【note創作大賞・恋愛小説部門エントリー中】
遼子(りょうこ)は企業内弁護士(インハウスローヤー)、企業の社員として雇用されている弁護士だ。会社の社長である別所(べっしょ)にほ…
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12本のバラをあなたに 第三章-12
「失礼いたします」
女将の声がしたのは、言い終えてしばらく経ったあとだった。
「どうぞ」
返事をしたら、すっと襖が開いた。
「お料理をお持ちいたしました」
「お願いします」
女将が合図をしてすぐ、そろいの藤色の着物を着た女性が二人部屋に入ってきた。香ばしい醤油の香りと出汁のいい匂いが鼻を掠めた直後、不覚にも胃がきゅうと鳴る。
仲居の一人が卓上コンロをセットすると、もう一人が蓋がない鉄鍋を上