Bactrian

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編集、執筆、校正を職業にしています。1000文字あたり5000円を目安に“赤ペン先生”の仕事も承ります。 https://www.facebook.com/horiitsuka/

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  • 多拠点生活

    2021年7月末、神奈川県川崎市から関東地方の某地方都市に移住しました。そこに居住拠点を置きつつ、東京のホテル暮らしを試しています。

  • 【ソーシャル時代の文章術】文章を書くときに知っておくべきこと

    プロアマ問わず、誰もがSNSなどに長文を投稿する時代。「いい文章」といわれるのはどんな文章なのか、思いつくままに書いていきます。

  • 雑談ネタ

    毒にも薬にもならない与太話です。(^_^;

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伝わる文章とは?その1「正確に書く」

編集&ライターを30年以上もやってるんで、よく「いい文章、うまい文章ってどういうものですか?」と聞かれる。 そもそも何で文章を書くの?って話になるのだけど、それは“伝える”ため。自分で読むだけならメモでいいわけで、文章にするのは、それを“誰かに読んでもらう”ためだ。 ということは、“いい文章”ってのは伝えたいことが伝わる文章なんだと思う。 じゃあ、どんな文章を書けば読んでくれた人に伝わるのか。 ひとつは“正確”であること。赤いものは“赤い”、大きいものは“大きい”って

    • 苔の一念岩をも通す?

      「Nothing is impossible to a willing heart.(やる気のある者にとって不可能はない。)」という英語を“こなれた日本語”にしようとして思いついたのが「コケの一念岩をも通す」という諺。 勘違いしている人も少なくないと思うんだけど、「コケ」は「苔」じゃあなくて「虚仮」だ。 ところが、調べてみると「広辞苑第7版」には「虚仮も一心」という似たような言葉はあるものの「虚仮の一念」は載ってない。 そこで「一念」を引いてみたら「一念岩をも通す」とあり、そ

      • 伝わる文章とは?その14「伝わらないときは伝わらない」

        なんだか身も蓋もない話で申し訳ないが、どんなに正確な文章を書いても、どんなに表現を工夫しても伝わらない文章は伝わらない。もちろん、誰にも分かってもらえないっていう意味じゃあなくて、その文章を理解できない人、理解しようとしない人というのが一定数いるのだ。 その2「共通認識が大切」でも書いたのだけれど、読者を想定して書いた文章でも、閲覧を自由にしている限り想定外の人が読んでしまう可能性は残る。男子校の出身者に向けて「男子校あるある」を書いたらウケるのだろうけれど、男子校ってのが

        • 伝わる文章とは?その13「繰り返していいやつ、ダメなやつ」

          「同じ音の連続を避ける」って言われても「ナンノコッチャ?」だろうと思うので、いきなり例を挙げよう。「図書館でヘッドホンで音楽を聴いた」とか「黒服の男の胸のポケットの」みたいな文章の話だ。 絶対にやっちゃいけないってわけじゃあないし、意味もわかるのだけれど、そういう文章を読まされると「センスねぇ」と思ってしまう。 じゃあどうすんの?って言うと、それぞれ「ヘッドホンを着けて図書館で音楽を聴いた」「黒服を着た男の胸ポケットの」みたいに言い換えればいんじゃね?ってこと。 もっと

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        記事

          伝わる文章とは?その12「読点の使い方(2)」

          前回の続き。 文が一定の長さを超えたときも「、(読点)」は必要だ。「一定の長さ」っていうのが曖昧で申し訳ないのだけれど、私の場合は30音節くらいを目安にしてる感じ。 「ヘッドホンで音楽を聴いていた彼は彼女に話しかけられたことに気づかなかった」って書くと読みにくいので「ヘッドホンで音楽を聴いていた彼は、彼女に話しかけられたことに気づかなかった」にする。この文は全体で41音節、最初から「、」までは19音節で、「、」以降は22音節だ。 「彼はヘッドホンで音楽を聴いていたので彼

          伝わる文章とは?その12「読点の使い方(2)」

          伝わる文章とは?その11「読点の使い方(1)」

          その4「音読のススメ」につながる話なんだけど、リズムを作るのは体言止めだけじゃあなくて、「、(読点)」の位置でも読みやすさは大きく変わる。 駄目な例を挙げると「私は、学生です」「卒業を祝うパーティが、催された」みたいに、短い主語の後、もしくは短い述語の前に「、」を打っちゃうやつ。「私は学生です」「卒業を祝うパーティが催された」で問題なく読める。 じゃあ、どういうときに「、」を打つかって言うと、1つは漢字やひらがな(カタカナ)が続くとき。「昨日県立高校卒業を祝うパーティが催

          伝わる文章とは?その11「読点の使い方(1)」

          伝わる文章とは?その10「辞書は絶対じゃない」

          このコラムも10回目ということで、ちょっと文章の書き方から離れた話をしたい。それは「辞書は絶対じゃない」ってことだ。 編集者・校正者として他人の文章を読んでいて、違和感を覚えたときは辞書に当たるようにしている。私がメインにしているのは「広辞苑 第七版」だ。しかし、よく耳にする言葉でも載っていないことがある。 例えば、最近はビジネス用語として罷り通っている「一気通貫」という言葉。書き手は「最初から最後まで」と言う意味で使っているらしいんだが、「一気通貫」は麻雀の役の名前で、

