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Women Negotiating 読書メモ ハイライト

読書メモから私が面白いと思う部分をピックアップしてみました。

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私たちが家庭で行う交渉、特に配偶者とのキャリアに関する交渉は職場で行う交渉に大きな影響を与えることは、調査で明らかになっている。例えば家事分担が平等でないことは、女性がキャリアでどこまで上昇するかという自身の理解に影響を与える。この場合女性は家庭での責任と今後のキャリアの全てを完璧にこなすことができるだろうかと考えるからである。

このため、女性は家庭で行う交渉を重視する必要がある。不可能とも思える両立を可能にする一つの方法は、このチャレンジに「自分との交渉」によって真っ先に取り組んでしまうことだ。どのように自分の願いを生活に組み入れることができるだろう?この交渉は次に、一緒に生活する人、仕事で関係する人たちを巻き込み、そしてもしかしたら組織レベルの交渉となることさえある。職場はどのように職場と家庭の両方において社員のニーズや願いを受け入れる場所となれるだろう?

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交渉にあたる当事者が、交渉をゼロサムの奪い合いではなく、相手と一緒により多くを得るためにアイデアを出し合い、合意に至る機会であると捉えることができれば、より建設的なプロセスを進める地固めとなる。
 
交渉にあたり良いプロセス、建設的なプロセスとは感謝と尊敬のコミュニケーションが全てと言える。このため、以下が重要となる。
• 議論より傾聴(敵対的な議論で良い交渉結果は導けない)
• 会議のために心地よい環境を準備するなど、コミュニケーションの取り方
• お互いの利害関係を全て話し合うことのできる十分な時間をとり、お互いの話を聞くこと
• お互いの要求や利害に気づいて正当に評価すること
• 良い合意に至るために合意内容を検討する時間をお互いに与えること
• 自分の要求を譲歩するのは交渉の最終段階で。見返りを得られる場合に何かを与えればいいのであって、多くを与える必要は無い。
交渉にあたる当事者が会うたびにお互いに無意識の信号を送り合うことは軽視することができない。

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「女性はあまり交渉が上手くない」と考える人は多く、その根拠として男女の賃金格差がよく挙げられる。しかし実際には女性は女性らしくあるべきとのフィルターの下に交渉にあたらざるを得ず、女性は一般的に男性よりも謙虚で男性のように野心的な要求をするとは思われていないため、女性が昇給の要求をすると男性の同僚が同じ要求をした時と同じようには聞こえず、早々に「欲深すぎる」と判断されてしまう。私たちの多くは世の中からどのような期待をされているか、比較的敏感に感じることができるため、一般的に言って、女性は交渉において自分の要求を下げすぎてしまうのはこのためと考えられる。
 
「他の人の利益を代弁して交渉をする時は交渉は楽しいし面白いと感じる一方で、自分のために交渉をしなければならない場合は突然心理的なブロックが働いてしまい、交渉をとても難しく感じる。」といったコメントは女性からよく聞かれる。女性が自分のために何かを要求することは自分の部門のためにより多くの予算を要求する場合と比べて正当な主張であると受け止められ難い。

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とはいえ女性が典型的な「男性の」交渉スタイルを無批判に取り入れることはおそらく裏目に出る。男女の機会平等を向上するには、優位な立場を手放すことによってその人たちは「何が得られるのか」をはっきりさせることは必須となる。優位な立場にいる人を責めることなく、話し合いの全体がバランスの悪さを是正するとみんなが何を得るのかに焦点を当てる。平等を求めて議論を試みるのではなく、公平なバランスを話しあうのが建設的だ。

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男女の(コミュニケーションの)違いは主に、どのような立場で話すのかという地位によるもので、男女が異なるから機会が不平等なのではなく、むしろ機会が不平等であるために違いが起きている。男性、女性の双方によるステレオタイプは未だ健在だが、根拠が無いことも多い。交渉人として交渉の席でこうした潜在意識にある偏見を認識し始めると、私たちは自分や自分が代表する当事者にとってより良い結果を交渉できるようになる。
 
女性にはお世辞を言うべきだ、女性は見栄えが良いことが重要である、女性は女らしくあるべきだ、といった考え方があり、女性の側にも男性を惹きつける女性でありたいという希望がある場合、交渉においては男性と同等に認められたいという願いはダブルスタンダードとなってしまう。
 
女性は自分が政治的に動いて、結果として組織でより高いレベルの活動ができるようになるための情報を求めて得ようとしないことがよくある。こうした男性もいるが、女性により多く見受けられる。しかし通常は組織においては権力を持った男性の発言が効果的であるため、もしあなたが女性として立ち上って何かを述べたら、誰も聞いていない。もし男性が同じことを言うと、彼が言ったことを皆が聞き、このように女性はゲームの中で軽んじられる。それでも演壇に立って話し続けるには相当面の皮が厚く無ければできることではない。

