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安定剤が友達だった私が心の病気を乗り越えて幸せを手に入れるまで

「あいつメンヘラじゃね?」 
 
「あーだりー。死にてえ」 
 
 
当時、
こんなセリフを吐く輩を見ると
血管が弾け飛びそうな程
腹が立った 
 
 
は?
メンヘラ?
こっちは好きで病んでんじゃねえよ

どうやったってポジティブに
物事を考えられない
病気もこの世にはあんだよ 
 
他人の事情も知らねえで
メンヘラとか口にする
お前がよっぽどメンヘラだ! 
 

 
 
はー???
死にてえ?
本当に死にたいやつはな、
言葉にすらできねんだよ 

こっちなんて
毎秒どうやったら死ねるか
考えたくもねえのに
浮かんでくるんだよ 
 
  
 

ドトールコーヒー
 
愉快なBGMが流れる奥の隅の席
 
爪が食い込む程
固く握った拳を味方に、
私は心の中で大声を出した
 
 
  
 
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

19歳の夏
 
 
私は壊れた
 
  
 

 
大学の廊下で
突然息ができなくなった 
  
 
その日を境に、
私は色んなことができなくなった
  
 

 
テレビが見れない
 
本が読めない 
 
電話もメールもできない 
 
乗り物に乗れない
 
   
 

最初は、
自分に何が起きているのか
さっぱり分からなかった
  

 
なんか体調が悪い…
 
風邪ではなさそうだけど…
 
なんだろう…
 
  
 

原因が分からないまま
状況だけが悪化していき、
 
一人暮らしの私は、
スーパーにも行けず、
ほとんどご飯も食べられず、
 
とうとう
ベッドからトイレまでを
這って移動することしかできなくなっていた
 
 
  

 
それから間も無くして、

電話から聞こえる
か細い娘の

「大丈夫」

に痺れを切らした両親が
私を秋田に引き戻したのは
言うまでもない
 
 
  
 
 
 
 
  
 
 

 
みんなが出払って
静まり返った家の中

私はいつも昼頃起きていた 
 

レンジで温めたミルクに
インスタントのコーヒーを少し入れる
  

それを飲みながら
隅から隅までセリフを暗記している
耳をすませば
のビデオを流す
 
 
これが私のルーティンだった 
 
  
 
 
外に出る気力などない 
 
着替える気力もない

まともな会話など誰ともできない
 
 
うん 

ううん 
 
 
その程度の言葉を
ピアニッシモくらいの音量で
発するのが限界 
 
 
"声を出す"
というのは
みんなが思っている以上に
エネルギーが必要なのだ 

それが
私の中には残っていなかった
 
  
 
 
  

薬の影響もあり、
ご飯はほとんど食べられず、

160センチの私は
40キロをきりそうなほどまで
痩せていった 
 
  

そんな私を見て
6歳離れた弟が

アンガールズかよー!

と、
あいつなりの優しさで
包んでくれたあの日のことは
今でもたまに思い出す

 

  
 
 
 
 
 
 
 

 

私は大きな病院の精神科に通っていて、
 
病院にはよくお父さんが車で
連れて行ってくれた
 
 
後部座席で横になる私と
無言で運転する父
 
 
その2人の間には
いつも同じラジオが流れていた
  
 

 
"静寂がうるさくならないように

と、気を遣ってくれていたんだなあ"
 
 
今なら分かる 
 
  
 
 
 

「マック行くか?」

無口なお父さんが
唯一車で発する言葉 
 
 
マックが大好きな私に向けた
お父さんなりの
精一杯の優しさ
 
  


うん 
  



あの頃は
たった2文字しか
返せなかったけど、

本当は、
涙が出るほど嬉しかった

 
  
  









精神科は
いつもとても混んでいた
 
 
うつむく後頭部が
数えきれないほど視界に入る
 
 
私だけじゃないのだと、
病院に行くと安心した


私は最高に運がよかった 
  

話も聞かず、
薬だけ処方する医者もいる中
担当してくれたA先生は、
私の気が済むまで話を聞いてくれた 
 
 
私ならきっとできない 
 
 
闇と対峙するエネルギーは
果てしなく大きい 
 
 
 
神様だなあ 
 
 
本当にそう思ってた 
 

先生と出逢って
1年半くらい経った頃だろうか  
 
 
私はいつものように 
自分の症状と、
誰にも言えない黒い物を吐き出した 
 

あの頃私は
シンガーソングライターを目指していて
どうしても、どうしても…
その夢を叶えたかった 
 
 
オーディションを受けて
良いところまではいく 
 
でも
グランプリは取れず、
デビューはできない  
 
 
その繰り返し 
 
 
トントン拍子に
売れていく友達を横目に、 
  

なんで?

なんであの子だけ売れるの? 

こんなに頑張ってるのに…

なんで…?

なんで私だけ上手く行かないの…? 
 
 
 
叶えたい気持ちが強すぎて
私は夢に殺されそうになっていた 
 
 
先生は、
絶対に私の言葉を遮らないし
否定もしない  
 
 
でもこの日は違った
 
 
 
「ねぇ、齋藤さん。

 俺の職業は"医者"でさ、

 みんなは、

 "お医者さんだなんてすごいですねー!"
 