          伝わる文章とは?その10「辞書は絶対じゃない」

          伝わる文章とは?その9「コラムは5W1H」

          その8「起承転結は物語の基本」の最後で、起承転結はコラムには向いていないと書いた。Webのコラムやニュース記事などは、物語のように“最初から最後まで読まれる”という前提がない。数百文字程度なら読み切ってもらえる可能性もあるが、2000~3000文字にもなる記事を起承転結の手法で書くのはおすすめしない。そもそも起承転結は4行で完結する漢詩のための手法なのだ。 コラムを書くときは結論から先に書く。コラムのための手法は起承転結じゃあなくて、結起承転とか起結承転だ。「その8」の「赤

          伝わる文章とは?その9「コラムは5W1H」

          伝わる文章とは?その8「起承転結は物語の基本」

          とある出来事を伝える文章の作法として「起承転結」がある。もともとは漢詩を構成する“型”のことで、4コマ漫画なんかでも基本とされている。 「起」は事前情報。設定の説明と考えていい。「承」は出来事の始まり。導入部分だ。「転」は話の展開。その出来事が想定外の方向に進んでいく。「結」は結果とか結論のこと。その出来事がどんなふうに収束したかを書くわけだ。「赤ずきん」という童話を起承転結に分けてみよう。 起:可愛い女の子がいる。いつも赤い頭巾をかぶっているので「赤ずきん」と呼ばれてい

          伝わる文章とは?その8「起承転結は物語の基本」

          伝わる文章とは?その7「第三者の目を持つ」

          その2の「共通認識」の繰り返しになるかもしれないのだけれど、自分が知っていることを書くときは(ぃゃ、知らないことは書けないのだけれど)第三者の目が欠かせない。 例えば「ハゲマッチョ好きな堀井塚さんの奥さん」ていう文章。書いた本人は「堀井塚さんの奥さんがハゲマッチョ好き」ってことを知っているので、そのまま文章にしたのだろう。しかし、この文章は「堀井塚さんがハゲマッチョ好きで、その堀井塚さんの奥さん」とも解釈できてしまう。何が言いたいかというと、何通りにも解釈できる文章を書いち

          伝わる文章とは?その7「第三者の目を持つ」

          伝わる文章とは?その6「誤用に注意」

          誤変換・誤字脱字は注意すればチェックできるのだけれど、それよりヤバいのが“誤用”。そもそもの意味をわかっていない、勘違いしているのに「なんかカッコいい」くらいの感覚で難しい言葉を使ってみたり、故事成語、四字熟語なんかを散りばめてみたり……。 実際に目にした誤用の例を挙げると「容姿端麗な自衛官」とか。てっきり美人自衛官のことだと思って読み進めると、実際は男性だった。「容姿端麗」の意味は「姿かたちが美しいこと」だから間違いではないのかもしれないけれど、普通は女性を形容する言葉だ

          伝わる文章とは?その6「誤用に注意」

          伝わる文章とは?その5「誤字脱字は信用をなくす」

          プロの校正者の目を通さないで文章を世に出すってのは、物書きとして結構な勇気がいる。誤変換・誤字脱字が1つや2つあったところで命に関わるようなことはまずないのだけれど、「こんな漢字を間違えてる」なんて笑われるのはイヤというか、「アタマ悪っ」って思われるのがイヤというか……。 仮にも文章を書いて飯を食ってる(=報酬を受け取っている)人、いわゆる“ライター”が誤変換・誤字脱字だらけの文章を書いてきたら、編集者としてはそのライターの仕事に対する姿勢を疑ってしまう。「あぁ、このライタ

          伝わる文章とは?その5「誤字脱字は信用をなくす」

          伝わる文章とは?その4「音読のススメ」

          せっかく何かを伝えるために書いた文章も、「なんだか読みにくい」と思われたら最後まで読んでもらえないかもしれない。漢字とかなのバランスの悪さも読みにくさの原因になるけれど、“読みやすさ”という意味ではリズムも大切だ。 以前、別冊マイカさんにインタビューして頂いたときにお答えしたのだけれど、「朝7時に起きました。いつも通りトーストを食べました。それからコーヒーも飲みました。そして学校に行きました」なんて文章は小学生の作文レベル。 同じことでも「今朝も7時に目が覚めました。朝食

          伝わる文章とは?その4「音読のススメ」

          伝わる文章とは?その3「漢字とかなのバランス」

          きちんとした定義とか基準とかはないのだけれど、文章には“読みやすい文章”と“読みにくい文章”がある。“伝わりやすい文章”と“伝わりにくい文章”と言い換えてもいい。一例を挙げてみよう。 (1)「つたわるぶんしょうをかくためには、それをどんなひとがよむのか、よんだひとがおなじものをおもいうかべてくれるのかまでかんがえるひつようがある」 (2)「伝わる文章を書くためには、それをどんな人が読むのか、読んだ人が同じものを思い浮かべてくれるのかまで考える必要がある」 見てすぐ分かる

          伝わる文章とは?その3「漢字とかなのバランス」

          伝わる文章とは?その2「共通認識が大切」

          その1で書いたように、文章ってのは“人に伝えるため”に書くもの。しかし、読んでくれた人がその言葉から同じものを思い浮かべてくれなければ伝わらない。これが「共通認識」というやつだ。文章というものは、書き手と読み手の「共通認識」があって初めて成立する。 トマトを見たこともない人に「トマトのように赤い」と言っても伝わらない。「私のような“おっさん”と女子高生の会話が噛み合わないようなもの」と言えば伝わるだろうか。 文章の下手な人は、この「共通認識」が欠けていることが多い。あるラ

          伝わる文章とは?その2「共通認識が大切」