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文学フリマ東京38 に出店しました!



お肉

文学フリマ東京38に出店してみようと決めたのはいつだったか、今年の初めだったかと記憶している。

祭りや人がたくさん来るイベントは苦手な性格で、大人になってからは花火大会などはあまり行く勇気がない。
ただ、昨年の秋ごろから「てぬケット」「Juhla Fes」などで出店させてもらえる機会があり、出店する前は憂鬱なのだが終わると爽やかな疲労感で心地良くなることがわかった。
「意外と好きなんじゃないか?」と感じてはいたが、一緒に出店する仲間と合同のブースだったから助けられていたのだろうと納得していた。
そんな中、文学フリマ東京もタイミングよく募集を開始する告知を見て、勢いに任せて申し込みすることにした。ただし今回は仲間はいない。完全に一人で搬入、接客をする必要がある。
申し込みが早いと抽選することなく参加ができるので、解禁日に申し込んだらそのまま参加費用を支払うことになった。

初めはカタログが何を意味するのかわからずしばらく放置していたが、Xで他の出店される方がうまく紹介しているのを参考にして、慌てて登録したあり様だった。
私の場合は、特に新しい作品もないので、まずは出店経験を一人でしてみようと「ごく低レベル」な目標を掲げ参加した。出店ブースの場所に一喜一憂しているXでの人々を横目に、何がなんやらだったので、とにかくO-29だよということを知っていただこうとつぶやき始めた。
後から友人に言われたのが「すごい、O-29 お肉やん!」
盲点だった。

以下カタログのラインナップだ。

人の温かさ

主にXとFacebookで文学フリマの出店場所の告知をし、お会いしたことのある方が直接「行くよー」と言ってくれて嬉しかった。特にブースの商品を買っていただかなくても、顔だけ見せてくれて一人じゃないんだという気持ちにさせてくれるだけでもう大満足なのだ。これらの人の優しさに触れ、逆に自分もそうしたいと思った。

荷造り

事前に会場に送るサービスもあったのだが、荷物のことを侮っていた。「そんなに売れないよなぁ」と「もしかするともしかして売れちゃうかもしれない」という葛藤の末に、普段海外滞在する時に使う90リットルのスーツケース1つに全ての商品を入れていくことにした。
1つの商品は商業出版のため、出版社から1週間ほど前に仕入れ、その他は在庫があったのでそのままスーツケースに入れた。
2月に骨折しており(詳細は以下リンクどうぞ)、とてもではないが、行きは一人で運べないと前日に悟った。そして、根っからの祭りが苦手なので、あまりのXでの盛り上がり様に少し行くのがだるくなっていた。

荷物については遅いのだが、夫に行きだけ運んでもらえるかと確認し、快く引き受けてくれたので、行きはなんとか助かった。会場の入り口まで運んでくれ、あとは私の右手が頑張ってくれた。
夫の運搬費用はのちに5,000円ほど発生する。「いらない」と言われているが、こちらも仕事なので甘えるわけにいかない。

設営

会場は出店する私よりも早くに入場を待つ来場者の皆さんがすでに列を作っており、文学フリマというイベントの歴史の重みや根強いファンの熱意を感じた。
会場に入ると先に到着していた他の出展者の皆さんが手際よくブースを設置しているのを見て若干焦った。興奮気味の私はすでにシャツの下は汗が滲んでいたはずだ。
必死になって自分のブースに集中していると、お隣のブースの方がいらした。豆本を作っていた方で、以前私のトークイベントにお越しくださっていた方だった。さらにもう片方の隣にも出店の方がいらして、埼玉からお越しだと言う。自分のことでまずは必死だったので挨拶までして、それぞれの作業に開場まで集中していた。

会場のアナウンスは2分に一度くらい「出展者の印のアームバンドを無くしたら買い直してくれ」と言う大きな声が響き、他人との会話がほとんど聞こえず、少しやりにくい感じがしたが毎回どれだけの人が失くすのだろうかと気になった。

そんなこんなで謎の汗をかきながら、なんとかブースを作り、「高さはフリマを制す」と言うよく出店されている諸先輩のアドバイスに従い、販売しているてぬぐいをノボリのように高く掲げることにした。が!
いつも使っていたハンガーを忘れ、焦ったが、別の方法で吊るすことに成功した。ピンチの時には臨機応変というのは大事だ。
実は自分もトイレから帰る時に自分ののぼりを見てブースに戻ることができたのがとてもよかった。

O-29(お肉)ブースの完成

この後、てぬぐいは苔色が地味だと判断し、反対側に掛けていた琥珀色に変更したが、これが功を奏したか琥珀色が比較的多く売れた。

開場

前倒しでの開場かもしれないというアナウンスはあったものの、結果的に正午の予定通りだったが、たくさんの人がさまざまなブースを目掛けて列を作ったりしていた。隣のブースの方が苺の可愛いお菓子をくださったりチョコをくださったりして、優しい方に恵まれていた。腹が減っては戦はできぬと最寄駅のおにぎり店で買ったおにぎりを2つ頬張った。

夫が気に入って大量に買い込んでいた韓国のアーモンドの飴を購入者先着40名にプレゼントとして用意していたものがあった。そちらをお返しに(にもならないが!)渡して、お互いエールを送り合う形となった。

