movie 『草原の実験』
『草原の実験』アレクサンドル・コット監督
念の為に予告編を載せるけれど、出来ればこれは見ずに、作品に辿り着いて欲しい。
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”言葉”はその性質として、世界を区切る。知性の恩恵であるそれは、私たちの生活において原則的に欠かすことは出来ない。
しかし、この作品の前では、”言葉”は完全なる敗北を宣告される。
この映画にはセリフが一切ない。
見始めてからしばらくの間、私はそのことに全く気がつかなかった。それ程までに見入っていたのである。
画面越しにも迫り来る生命、雄大な自然。
少女の純朴でまっすぐな瞳が、焼け焦げてしまう程に私を貫く。
その美しさには隙が一切ない。
それ故に、物語の土台を不必要に言語化する前掲の予告編は、横柄だと思う(それは「予告」の性質を考慮した上での苦渋の決断なのかもしれないけれど)。
この映画の中に立ち現れる世界を秩序立てることは、もはや不敬であり、盲目な驕りだとすら思われる。こんなにつまらないことはない。一切の余分な情報は蛇足。この作品の前で言語化はナンセンスでしかない。すなわち私のレビューもゴミでしかない。
これこそ映画の本気だ。映像が全てを物語る。言葉はいらない。
感性が澄み渡るその瞬間に見て欲しい。
ばばみお
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