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猫遊湯ねこゆうゆ展の全貌

大分市の猫万卍展に続いた湯布院の猫遊湯展が、間もなく終わる。
猫万卍展では主にギャラリー関係者や知人友人やアート関係者が多かったが、由布院駅アートホールは駅の待合室も兼ねているアートスペースなので、主な客層は外国人や観光客で一見さんがほとんど。香港の女性が感動してくれたり、ドイツの若い男の子が「また絶対観にくる」とカタコトで話してくれたり、TENNEKOのTシャツを台湾人のカップルが二人で買って、その場で着て帰ってくれたり。受付スタッフも丁寧に対応してくれて、都度反応を教えてくれた。

今まではコンセプトはあっても全員で同一のモチーフの制作などしたことはなかった。縛りと不自由さの中での、初めての制作。好き勝手に作ってきた子供らが、今回の制作をどう捉えるのか興味津々だった。結果、その不自由さが彼らの表現力や想像力を深めたし、同じモチーフでも自分と他の子が全く異なる想像性と表現力を持っていることに気づいたようだ。初めてきちんと、他者の表現に目を向けたということだろう。

アトリエではいいところを互いに影響し合うことも推奨していて、みんな他の子の技術や描写方法や色使いなど、どんどん盗みあっていた。けれども「うーん、○ちゃんのを盗んだこれをどうやって自分の絵にするかだよねー」などといっぱしのことを呟いたりしていて、どうにかパクリを越えようと試行錯誤している様は面白かった。みんなプライドが生まれているので、「いい絵を描く」ことよりも「自分の絵を描く」ということにこだわっているのが素晴らしい。

由布院駅アートホールのスタッフがアートフォーラムを企画してくれた。映像にするための取材と交流会。殆どの子供らが「親は参加禁止にしてほしい」と言う。私としては保護者にも参加してもらいたかったが、子供らの展示なので彼らの希望には沿うしかない。取材があることは伝えていたので、それを見られることが照れくさいのだろう。彼らは子供だけの場所をとにかく欲しがる。現代において、子供だけでいられる空間というのは確かに皆無なので、彼らもたまには「子供」という枠を外したいのかもしれない。

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