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読書メモ Women Negotiating

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Malene Rix著 “Women Negotiating” の読書メモです。 交渉なんて苦手!という方にこそ読んでいただければ嬉しいです。
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交渉と日本文化・西洋文化

(以下の文章はWomen Negotiatingの一部ではありませんが、著者のMalene Rixさんより追加で文章をいただきましたので日本語訳のサマリーを掲載します。) 日本に行った時に京都を自転車で観光することにした。自転車はコペンハーゲンでも良く乗っているので大丈夫だと思ったが、日本では規制の多いコペンハーゲンに比べて自転車の運転に関するルールが非常に少ないことには、最初は不安を感じた。しかしすぐに、日本では歩行者も自動車や自転車を運転する人もそれぞれのニーズに注意を

Women Negotiating 読書メモ ハイライト

読書メモから私が面白いと思う部分をピックアップしてみました。 ***** 私たちが家庭で行う交渉、特に配偶者とのキャリアに関する交渉は職場で行う交渉に大きな影響を与えることは、調査で明らかになっている。例えば家事分担が平等でないことは、女性がキャリアでどこまで上昇するかという自身の理解に影響を与える。この場合女性は家庭での責任と今後のキャリアの全てを完璧にこなすことができるだろうかと考えるからである。 このため、女性は家庭で行う交渉を重視する必要がある。不可能とも思える

Women Negotiating 読書メモ 0.はじめに

誰もが日常的に交渉をしている。 私たちは皆、経験豊富な交渉人なのに、その能力は常に意識的・戦略的に使われてはいない。 交渉スキルを持っていると気づかないまま、人は常に交渉している。日常生活の中でどれほどの時間を交渉に費やしているのかに目を開くことは素晴らしい気付きとなる。 私たちは皆交渉をする、上手く交渉できる、という気付きを得ると交渉というツールをさらに戦略的に利用できるようになり、交渉のプロセスからより多くを得られるようになる。 交渉とは何かについては、1章で述べる

Women Negotiating 読書メモ 1. 交渉とは何か

交渉の定義は次のようなものだ。 「異なる利害を持つ二人以上の当事者が合意のためのプロセスを経るとき」 いつ自分が実際に交渉をしているのかに自覚的になることは交渉を戦略的で効果的なツールとして利用する基本条件となる。 例えば職場で自分が長く関与してきたプロジェクトに最近担当となった同僚が、自分がプロジェクトマネージャーになりたいと上司にアピールし、あなたは庶務担当のアシスタントをして欲しいと言われたとしたら?あるいは家庭で、あなたが子供たちに食事をさせ、宿題を見て、風呂に

Women Negotiating 読書メモ 2. 良い結果を導くプロセス

第2章では交渉プロセスの重要性を再確認する。どれだけ昇給するか、契約条件はどうするか、誰がお皿を洗うか、といった交渉の内容だけに集中してしまい、交渉のプロセスを軽視することはリスクが大きい。調査結果では交渉プロセスにおいて、交渉にあたる当事者同士の人間関係の構築が最も大切であることが明らかになっている。 人は交渉の結果が満足かどうかを、交渉のプロセスが満足のいくものであったかどうかで判断する。このため、この章では交渉プロセスを向上する方法を検討する。例えば昇給の交渉をする

Women Negotiating 読書メモ 3.ジェンダーのフィルター

交渉のフィルターとは相手をどのように色付けて認識し、どう行動するかということで、権力や社会的地位の考え方、ある状況で実際誰が決定権を持つのかと切り離して考えることができない。「女性は謙虚で自己利益の追求より他に配慮する」といったジェンダーのフィルターは交渉において非常に重要な役割を果たし、資源配分などを扱う目的のプロセスで顕著となる。 「女性はあまり交渉が上手くない」と考える人は多く、その根拠として男女の賃金格差がよく挙げられる。しかし実際には女性は女性らしくあるべきとの

Women Negotiating 読書メモ 4. 職場での交渉

職場での交渉というと、賃金交渉を思い浮かべることが多い。賃金交渉について国際的に行われた研究結果によれば、男性は女性より多くの場合、雇用主からの最初の提示額には合意しないことが、顕著な男女差として現れている。 二人の人が全く同じ仕事に応募し、この二人の資質や経験は同じで月額4,600ユーロを提示され、一人は初任給をもっと高くして欲しいと要求して交渉し、5,000ユーロとなり、もう一人は4,600ユーロのままオファーを受けたとすると、このふたりが65才になるまでの収入の差は、

Women Negotiating 読書メモ 5. 家庭での交渉

何をどのように交渉するかは職場と家庭では異なる。家庭で交渉は似つかわしくないとあなたのパートナーは考えるかもしれない。しかし家で誰が何をすべきかというときに当事者はあなただけではない。 2007年に行われたイギリスの調査結果では、家事は圧倒的に女性の役割となっている。これは女性が職業訓練を受ける機会を制限するだけでなく、女性がパートで 働く原因ともなり、男女の賃金格差の原因となる。賃金格差はさらに家庭での家事分担が女性に偏る原因となる。 2004年にデンマークで行われた調

Women Negotiating 読書メモ 6. 未来の交渉人

私たち全員が次世代に大きな責任を負っている。ジェンダー、年齢、民族などのフィルターは存在しても、次世代がバランスの取れた交渉で合意に至ることができる枠組みを作る必要がある。可能性はあるが、実現のためには注意深く積極的に活動し、交渉しなければならない。 大人は子供の良き見本となる必要がある。家庭、保育園、学校といった環境で男の子と女の子はあっという間にジェンダーステレオタイプに沿って行動するようになる。もしあなたが男の子と女の子では脳の作りが違い、そのため性によって相応しい職