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【くらしの東洋医学 鍼灸で元気に】女性の抱える悩みと鍼灸

女性にとっての悩み事ランキングの上位に必ず位置する『自分の健康・病気に関する不安や悩み』。
なんと、全体のうちの約30%程度をそういった悩みが占めているという調査結果もあります!
今回は、そんな女性特有の悩み・症状と鍼灸についてみていくことにしましょう。
なお、本編の後半では、女性特有の悩み・症状の一例として、月経痛に対する鍼灸でのアプローチについてもご紹介をしていきます。

1.女性のライフサイクル

女性の体には、解剖学的にみると、生まれながらにして女性生殖器(子宮や卵巣)が備わっており、月経・妊娠・出産・哺乳といった生理的な特徴をもつ点が、男性とは大きく異なる点です。
また、女性には小児期、早春期(思春期)、成熟期、更年期、老年期という、5 つのライフサイクルがあります。これは男性にもありますが、女性の場合には上述の生理的な特徴からよりはっきりとしている、と言われています。
健康な女性は、生まれて小児期を過ごした後、一般的には14歳前後で初潮をむかえます。初潮は思春期のひとつの目安ともされるものです。
その後、約28日周期で定期的に月経が来るようになり、月経が安定する頃には成熟期を迎えます。その後、多くの女性は結婚・妊娠・出産を経験することとなります。
月経は初潮から約35年間継続したのち、50歳前後で自然と止まります。これを閉経といいます。
閉経前後の数年間は月経が乱れがちになり心身の不調が出やすくなります。その時期を更年期と呼びます。
更年期が過ぎたのち、約60歳以降を老年期と呼びます。
つぎに、このようなライフサイクルにおける、女性特有の体の不調にはどのようなものがあるかをみていきましょう。

2.月経に関する症状

月経に関する具体的な症状には、次のようなものがあります。

・月経周期の乱れ:月経の早まりと遅れ
・月経期間の乱れ:月経日数の延長や短縮
・月経困難症:月経痛(腹痛、腰痛等)が強く日常生活に支障をきたす
・月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)
 精神神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、便秘や下痢、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなど
・月経前不快気分障害(premenstrual dyspholic disorder : PMDD)
 月経前症候群(PMS)の症状のうち、心の症状が特に悪化して日常生活に支障をきたすようなもの
・月経期間以外の時期の痛みや出血
・早期閉経

3.おりもの(帯下)に関する症状

おりもの(帯下)とは子宮、膣および外陰部からの分泌物のことをいいます。子宮内や膣の老廃物や古い細胞等が混ざりあったもので代謝、炎症、物理刺激などにより、色や性質が変化します。
おりものの状態が次のような状態になり、どうしたらよいかわからず悩んでいる、といったケースは少なくないようです。

・普通よりおりものが濃い
・下着のシートでは間に合わないほどおりものの量が多い
・カッテージチーズのような、白い塊になっている
・灰色、緑色、黄色っぽい、茶褐色など血液の混じった色をしている
・痒みや発疹、灼熱感、痛みなどを伴う
・魚の腐ったような生臭い匂いがする

4.妊娠・出産に関する症状

妊娠に関する代表的な症状、悩みには、次のようなものがあります。

・不妊
・つわり:臭いづわり、涎づわり、食べづわり、吐きづわり
・妊娠中の情緒不安定
・逆子
・難産
・産後うつ
・母乳の出にくさ

5.更年期に関する症状

更年期に関する具体的な症状には、次のようなものがあります。

・ほてり、のぼせ、ホットフラッシュ、発汗
・めまい、動悸、胸の締めつけ
・頭痛、肩こり
・腰や背中の痛み
・関節の痛み、冷え、しびれ、疲れやすさ
・気分の落ち込み、意欲の低下、イライラ、情緒不安定、不眠

6.西洋医学によるアプローチ

西洋医学で上記のような症状を治療する場合、まず器質的な異常の有無を確認し、女性ホルモン(エストロゲン、プロジェステロン等)の値を検査により調べます。
器質的な異常がある場合にはそれを治療をすることを優先に行います。
また、ホルモン剤を処方して女性ホルモンの値や変動をコントロールできるようにする治療も一般的に用いられているようです。代表的なホルモン剤としては、低用量ピル(エストロゲン剤)、ジェノゲスト(黄体ホルモン)、ホルモン補充療法(HRT)と呼ばれるものがそれにあたります。また、医師の判断により、漢方薬が処方されることもあります。
不妊治療の場合は、現在では治療法が多岐にわたっており、タイミング療法を試みたのち、人工授精、顕微授精、体外受精などと呼ばれるものが段階的に行われているようです。

7.鍼灸によるアプローチ

「女性特有の症状に対する鍼灸治療は可能なのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、月経トラブル、不妊、更年期障害などをはじめ、これまでにあげてきた女性の抱える悩みの全症状に対して鍼灸は有効なのです。
その効果は、世界保健機関(WHO)も認めています。
参考リンク:公益社団法人 全日本鍼灸マッサージ師会
鍼灸では、西洋医学のように検査値に基づいてホルモン値をコントロールすることを目的に治療は行いません。
鍼灸では「つらい症状が起こっている根本の原因」をみつけだし、それを正すことによって症状を取り除くとともに、再発を防ぎ、より良い身体づくりをします。
つまり、鍼灸治療により、女性のライフサイクルの全てを支えることができるのです!

