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Women Negotiating 読書メモ 5. 家庭での交渉

何をどのように交渉するかは職場と家庭では異なる。家庭で交渉は似つかわしくないとあなたのパートナーは考えるかもしれない。しかし家で誰が何をすべきかというときに当事者はあなただけではない。

2007年に行われたイギリスの調査結果では、家事は圧倒的に女性の役割となっている。これは女性が職業訓練を受ける機会を制限するだけでなく、女性がパートで
働く原因ともなり、男女の賃金格差の原因となる。賃金格差はさらに家庭での家事分担が女性に偏る原因となる。

2004年にデンマークで行われた調査結果では、男女の家事分担の格差は女性のストレスになっていることを明らかにした。女性は実際により多くの家事をこなすというだけでなく、そのことを責任と感じており、ストレスが高まるのだ。

多くの調査結果が家事分担のバランスの欠如を示唆しており、そのことは直接、ワークライフとキャリアに影響を与えている。もしあなたもそのような状況にあるのであれば、交渉を始めてみる価値はある。

*****フェーズ1 あなたはどうしたい?*****
最も重要なこととして、あなたは家での時間をどのように過ごしているか、何をしているか、どれくらい時間をかけているか、それらの仕事をどう思うか、分配は公平か、それをどのようにしたいか、考えてみる。

「いつも私ばかりが家事をしている」と言った不満は役に立たない。それはあなた自身の選択でもあったのだ。

自分自身の生活を整理することは、感情が関わるため難しい。それでもまず現状の全体像を捉えることは変化に向けた一歩となる。

あなたの現在のエネルギーのレベルと、エネルギーの源となるもの(例えば本を読む、家族と過ごす、スポーツ)、エネルギーを消耗するもの(多すぎるミーティング、庭仕事)を書き出して、最も大切なものを決める(例えばまたスポーツをやりたい)。

家庭で話し合うべきは家事分担だけではない。他にも、余暇、家族や友人との関係、住居、育休・産休のシェア、キャリアなどがある。

*****フェーズ2 誰に影響を与える必要がある?*****
自分がどうしたいか決めたら(例えば、学生時代にやっていたスポーツを再開したい)、誰がその影響を受けるか考えてみる。彼らはどのように影響を受け、どんな希望やニーズがあるだろうか。

相手があなたの考えに慣れる時間をとる。あなたの希望を言って相手にどう思うか聞いてみる。相手が合意するには何が必要か。

影響を受ける一人一人と時間をとって話してみる。今回の変化で一人一人に得るものがあるようにする。他の夫婦や家族はどうしているだろうか。

*****フェーズ3 どんな合意としたいか?*****
全員の話を聞いたら時間をとって交渉する。みんなの希望を叶えるためのアイデア出しをする。

例えば(あなたが学生時代にやっていたスポーツを再開したい場合)、夕飯は交代で半々に担当する、朝の仕事も半々の担当とする。パートナーは朝の仕事が無い時にはジョギングに行ける。金曜日の朝はみんなで朝食をとる。週末のアクティビティは子供達が決める。月に一度は夫婦だけで出かける、等々。

Noを言うのが難しい場合は、その原因となっている自分の感情を探ってみる。Noを言うのは多くの場合、他にやりたいこと、大事なことがあるからだが、その大事なこととは何か?Noを言う時にその大事なことをやりたいから、と説明するようにする。

*****フェーズ4 その後 合意は守られているか?*****
合意をフォローアップして、それぞれにとって合意は上手くいっているか見てみる。

上手く行っていない部分があれば、その部分だけ見直す。調整のための交渉を繰り返す。

他の家族はどんな風にしているのか聞いてみて、そこからアイデアを得る。

*****並行する交渉*****
私たちは、「良い母親」、「親切な友人」、「有能な上司」と言ったセルフイメージを持っており、これらのアイデンティティは水面下で常に交渉されている。多くの人が基本的に自分に対してポジティブなイメージを持っているため、「エゴイスティックバイアス」によって交渉が紛糾することがある。例えば夫婦のどちらも自分が8割の家事をしていると考えている場合など。

また、自分自身を「善良なヒーロー」と位置付けてしまうことも、交渉相手の役割として悪役しか残されておらず、交渉を紛糾させることがある。
この場合にどちらが正しいか議論することには意味がなく、見方の違いを認めた上でどのように一緒に前進することができるかに焦点を当てて交渉を進める。

相手のことを「自分勝手」、「無責任」、「忘れっぽい」、「だからきちんと買い物できない」などとレッテルを貼ってしまわないこと。これらのレッテルには自己実現性があり、例えば家事の役割分担交渉の役には立たない。

感情が交渉のプロセスに影響を与えないよう、感情は交渉から極力切り離すという考え方が伝統的だが、交渉のプロセスで相手が感情的になった場合には、そのポイントが相手にとって重要だということが分かる。このため、そのリアクションの裏には何があるのか探求してみる価値がある。認知(例:意見を聞いてもらった)、所属(例:家族として尊重されている)、自立(例:自分で決められる)、ステータス、役割(例:妻、母親としての)の基本的なニーズが満たされない時に人は怒りを感じる。

近しい関係では個人的な限界を試されることがある。譲歩も必要だが、自分を守るための限界はある。何かが、誰かが、道徳的にも倫理的にも不公平だ、間違っていると感じるのであれば、変えるべきだ。

実践練習

*家庭での関係について考えてみる。いつ「並行する交渉」をしているか。水面下には何があルッカ?あなたは相手からどんなサインを受け取り、それは関係性にどう影響を与えていルカ。

*強い感情はその人にとって大事なものを示唆している。その感情の原因として何があるのか、お互いに探求してみることで理解できることがある。

*不公平だと感じることがあれば、喧嘩ではなく交渉してみる。


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