隣の方は何度も参加されているということでコツをよくわかっていて、開場直前と直後に目当ての本を買いに行っていた。私は自分のことで必死だったのでそんなコツも知る由もなく、椅子に腰をかけて来るかどうかわからない嵐の前に麦茶を飲んで座っていた。
しばらくすると、ミスドの注文待ちかなと思うほどの行列を作っていたブースが近くにあり、どんな本を売っているのかが気になっていた。「相当有名な人なのだろうなー」と、ただ感心していた。

閑古鳥からの人垣

私のブースはしばらく閑古鳥が鳴いていたが、開場から15分から30分ほどして目当てのものがゲットできた人々がフラフラっと寄ってくれるようになってきた。
接客していると、人が人を呼ぶのだろうか何人も人垣ができていることがあり、「もう一人接客が欲しい!」となった。
だが元々半分のデスクのエリアしかないので、二人いてもブースからはみ出すので、おそらく接客は難しかったと思う。この規模のブースなら一人で接客が最適解なのだ。

左右のブースの方も立ちっぱなしの接客をされていて、すごいと思いつつ私はちょいちょい椅子に座りながら麦茶飲んで適宜休憩していた。
私はなんとしても90リットルのスーツケースを自分で運べなかったため、帰りは一人で持って帰らないといけないというプレッシャーが頭をもたげ、1gでも軽くして帰ることが、いつしか目標に変わっていた。

さて、バルト三国の本というキャッチフレーズをずっと声をかけ続けていると通りすがった方が耳を傾けてくださり、購入してくれたりそうでなくても質問してくれるなど交流が続いた。
普段聞けないリアルな個人個人のやりとりで、バルト三国に対する認知度や、人々の興味、どんな人が自分の商品を買ってくれるのかといった生の声に触れることができるのが醍醐味だと感じた。
自分が当たり前だと思っていたことがそうではなかったりすると、考えを改めることができる。これが創作者としては何よりも大事な経験だ。

ありがたいことに拙著を出版してくださった産業編集センターさんの担当営業さんがいらしてくださったり、ワークショップ、イベントにいらしてくださった方が労いの言葉をかけてくださりながら商品を手にしてくれ、感謝の言葉しか出なかった。
また、トイレ休憩などでブースにいなかった時には、わざわざ私の帰りを待ってくれた方もいてありがたいことだと思った。

前日のやる気のなさを反省しろ自分。

ブースに来られたみなさんがお目当ての本を購入できていたり、文学フリマを楽しんでくれて帰っていたら嬉しいと思う。

結果として

初回の参加、新しい本も特にないにも関わらず、販売数としては書籍は残り1冊、冊子は半分ほど販売し、てぬぐいも数は少ないが売れた。ブースの撤収作業で荷物をまとめた後に、一人で持ち帰ることができると「ほっ」としたのだった。
総合的に判断して、これまで参加したマーケットのどの売り上げよりも、最も売れていた。イベントの主催の皆さんや、ボランティア、隣近所のブースの皆さん、開催前に弊ブースについて紹介してくださった方々、来場してくださった皆さんがいたからだと思う。そしてやっぱり心地よい疲れを味わった。

1,000円の入場料に関して

今回の文学フリマから入場料が発生したということで、賛否両論が展開されていた。この値段が高いか安いかは不明だが、有料で良かったと思う。
自分で主催するイベントも然りだが、お金を支払ってまで来る人は「必ず何か得て帰りたい」という人が割合としては多い。
主催の方も当日のXのスペースでおっしゃっていたが、手ぶらで帰る人は少ないと思った。また、人の質という意味では、変な人がほとんどいなかったと思う。たとえば、長話を無駄にする人やブースの前を占領する人、セクハラめいた発言や気分が悪くなるような行為をしている人は、少なくとも私の周りではいなかった。
有料になったから、イベント主催の会計は公開すべきだという意見があったが、特に必要ないしその権利は出店や参加者にない。むしろ黒字になっていないと継続できないだろうから困る。
イベントは主催者の負担は金額では変えられないほど大変なのは、自分が主催をしてみるとよくわかる。お金をいただいてもやりたくないのが経験上の感想だ。
だからイベントで少しの行き届かないところがあったとしても、それは普通のことだ。全員に平等にできることの方が奇跡だと思う。

ブースとしてお客様に声をかけた言葉

ありがとうの後に「スリに気をつけてくださいね」という言葉を購入した方には必ず付け加えた。私のブースではカードや電子マネー、交通系などほとんどすべての支払い方法ができた。
しかし、現金のみ購入できるというブースが多かったようで、現金が見えることが多く、かつ時に人がわんさかいたので、スリもいるかもしれないと感じた。
楽しかったのに帰ったらお財布がなかったとか、スマホがなくなっていたということがあったら、イベントの印象も悪くなり、悲しい気持ちになってしまうからだ。

文学フリマというイベント

このイベントに参加してみて強く感じたことは、紙媒体の作品を求める人と作る人がたくさんいるということと、本がまだまだコンテンツとしては終わりではなく、むしろ新しいものとして残り続ける未来を見た気がした。今後の創作していく自分に勇気をいただいたと思う。

幸か不幸か忙しくて写真を撮る暇はなかったが、心の中に楽しい思い出が詰まっている。調子に乗って帰宅途中の電車で次の文学フリマ東京と大阪をエントリーしたが抽選だった。
ラッキーならまた皆さんとお会いできたらと思う。

2024年5月19日あの場所にいた皆様ありがとう。

当日遠方で行けなかったという方や、あの時買いたかったけどお金がなかったなという方でご興味あれば以下のサイトで販売しています。

ワークショップなども開催していますので、バルト三国の料理に興味がある方はぜひどうぞ。


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