8.月経痛に対する鍼灸の施術例

次に、月経痛に対する鍼灸の施術例をご紹介します。
一度の施術で使うツボは1つです。施術時間は、休憩含めておおよそ1時間程度です。
なお、鍼をする前には、予め、詳しく問診をする必要があり、月経痛の症状だけでなく、他にもある様々な身体の症状(随伴症状といいます)、その人の体質や体格、その時の体調、施術をする時の季節、天気なども考慮する必要があります。
その上で、その人の身体全体の状態(脈、舌、顔色、身体の熱冷のかたより、身体の緊張、手足ツボの反応など)から、トータル的にみて、最も原因にふさわしいツボを選び鍼灸の施術をします。
そのため、月経痛の症状や原因が同じでも、その時々で使用するツボも変えることが必要となります。

では、以下に具体的な施術内容をご紹介します。

【患者】30代女性、身長162cm、体重58kg。
【初診】202X年9月X日
【主訴】月経痛と腰痛
【問診】
社会人入社1年目、夏頃から月経痛を発症する。それまでは、月経時の痛みはほとんどなく月経の時に痛み止めを必要とすることはなかった。
痛む部位は最初は下腹部を中心としていたが、数カ月後には尾てい骨のあたりにも痛みが出るようになってきた。
痛み止めを服用して仕事をしていたが、月経痛が出始めて3カ月もたつと、痛み止めは効き目がなくなり、月経の数日前~ピーク(月経3日目)あたりまでは仕事を休んで家で横になって過ごすようになった。
月経痛が出るようになったころは、社会人1年目として仕事上てきぱきと行動することがなかなかできず、仕事内容を覚えることも苦手な上に、同じ部署の先輩や上司などになるべく怒られないようにしよう、と気を使うことが多く、毎日緊張感を伴うことが多かった。
痛み止めの効果が感じられなくなった後、婦人科で処方されたピルを服用すると、今までの痛みはうそのように解消した。その後、ピルを継続して服用していた。
最近になり、腰痛(刺すような激しい痛み)を主訴として来院する。問診の最中に低用量ピルを約10年ほど飲み続けており、断薬するタイミングがなく今日まできてしまったので、将来の妊娠のことを考えると、実はそろそろやめたいが、過去の月経痛のつらさを思い出すと、やめる一歩を踏み出すことができない、と打ち明ける。
【初診時の症状】
・低用量ピルを服用して月経をコントロールしている。
・月経痛はなし
・月経前の感情変化は、月経痛のあった頃はイライラと落ち込みがあった。
・月経の色は濃く、塊が出ることがある
・最近になって、月経の量が少なくなってきている
【特記事項】
・性格は神経質で細かいことを気にしやすい
・肩から背中のこりが顕著。
【診断と治療方針】
以下の経緯により、月経前に体内の循環停滞が悪化することで月経痛を発症した。
・月経前は、体内では子宮内環境を整えて本来妊娠しやすい状態を準備するために、そもそも体内の循環停滞がおきやすくなる。
・精神的なストレスで心身ともに過緊張状態となり、さらに体内循環がうっ滞しやすい状態となる。
その後、低用量ピルを服用することにより月経と月経痛はコントロールできるようになったが、本来の身体リズムによる月経(月経周期、月経量など)を低用量ピルでコントロールし続けることから、月経の量が次第に少なくなってきている可能性がある。
また、下半身を中心とした循環停滞により血流が悪く、老廃物が排出されづらくなり、主訴(腰痛)を発症したと考えられる。
従って、身体の緊張を緩め体内循環の停滞を取り除くとともに、血流の悪さを改善することを中心にした処置を行う。
【日常生活での注意点】
・普段から適度に運動する。
【経過】
初診 鍼をした直後から緊張がゆるみ、肩こりがゆるんだことを実感するとともに主訴の腰痛も改善した。
2診〜3診 初診同様の処置を繰り返し行う。次回月経を最後に低用量ピルをいったんやめてみたい、と本人からの希望。
念のために、断薬前に婦人科を受診するようにすすめる。その後、婦人科を受診し、一度断薬をすることに決める。
4診~ 低用量ピルの周期どおりに月経がくる。月経に伴う不調は一切なし。ピルを断薬開始。鍼治療は週に1回程度で継続。
7診 下腹部の張りを感じはじめる。おそらく、月経がくる頃のはずだが、特に月経痛や大きな感情の乱れはなし。その数日後、月経になる。量はこれまでに比べるとやや多め、色がどす黒く、レバーような塊も含む。月経期間中から月経終了まで、月経痛はなし。感情の乱れもほとんどなく(少しイライラ)、仕事も休まずにいくことができた。
その後、現在も鍼治療は継続をしており、月経痛は解消し、月経は周期の乱れなくくるようになってきている。また、腰痛の再発もしていない。
【補足】
月経に関する悩みを抱える女性の方から『月経中なのですが、鍼灸治療を受けても大丈夫ですか?出血が心配なんです。』という質問を受けることがありますが、もちろん、答えは大丈夫です!
鍼灸院には、月経に関する悩みを抱えて来院する患者様が多くみえます。
ぜひ、迷っているあなたも、一度、近くの鍼灸院に相談をしてみてください。

9.まとめ

今回は、女性特有の悩み・症状と鍼灸治療についてとりあげました。
東洋医学においても、女性特有の様々な症状に鍼灸によるアプローチが可能なことはご理解いただけたでしょうか。
今回はここまでとなります。最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。

それでは、鍼灸でからだも心も元気になりましょう!

鍼灸 あやかざり
千葉駅5分 完全予約制 女性と子ども専門の鍼灸治療院
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画像の出典:https://www.photo-ac.com/


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