度保有したら簡単に手放そうと思えなかった。

香港ドルを使わなかったわけ

私が日本に戻ってから香港は激動の時代に突入した。2014年は雨傘運動で瞬く間に情勢が不安定となり、香港ドルは弱くなることも多くなった。
その間、私はほとんどこのカードは使わず、少し安定した2016年ごろに一度割に高価な通勤バックを日本で購入したが、それでも通帳には残高は残りおよそ60万円ほどあった。
この運動以降、香港に行きづらい状況が続き、現在も中国政府のパワーが強まっていると日本からも感じているので、昔からの中国をよく知る周りの友人も好んで中国大陸はもとより、香港にすら行くことはなくなってしまった。私も例に漏れず同じだった。
当初の気持ちに反して、香港との接点がなくなってしまったのだ。

口座の名義人証明

先日、7月に旅をしようと我が家のエストニア人と約束していた。行き先は当初日本の離島だった。しかし、離島への交通費が意外と高く、苦肉の策ではあるものの、台湾や香港、韓国も考えてみることにした。意外にも香港のフライトが安いので、ノリで香港に決めた。

香港に行くならと例のクレジットカードを探し出したら、有効期限が「12/23」だ。その意味は2023年12月まで。
これはまずい。
香港にはこのカードと通帳を持って行き、銀行の窓口でなんとかしないといけない。現地に住所がないので、カードは受け取れないので口座を閉じるだろう。香港ドルですべてを受け取るということになればまずまずといったところ。最悪、滞在期間が受け取れないことも覚悟の上だ。
カードと通帳は離婚前の姓だから、離婚前の姓の私が私であることを証明する必要がある。その辺で拾ったカードではないということを窓口でわかってもらえるのか。

当時の在留許可証と2冊前のパスポートも持って行こう。
期せずして「あのころ」の私の欠片を香港に連れて行くのは感慨深い。


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