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人魚の眠る家[読了]/あやりの本棚

こんにちは!あやりです!

日記やお手紙を書いていると、新しい考えが浮かんだり、気持ちが動いたりします。
キリスト教を信じている友人がほぼ毎日Facebookに神様に話しかける形式で心の内を書いて投稿しているのは何なんだろうと3年ぐらい不思議に思っていました。でも最近、私が日記やお手紙を書いているのと同じなのかもしれないと思うに至りました。
誰に言うのかは違いますが、心の中にあることを言葉にすると落ち着くし気持ちいい感じがします。友人のやっていることもそういうことなのかなと思いました。
目に見えるようなことをしていなくても、考えたり心の中で何かに語りかけたりすることで、内面では色々な変化があるなんて人っておもしろいですよね。

今日は子どもの脳死と臓器提供がテーマになっている小説の話をします。

東野圭吾『人魚の眠る家』(幻冬舎、2015)

まとめ(281文字)
『人魚の眠る家』は子どもの脳死と臓器提供がテーマになっている東野圭吾さんの小説です。5歳の女の子がプールでの事故で2度と目覚めない状態になってしまいます。1度は脳死判定を受け臓器提供をすることを決めた両親ですが、手を握った時に動いたような気がしたことから、脳死判定を拒否し在宅で介護しながら生活することにします。女の子の家族、医師、心臓移植を待つ子どもとその家族、様々な視点で目覚めない女の子が”生きた”約3年間が描かれています。東野圭吾さんの作品ですがミステリー要素はありません。2018年に映画化されており、子どもの脳死と臓器提供について考えられる小説です。

この小説は、あんこもちさんの読書記録を読んで知りました。

記事の中であんこもちさんが、
どんどん考えさせられ最後には泣いてしまう
とおっしゃっていたので、そんなに心に突き刺さってくるものがあるなんて私も読んでみたいと思い購入しました。

読み終えた時まず考えたことは、私達ならどうするかな。でした。
夫は積極的に子どもの臓器提供をしたいとは考えないと思うと言っていました。ただ、子どもが臓器提供をしたいと言っていたらその考えは尊重するとも言っていました。
私も臓器は子どものものなので私が臓器提供を決めることに違和感があります。でも、知り合いに臓器提供を待つ人がいたら、目の前にしてしまったら考えが変わるかもしれないと思いました。
また、小説でいう”おそらく脳死”状態(脳死判定はしていないけど脳死と判定されるだろう状態のこと)になったら、子どもは死んでいるという認識は一致しました。
子どもの命は大事ですが、”おそらく脳死”の子どもの心臓を止めないようにすることは私の中では命を守ることとは捉えられません。だから、同じ状況になったら作中のお母さん薫子のように子どもを”生かす”ことはないと思いました。

しかし、薫子夫婦の気持ちに共感できる部分もあります。
家の中の至る所に残っている子どもの気配を感じて、病院であたたかい子どもの手が動いたらこの子はもういないとは思えないという気持ちはわかるような気がします。
”おそらく脳死”の子どもが生きているという認識であれば、目を覚ますかどうかは関係なく、薫子夫婦の行動は子どもの命を守る当たり前のことだと思います。薫子がラストで娘の命日に拘ったことも理解できます。

また、薫子夫婦が目覚めない娘に電極をつけてパソコンの操作で身体を動かせるようにするのですが、それを見てロボットみたいだという登場人物がいました。

目覚めない女の子はロボットでしょうか。私は生きていた人間の身体とはいえ、生物でないものが人間のために動かされているのでロボットといえるかもしれないと思います。でも心臓が動いていて呼吸もしているならロボットだなんてとてもじゃないけど言えないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

では、イギリスのロボット科学者であるピーター・スコット-モーガン博士はどちらでしょうか。博士はALSという身体が動かなくなっていく病気になって、人類で初めて「AIと融合」し、サイボーグとして生きることを選択した人です。耳や目と皮膚の感覚は残っており脳も機能していますが、それ以外の身体の機能は全て機械に任せてあります。また技術の進歩とともに博士の”身体”はバージョンアップされます。博士の方が身体の中身はロボットに近いのではないでしょうか。でも、私は博士は生きていると思うのでロボットと融合した人間だと思います。

『人魚の眠る家』を読んで、日本の臓器提供の課題について知ることができ、自分にとって人間の生死とは何か考えるきっかけをもらえました。
臓器提供そのものの是非については話題に上がっていませんが、提供する人、提供を待つ人の議論がなされていた部分は特に興味深かったです。
読む人の価値観によって捉え方がはっきりかわりやすい作品だと思いました。

読み終わった日 2022/03/23
読むのにかかった時間 約4時間
書くのにかかった時間 2日


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