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ブランディングはイノベーターの登場よりも前から始まっている

前回、南生協病院訪問記を書きました。
その中で、病院関係者と組合員(主に近隣住民)の合議によって病院づくりが進められていったプロセスを特徴として挙げました。ヒアリングではなくて、全員で決めるということ。
今回は、プロセスの重要性について考えます。

 もくじ
◾️イノベーションはイノベーター1人が興すのか?
◾️起源とプロセスがブランディングにつながる?
◾️中途半端なプロセスが透けて見えると炎上する?
◾️プロセスを見せる必要はあるか?

◾️イノベーションはイノベーター1人が興すのか?

「新しいこと(よくイノベーションと呼ばれるもの)を興す」という言葉を聞くと、良くも悪くもカリスマ性を持った一匹オオカミみたいな人間が、周りの反対を押し切って一人でイノベーションを成し遂げる絵面が思い浮かびます。
それは、イノベーションのベルカーブでいうところの1番左端(イノベータに該当する2.5%)の部分にいる人のことでしょうか?実は全然違います。

    (https://marketing-campus.jp/lecture/noyan/012.htmlより
このベルカーブにおけるイノベーターとは、新しいものを率先して受け入れる性質を持った人々のことです。
つまり、あるイノベーションが世に放たれたあとの話をしている図であるため、放たれる前(=構想・生産段階)を表している図ではありません。
スティーブジョブズはある意味ではこのイノベーター部分にプロットされるし、また別の意味においてはこのベルカーブの中にはプロットされないということになります。
となると、「先進的な一匹オオカミ(イノベーター)がイノベーションを雷雲と共に呼び起こす・・・!」というのはただのイメージであって、イノベーションは必ずしも一匹オオカミが興す必要はないようです。

◾️起源とプロセスがブランディングにつながる?

南生協病院では、多くの組合員(主に近隣住民)の人々とともに話し合いを重ねて、「みんなで考えた南生協病院」を誕生させました。
非常に穿った見方をすれば、話し合いを経て、もともと誰かが想定していたゴールへたどり着いたのかもしれません。
そうであったとしても、トップのみではなく、全員の合議で決めていくやり方は、今となっては珍しく、かつ非常に大切なプロセスだと思います。
決定過程に参加して、完成した(おらが村の)病院に満足している人。
その過程をあとから聞いて感銘を受け、その病院に集う患者や医療従事者。自分たちの病院にも取り入れられる手法はないかと見学に来る人々。
完成したあとに、さもそれっぽいストーリーを付与することは容易いことです。しかし、南生協病院のように、合議を経て完成したのだという事実は後から書き換えることはできません。
完成よりも前から、ブランディングに通ずるストーリーは始まっているのかもしれません。

◾️中途半端なプロセスが透けて見えると炎上する?

KIRIN午後ティーの炎上をご存知でしょうか。
キリンに対して「顧客を悪く描いて何が楽しいのか」の声| HUFFPOST

午後ティーを持った残念な女子4人をツイッターにアップしたところ、
「ターゲット層を馬鹿にするようなマーケティングをしている」
といった具合にさまざまな忌憚なきご意見が出て、ついにはKIRINが当該画像を削除することになりました。(それでもネットの海には永遠に流れ続ける恐怖。)
前述の忌憚なきご意見もごもっともですが、それよりも、
「どうせ会議では、“こんな女子いそう〜w” “わかるゥ〜w”って言いながら、中途半端に互いの意見に乗っかりあってワイワイガヤガヤ決まったんじゃないのか?」
と消費者に思わせてしまったことが特に問題だったと思います。
本当にそうやって決められたかどうかはわかりませんが、それを想起させたことや、その推測を聞いて「あり得る・・・」と思われた以上、それはもう事実かどうかが問題ではありません。魔女裁判とか欠席裁判のようですが、それでも燃えてしまった以上どうにもなりません。

◾️プロセスを見せる必要はあるか?

南生協病院を好例、午後ティーの炎上を悪例として記述しました。
さて、薬にも毒にもなるプロセスを見せる必要はあるのでしょうか?
当然ながら、答えは「お好きにどうぞ」です。(そもそも、午後ティーに至ってはプロセス自体は不明。)
プロセスを見せる必要がない場合もおおいにあります。例えば、コンビニで買うオニギリの「コンビニの棚に並ぶまでの苦労話」は特に消費者は求めていません。
ただ、先ほどの繰り返しになりますが、プロセスは毒にも薬にもなります。
それならば、必要な時、効果が期待される時に、プロセスを有効活用すべきです。余裕があるならば、今時点で必要ではなくともいつか必要になるときに備えてプロセスを大切にすべきです。
ブランディングはイノベーターが登場するよりも前から始まっているかもしれないのだから。

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