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お泊まり

あと一言なにか言われたらベランダから飛び降りてしまいそうな時ってないだろうか。そのあと一押しをしてくれる知り合いすらいないから僕は生きているんだと思う。デリカシーのかけらもない事を言って、崖から突き落としてくれる人が欲しい。物理的にでも精神的にでもいい、トドメの一撃をくれる人が欲しい。

勢いで人生初の「お泊まり」をしてしまったのもこんな生ぬるい希死観念からだろうか。異性の部屋ではないが。たまたま

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死ねない

人生とは難しいもので、もうやっていられないと思ってからどんなに死にたいと望んでも死ぬわけにいかない要素が思い浮かぶものである。

それはある春の月曜日の話だ。たまたまサークルの私の部門の活動が早く終わり、夕食がすんだ直後にスマートフォンを開いた。関わりは多いが私的な連絡を取ることはない隣の部門の人間からの着信履歴が残っていた。慌てて折り返しの電話を掛けたところ、「早く戻ってこい」との一言だけだった

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女子論議

いわゆる「普通」の枠から逸れているのを実感したのはいつのことだろうか。小学生の頃だっただろうか。一般的な概念から外れた行動を続けていた僕のことを、わざわざご丁寧に親を巻き込んで詰った教師が結婚したことを聞いた。その後校庭の池の前で会ったとき、名字が変わった名札を見て黒い感情が渦巻いたことをよく覚えている。もしかしたら、そんな世間一般的に幸せだとみなしてもらえる未来は自分には訪れないとうっすら気づい

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天才だと思っているあなたへ

多分、自分にはこのタイミングで苦しみを語る資格はない。10代にも満たないころに他人を蹂躙した過去があるからだ。

だから、明日学校に行きたくないあなたじゃなくて、明日からの学校に何も思っていないあなたへ。なんなら、周囲を見下すことで自尊心を保ち、危害を加えることすらいとわなかった昔の自分のようなあなたへ。

人を見下すということは、他人からも見下されるということである。人を見下す思想というものは他

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ベースを始めたきっかけ

夏になるとiPod上の再生回数が増えてしまうのが、KEYTALKの楽曲である。とはいえどの楽曲が多い、というわけでもないので、好きな曲を2曲ほど紹介する形をとりたい。どちらもMVが公式で公開されている曲なので、お時間があれば気軽に是非。

①MURASAKI(収録は1stアルバム"OVERTONE")

夏、という今回の観点からは少々逸脱している曲かもしれない。秋の夜とかが似合う曲だと思う。稀にあ

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マネキンで飾りたい

スーツが好きだ。

レディースも良いのだが、真骨頂は直線により形成されるメンズものだろう。まあこれは自分があまり曲線美を解さないというだけだとは思うが。

そして生身の人間や二次元の人間が着ている必要もないと思っている。そのシルエット自体が美しいからこそだ。願わくばマネキンに着せて飾りたい。美しいと思ったスーツをいくつか並べて鑑賞したい。こんなことを言っているので、周囲にはスーツ好きの変態だと思わ

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スタメン発表

もちろん、試合を見に行くのが野球観戦の主な目的である。当然だ。しかし、極論試合自体はテレビやラジオで味わうことができる。その場だからこそ楽しめる要素があるのではないだろうか。

コロナ渦を無視すると、僕のおすすめは二つある。まず一つ目は試合前の練習時間。一般的に試合開始の一時間半前から球場に入ることができる。コーチ陣によるノックが見られたり、選手のバッティング練習が見られたりする。ただただ純粋にア

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後にも先にも

Led Zeppelineの"Stairway to Heaven"(邦題:天国への階段)という曲の話をしよう。大学生のクソガキが名曲について何か語れるわけではないので、所詮お気持ち表明文だ。

思い出の曲、という言葉でやっと思い出したぐらいだから、曲自体の知識があるわけでもなければ、別に日常的に聞いている曲ではない。父親は洋楽好きだが、あいにく僕はその血を強く引いているわけではなさそうだ。

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戦う僕へ

センター試験一日目の朝、新宿駅西口。

動く歩道に乗るべく、軽めのステップで歩いていく。なんならスキップ。ターンとかもしちゃう。

本番とは思えない足取りで歩いていく。なんだかんだ楽しい気分だった。どんな問題が出ようと勝てる気がした。

ちょうど歩調と合うようなリズム。楽しい。

帰り道も聴いた。

動く歩道上で後ろ向きに足踏みすれば、ムーンウォークに見えるんじゃないか、などとつまらないこと考えな

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『TIME』

僕が人生で初めて買ったCDはKANA-BOONの『TIME』だったと思う。定かではない。初めて「買ってもらった」CDは『DOPPEL』だったことは確かだが。

小学校高学年からラジオを聴き始めた。Podcastから始まり、徐々にリアルタイムでラジオを聴くようになった。今でこそ落ち着いているが、酷いときには週3~40時間分ほど聴いていたと記憶している。当時中学生、トラックの運転手のようにずっとラジオ

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刷り込み

7年程度西武ライオンズファンをしている僕だが、関東圏のプロ野球本拠地を巡りきった中で最も好きなのはZOZOマリンスタジアムである。海風が強いだとか駅から遠いだとか意見は多々あるが。

距離は若干あるが、まず駅から歩いていく道筋が好きだ。同じ方向に大きな施設が多くないので、隣を歩いている人もスタジアムに向かうのだ、と思うと非日常を感じられる。道幅が広く、人混みが得意ではない僕もワクワクできる場所はそ

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『車輪の下』

人生を変えた、というのは少し違うかもしれないが、この本が一番好き、と述べることで僕の人間性を手っ取り早く表すものがある。大抵の場合、「思っていたより根暗だった」と言われるのは若干不服だが。

ヘルマン・ヘッセ 『車輪の下』

物語というのは複数の解釈を内包するものであり、自分の解釈が絶対ではないが、僕はこの本を一言で紹介するならば「周囲及び自分自身による期待に耐え切れなかった少年の物語」と表現する

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記憶には珍しい、お褒めいただいた話

僕が人生において覚えているのはたいてい否定的な言葉である。別に褒められたことがないわけではない。たいていのことをそこそこプラスαぐらいの精度でこなす僕は、むしろ人よりも褒められる回数は多かったと思う。

そんな中でも、いくつか覚えている褒められた経験がある。

あれは小学校6年生の時のことだっただろうか。

僕の小学校には「音楽集会」という、今思えば若干カルトじみた名称の集会が年に2~3回ほどあっ

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決意は隠したい

アルバイトをやめることにした。

所謂上司に思いもよらぬことを言われたので心底驚いている。

「一か月前話したときには続けるかどうか半々だったように感じる」

「かえるさんの中では既に決定事項になっている気がする」

正直、3か月前には契約を更新しないことを決めていた。

思い返せば、いつも自分で決めたことを押し通してきた。

何校か合格した中学校から1つを選び取った時。

「近いから」という理由

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