【人生ノート283】真理はどぶの中にも潜み 技術は書籍と経験とのなかにのみあり
ねたむ心、そねむ心、欲な心
人は誰でも死ぬる。間違いなく死ぬる。死ぬるまでに何かしておきたい。とにかく、自分というものが、この世に生まれてきたしるしだけのことは相当にしておきたい——と誰でも考える。結構なことだ。
この世の中はチッと思うようにならぬ。つまらぬ、あほらしい、しゃくにさわる——思う。全くそうだ。
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今はたえじ
死なんかといくたびか思いし
若きころの胸は燃えて空のあなたを眺めて泣き
見苦しき人の世のさま慣るるまではつらかりき
○
飢えたる人にパンを与えよ悲しめる人を慰めよ
わがために人をほめわがために人をそしるなかれ
加味のために世のために人のために
ただそのために心よりせよ
○
人をほむる時にこびるなきか
人をそしる時に利己はなきか
思え常に
人をほむる時に
人をそしる際に
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真理は溝の中ににもひそむ技術は書籍と経験との中にのみひそむ
哲学者は理論の技術に巧み歴史家は歴史の技術に巧み医者は医術に巧みなり
こは大工の建築のことにくわしく農夫の耕作のことに熟すると異ならず
真理は哲学でなく歴史でなく医術でない
大工も真理を語り得農夫も大道を体得し得
しかり真理はどぶの中にも潜み技術は書籍と経験とのなかにのみあり
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ねたむ心そねむ心
いやな心小さい心
この心人の心
われが王にわれが神にならんとする心
人を下に見人をわがためにのみ見んとする心
この心人の心
いやな心小さい心欲の心
○
人と争うための努力人に勝たんがための努力
いやな努力この努力
人の努力血の努力
汗の努力よごれた努力
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万人のためと思いてなせる
よしと思いて身をいけにえになしてなせる
神はよみさん「悪」というとも
悪を思いて善をなせる
われを利せんと人を助くる
神は怒らん「善」というとも
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おのが栄えをのみ思うがゆえに
おのが利をのみ望むがゆえに
いちいち腹が立ちいちいちもだゆ
われよりよきをねたみそねむされば君よ
腹が立つ時もだゆる時そねみねたみ羨む時
われとわが心にたずね心に見よ
われを励まずわれを鞭うたず
人を怒り人を憎む
昔も然り今も然り
人の心とわに然るか!
『信仰覚書』第一巻 出口日出麿著