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反省のザワークラウト

バルト三国ではドイツ同様ザワークラウトをみんな愛している。前回のエストニア出張でもそれぞれが好きな店や農家からザワークラウトを買っている話を聞いた。

私と言えば親戚一同認知しているザワークラウト嫌いなのだ。
なぜならば、日本に輸入されている大きな瓶に入っているザワークラウトの香りを我が鼻腔が本能的に拒否するのだ。
だがこれは個人的な好みの話で、もちろん店にある瓶のザワークラウトに罪はない。

我が家では毎年クリスマスになるとこのザワークラウトに砂糖を入れ鍋で煮る。これを豚肉のかたまりと一緒にオーブンに入れる。この焼いた香りがまたザワークラウト嫌いからすると地獄のような臭気がしばらく台所を漂うのだ。

ザワークラウトと豚肉を一緒に焼いたらエストニア人にとって、最高のクリスマスディナーだ。毎年2人しかいない家で2キロほどの豚肉と瓶1本のザワークラウトで焼くとひとりしか食べないから、年明けまで確実に残る。これは拷問だ。

再度言うが、ザワークラウトに罪はないのだがトラウマだけが残る。

タリンの郊外に住むお宅にお邪魔すると、ザワークラウトが出てきた。
「知ってるの、Oliviaさんに聴いたわよ、あなたザワークラウト嫌いなんでしょ?」と私が苦手そうな顔をしていたのかとバレたかと思うタイミングでメンションしてくれた。
基本的におうちにお邪魔して好き嫌いは言わず、嫌いだったとしても必ずお皿に出されたり自分が手にしたものは食べるのが流儀であると決めているので、絶対に食べる。

知っていながら出してくれると言うなら、いただきます。

と心に決め、「今までに食べていたのは日本で瓶のザワークラウトなんですよ」と言うと、何かを悟ったかのように「食べてみて!」とパックを差し出してくれた。
瓶のザワークラウトの場合、蓋を開けた段階で鼻が壊れるのだが、不思議なことに何の香りもしない。メイン料理の隣にザワークラウト少しだけ盛り付け、口に入れた途端。

「これ、ザワークラウトですか?」

なぜならばザワークラウトの食べにくさが皆無だ。これならいくらでもいける。最終的にもう一度お皿にザワークラウトを今度は少し多めに盛り付けた。
何と言うことだ、ザワークラウトといえども千差万別。そのご家庭では気に入っているスーパーの惣菜コーナーで作られているザワークラウトだけを買うという。
このザワークラウトは私にとって、2024年冬の忘れられない味となった。

日本に帰国してから、先日大阪のRUJA+285BLUEさんでありがたくもメニューの監修などさせていただくアドバイザーとしての任務があった。4月11日のグランドオープンイベントに向け、前日に大阪入りをした。

お店に伺うと、オーナーさんが「ザワークラウトを自家製で作ったんです!」とおっしゃり、味見させてもらった。やっぱり日本でザワークラウトは手作りだなとこの時確信したのだった。
自分はきらいだからと言って、食べることも、作ることも、提案することも避けてきたのだが、好きだと言う人がいる。料理で仕事をする人間として自分は失格だなと思った。

大阪の出張から戻り、ふとオーナーさんに試食させてもらったザワークラウトの件を思い出した。先入観が強すぎて、何も考えられていなかったのだ。
自身のこれまでのザワークラウトに対する態度を改めようと、今日初めて漬けた。3日後に出来上がるらしい。

私の中で「おいしい」と思えるものを見つけられるかわからないが、嫌いなものが一転して楽しさに変化したような得した気持ちになった。

漬け始めのザワークラウト
(リトアニアでいただいたハチミツの瓶)

追伸
大阪のRUJA+285BLUEさんでは美味しいザワークラウトが出てきますので、ご賞味あれー!

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