 "高給もらえて羨ましいー!"
 
 って言うのよ。

 でもさ、
 俺が好きで医者になったと思う? 
 
 俺の家はみんな医者でね、
 俺はそれ以外の道は選べなかった。
 
 考える余地すら与えられなかった。 
 
 夢に向かってワクワクしたり、
 時に悲しんだり、
 
 俺はそういう経験をしたことがない。 
 
 齋藤さんもいつも俺を褒めてくれるよね。 
 
 この仕事が嫌なわけじゃない。
 
 やりがいもあるし、生活にも困らない。 
 
 でもね、
 これだけは言える。

 世界中見渡したって
 100%満足がいく
 人生を送っている人なんて
 きっと片手で数えられるくらいしかいない。 
 
 どれほど幸せに見えても
 きっとその人にはその人の闇があって
 みんな同じように苦しんでる。 
 
 だからね、
 齋藤さんより先に夢を叶えた子たちを
 齋藤さんは羨ましく思うかもしれないけど、
 その子たちが今幸せかどうか、
 それは分からないよ。」


・・・・・・・・。 
 
 
 
 
言葉が出ない。 
 
地球がひっくり返ったような衝撃だった。 
 
 
大尊敬して神様だと思っていたほどの
この先生がまさか
そんなふうに思っていたなんて。
 


なによりもこのセリフ。
 

 "世界中見渡したって
 100%満足がいく
 人生を送っている人なんて
 きっと片手で数えられるくらいしかいない"


 
未熟な私は、

この世界で私だけ、
私1人だけが
苦しいつもりになっていた
  

私だけが不幸で、
私だけがうまくいかなくて。
 
 
針の穴くらいの視野の中で生きていた。 
 
  
その言葉を聞いた瞬間、

ブワーーーっと
光が差し込んで、
私の中の黒いものが
キラキラに変わっていき、
1tくらいあるように感じていた
重い重い自分の体が
フワっと浮いた

そんな体験をした
 
 
 

 
その日から、私は変わった


病気が一瞬で治ったわけではないけれど、
 
薬に頼らなくても
不安を感じる回数は減っていった
 
 
真っ直ぐに最短距離で
ゴールに向かえなくてもいい

 
"今できることをやろう"


秋田の雑誌、制作会社、有名人、 
あらゆるところにアポを取って
一緒に仕事かできないかと営業をし、
 
色んな人の協力があったおかげで、
すぐに秋田で仕事をすることができた 
 
  
 

ラーメンやお寿司の食レポをしたり、
車のCMに出してもらったり、
イベントでMCをさせてもらったり 
 
 
本当に素晴らしい経験になった 
  
  
 

未熟もいいところ、
全身トゲだらけな、
そんな私と一緒に
お仕事してくれた
全ての方に、
心から感謝したい  
 
  
 
 
 
 
 
 
 

そんな毎日の中で、
いつの間にか
過呼吸も起きなくなり、
 
強い薬を止める時は
離脱症状が酷くて
勝手に体が痙攣したり動いたり
とにかく辛かったけど、
家族や先生のおかげで
乗り越えることができた 
 

   
 
 

 

でも、やっぱり、
病気になって
失ったものは数えきれないほど
たくさんあった 
 
 
壊れた私に
愛想を尽かして
友達はほとんどいなくなっていた
  

そんな私を支えた宝物 
 
 
 

 
 
"どんな礼華でも一生友達だ"
 
 
"ずっと悪友やろ?"
 
  
 
 

 
宝物  
 
 
 

 
たくさんの人を失ったけど、
とんでもない輝きを放つ
一生の宝物を手に入れた 
 
  

30を過ぎて、
人生のライフステージが
変わっていく中、 

なかなか会えなくなったけど
ずっとずっと親友だ 
 
 
 
 
 

少し良くなって、
また悪くなって
  

行ったり来たりの繰り返し 
  

薬は飲まずとも
なんだか胸騒ぎがして、 
 
うわ…

このままだと、
またあの頃みたいになっちゃう…
 
そう思う日もたくさんあった 
  
 
 

  

どこにいても馴染めなくて
人の顔色ばかりが気になって、

自分で自分を認められないから
ダメな男とばかり付き合って
お世話することで
自分のアイデンティティを確かめて
 
 
そんなのやめたー!!!
と爆発して、
会社も男も全部をリセットしたあの日から
私は本当に病気とサヨナラできた 
 
そんな気がする 
  

私もみんなも、
弱いから病気になったんじゃない
  

弱さを認められないから
病気になった 
  

本当の居場所は
そこじゃないよ!!!!!
 
心の叫びを無視し続けたから病気になった
 
 

 
他の誰でもない、
死ぬまで一緒にいる自分の悲鳴に
ちゃんと耳を傾けて、

弱くたって不器用だって
涙を溜めながらも
今こうして生きている自分を
誇りに思って生きていこう 
  
  
 
大丈夫
 

あの日の痛みは
今日の強さに変わるから 
 
   

 
私たちには生きる価値がある
  
 

私も生きてる 

 
 

だからお願い
 
 
 
あなたも生きて

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