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他人が転嫁する失敗を引き受けず、断ることのできる強い女性になりたい

新しい物よりも長年使っている物の方が勝手が良くなり、作業し易くなる。それはデータを蓄積するPCなら尚の事で、このPCだから作業が進むし、どこに何があるか分かるからより良いものを作成しやすく楽しいとなる。
職場PCの中には、自分が長く熟してきた仕事が入っているから便利で、私を楽しませるものだった。だから毎日、開きたくなってしまっていた。
しかし、このPCは私にとって呪いになった。

……………

現職から解放され次に進みたいからこれまでの仕事を振り返るのに最適だったが、反面、不快なデータも山程あった。PCの中に埋まる嫌味なメールは、ストレスとなる極まりであり、夜寝付けない原因であった。にもかかわらず、連日持ち帰り、辞めると決めて退職届けを出すまで連日開いていた。
1度開くと1時間は作業を続けて動かなくなってしまう。
そして、メールを読み返しながら思う。

あの時、言い返せば良かったと。
言い返さなかったから、立場が悪くなったと。
………………
「あやとさんが登録している環境保全のサイト、何故、登録したのですか?」
異動して2年も経ってから、当時の課長から急にメールが入る。

「貴方に指示されたからです。証拠の指示メールを添付します。」
と返すと、
「とりあえず勝手に登録したんですね。」
と返信が届く。

彼はいつもそうだった。自分がした指示を忘れて、私が勝手に仕事したと私のせいにするのだ。

怒りが沸騰したが、日本語が通じない相手に伝える言葉はなく、メールを閉じた。

退職前、読み返したこのメールはこれまで何十回と押し付けられた責任の象徴であり、飲み込めないと思った。だから、返信した。

「とりあえず勝手に登録したのではありません。貴方の指示に従いました。そうやって指示忘れの責を私に着せるのは二度とやめて下さい。そのせいで私は不利益を受けてきました。」
と。

伝えた後、もっと早く言えばよかったと思った。まるで憑き物が落ちたようだった。言わないから舐められて不利益を被ってきたのだと、このとき気づいたのだった。
そしてやめる前に言えて良かったと思った。辞めてからもゴミ箱にされるなんてとんでもないから。
……………
自分が成長すると、飲み込んだ言葉が浮き上がり、伝えることのできる自分に変わりたくなる。

様々な出来事を思い浮かべ、その責任を転嫁されたメールに反論したくなった。そして朝まで嫌なことが頭の中でヘビロテする。だから、朝イチでPCを開き始める。

過去のことを言っても変わらないのに、言っても辞めることも変わらないのに。
人に自分のミスを押し付ける人の人間性が変わることなく、何かしてくれることもあり得ない。
だから今更言っても生産性はない。


それでも言いたい。その思いによって、これまで大切にしていたこのPCは時間を奪う呪いに変わった。
改善の余地のない出来事を復帰させ、時間を搾取する呪い。
………………
私からPCを引き離さなければならない。

夜中の4時にネットで集荷の依頼をし、朝イチに着払いで会社に送った。データを全て消す時間はなかったからそのままにした。しかし、呪いからは開放された。

その日から自分の時間が増えた。心穏やかに朝目覚める。
………………
嫌な出来事は自分の周りで起こるから嫌なことと認識できる。しかし、自分の周りのことだから手放せない。
とりわけ、その対処方法に気づくと、これまでの我慢が沸き上がり、全てを対処したくなる。
しかし、全てに対処すれば敵が増える。

そしてそのうちの誰かはまた私に嫌なことをもたらす。

そうなってしまうと手がつけられない。お互いの正義が対立するのだ。こうして循環していく負はループとなり、例え自分に非がなくとも一度回り始めた負のループからの脱出は容易ではない。
私は辞めることで脱出したのに、また入ろうとしていたのかも知れない。
………………
PCを便利な有体物と見ることが出来るのなら所持に不都合な点はない。
しかし、PCに記録と念が残っているのならそれは祟り。

もしかすると、恨めしい元恋人から貰ったものや絶縁したい友人との写真にも似ているかもしれない。

喚起しても改善のない過去を蘇らせ、不幸をもたらす記憶は、ただの時間泥棒。一刻も早く片付けて、最後に得た学びだけを忘れないようにしたいと思う。

私のPCが呪いとなったのは、言葉を飲み込み続け他人のミスを引き受け続けていたから。

次に出会ったPCには、心温まるやり取りが残っていくように。手放すことがないように。人の責を引き受けさせられない自分になって働きたい。

だから、なりたい自分は、人のズルさを引き受け続けない強い自分。私には私の仕事があるのだから、「それは私の間違えではない」を伝えていきたい。

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