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作者「ちょっと下品だったかもですw」


はあ。

「俺がもっとうまく組織を回せていれば、あんな奴の言うことなんて無視してやれたのに。」

VIP席のソファにもたれて息を漏らすのは、とある惑星のスポーツ協会会長だ。ガラス越しには、星全体が熱狂する、年に一度しかない決勝大会が見える。

日中のグラウンドで、筋肉を伸縮させる選手たち。相手チームとハイレベルな勝負を見せる彼らを、会場では数万人が、電波上では数億人が応援していた。

「いや~、今のプレイはどうでしたか。解説の○○さん?」
「やっぱりプロの技ですよね。たぶん今のは、左足のストッパーが効かなかったんですよ。どうしても試合終盤でスタミナも切れ始めますから。」
「なるほど。」
「しかし、そこで焦らずに重心を残すことで、上手く下半身に力を伝えられたんでしょう。」

元プロの解説者も、選手のスゴ技に思わずうなる。

「なるほどですね。」

相づちをうった現地アナウンサーは、そこで一息ついた。

「ここまでの試合は、株式会社○○の提供でお送りしています。電気代に悩んでいるあなた、○○にお電話を!」




はあ。会長は、再び大きなため息をつく。

「なんて忌まわしいフレーズだ。金だけ出して、競技へのリスペクトなんてこれっぽちも抱いてない奴らめ。」

決勝大会の一か月前に、地球で電力会社を経営する男から惑星間電話がきた。短期的な経営難に陥っていた会長は、新たなマーケットを探していた男からの申し出を受け入れてしまった。

きわめて嫌な奴だった。男は、動員数や視聴者層といったマーケティングデータを丹念に見るが、競技そのものについてはルールすら知らないまま契約したのだ。


 「うおお!」
 「やっぱりお前が最高のプレーヤーだ!」
 「来年もこのチームを応援するわ!」

試合終了のホイッスルが鳴る。スタジアムの空気は震え、ネットはお祭り騒ぎだ。

 「ああ、こんなにも素晴らしいスポーツなのに、あのデカっつ鼻、『愛人のケアとして、一回だけ観戦するのがちょうどいい』などぬかしやがって。」

勝ったチームのファンは感謝を込めて、負けたチームのファンは労いの気持ちを込めて、拍手しながらゆっくりと帰路につく。次第に人がいなくなるスタジアムを最後まで見つめる会長は、ほとんど泣きながら言葉をこぼす。

「ほら、感動に浸って、座席から動けない者すらいるんだ。やはりあのクソ野郎にはスポンサーを降りるよう言って、別のとこを探そう。」

選手たちのプレイをゼロ距離で観られる最前列に、目を閉じて横たわる地球人カップルがいた。

どうやら、球体の上で屁の回数を競うスポーツは、彼らには刺激が強すぎたようだ。

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