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『今日は誰にも愛されたかった』(谷川俊太郎・岡野大嗣・木下龍也、2019年)

高校生のとき、谷川俊太郎さん作詞の合唱曲『いのち』に出会ってからというもの、彼の詩に流れる、ぽつねんとした孤独や、みなぎる力強い「生」のパワーに惹かれてきました。

そんな国民的詩人・谷川俊太郎さんと、新鋭歌人の岡野大嗣さん・木下龍也さんとの共著ということで、初めて連歌の書籍を手に取ってみました。

本著における連詩は、前の人が詠んだ歌の一部に関連させて詩(短歌)を詠む、という形式を取っています。ことばや表現そのものを味わう楽しみはもちろんのこと、関連性に思いを巡らせながら読み進めるのもまた一興です。

作品の後には、お三方による感想戦にもしっかりページが割かれています。拡大解釈したり、具体化したり、メッセージを敢えて込めなかったり…と、それぞれの思考の過程や意図が赤裸々に語られているのが面白く、また、自分の解釈との照らし合わせをしてみたりできるのも魅力的な一冊でした。

連歌としての作品ですので、一部の歌を抽出して好きだ、というのはご法度かもしれませんが、少しだけ。

僕らはこれまでもう何千回も出たり入ったりしているけれど ドアという奴は開けるときよりも閉めるときの方が品がいい(谷川俊太郎)
感情の乗りものだった犬の名にいまはかなしみさえも乗らない(木下龍也)
信号の赤とガストの赤は違うことをふたりで愛でながら歩く(岡野大嗣)


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