もし女性の交渉人が多くの場合に認められ、目立つ存在で、その成果が評価されていれば、そのこと自体が女性は男性ほど優れた交渉人ではないといった一般的な見方を変える一歩となる。あなたが達成したことにつては、あなたが認められる必要があり、おそらく自慢する必要さえある。女性が成果を強調すると男性が同じことをした時に比べて少し肯定的に聞こえにくいという事実の下に女性は交渉を行っていることを考えれば、この障害をなんとか避けつつしかも注目を集めることができることは重要だ。

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現在成功している交渉人のコアスキルと能力とは以下のようなもので、女性には建設的で効果的な交渉人となる十分過ぎるほどの資格がある。
• 聞き上手で交渉相手個人に興味を示す
• 尊敬を持ち、自分とは異なる見方や願いに対処することができる
• 良い関係を築き、健全な関係を維持することができる
• 解決を見出すにあたり、創造的・革新的である
• 正しさを証明するより合意に至ることに焦点を当てることができる
 
女性にそして男性に何が適切で何なら可能かについての見方の多くが次世代に引き継がれる。より多くの父親が6ヶ月の育児休暇をとって家で小さな子供と過ごす場合には、家族の生活とキャリアは様々な方法でバランスを取ることが可能なのだという説得力のあるメッセージとなる。より多くの女性がCEOになったり、著名人となってメディアで意見を求められることなども同様に、何が「普通」で受け入れられることなのかという見方を広げる。

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賃金交渉を含め、自分のために野心的であることは多くの肯定的な結果を産む可能性がある一方で、「私は他の人たちより優れています」という賃金交渉の戦術は、女性より男性が成功する。もし女性が同じ主張をした場合には、ジェンダーのフィルターで説明したように、より否定的な効果を生む可能性がある。それでも基本的にはある程度の抵抗にあっておくことには価値があるかも知れない。より多くの女性がこのように振舞うようになれば、それが「普通」に感じられる。

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変化と向上の可能性から利益を得るには、積極的に変化を求めて頻繁に行動を起こすべきで、ただ座って相手が言ってくれるのを待つだけでは不十分だ。

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最初の要求は「野心的な提案」である必要がある。あなたにとってちょうど満足な条件から交渉を始めると、それ以下ではあなたは満足できず、相手に対して譲歩する柔軟性も余裕が無くなってしまう。つまり交渉相手が交渉プロセスの中で期待する譲歩を認めることができない。あなたの交渉相手は、あなたのことを頑固で柔軟性に欠けると思うだろう。あるいは、最低限要求したかった以下の結果に終わることになる。一方、野心的な提案をしていれば交渉相手に対して自分の考える最低条件までは譲歩することができる。

調査結果によると、楽観的で高い要求は時間とともに交渉相手に影響を与え、交渉がより良い結果になることが分かっている。交渉に幅があり、楽観的で高い要求をする交渉人は結果のために一生懸命働きかけ、我慢強い対応をすることがその理由だ。

このため私たちは最初は必ず拒否されると思われるくらいの野心的な提案から交渉を始めるべきだ。すると相手の反応からどの辺りが境界線か探ることができるし、もしその時は決裂してもあなたはそれだけの提案をする自信のある人だという印象を残すことができる。

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交渉を行うミーティングのファシリテーションは重要だ。男女で発言権の差があるような状況では、ファシリテーションで出席者全員に発言してもらうことが有効だ。なかなか合意できない状況でも、相手の立場をサポートする観点からの質問をすることで合意に至れることがある。

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意見の違う相手からYesを引き出すときに、自分の正しさを議論することは効果的ではない。相手に質問をすると、相手は話を聞いてもらった、承認されていると感じ、人間関係の構築ができる。ジャーナリストになった気持ちで、その人や考え方に興味を持って聞いてみる。

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交渉相手はあなたがこの交渉にどれほどの影響力を持つかを見定める。この評価は無意識に、実際の交渉と並行して行われている。例えばお茶出し役を引き受けるか、断るか、あなたの服装、身振り、どのように会議室に入ってきてどこに座るか、といったちょっとしたことが大きな意味をもち、言語化されることなく交渉に影響を与える。話し方では断定と柔軟性のバランスに注意する。

職場で、きちんと仕切られていない交渉では声の大きい人の影響力が強くなる。こうした状況を避けるには、あなたがファシリテーター役を引き受けることが有効。あなたが交渉に枠組みを与え、建設的で公平なプロセスを進めることで、あなたは影響力のある人と見られる。

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「いつも私ばかりが家事をしている」と言った不満は役に立たない。それはあなた自身の選択でもあったのだ。

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自分自身を「善良なヒーロー」と位置付けてしまうことも、交渉相手の役割として悪役しか残されておらず、交渉を紛糾させることがある。
この場合にどちらが正しいか議論することには意味がなく、見方の違いを認めた上でどのように一緒に前進することができるかに焦点を当てて交渉を進める。

相手のことを「自分勝手」、「無責任」、「忘れっぽい」、「だからきちんと買い物できない」などとレッテルを貼ってしまわないこと。これらのレッテルには自己実現性があり、例えば家事の役割分担交渉の役には立たない。

感情が交渉のプロセスに影響を与えないよう、感情は交渉から極力切り離すという考え方が伝統的だが、交渉のプロセスで相手が感情的になった場合には、そのポイントが相手にとって重要だということが分かる。このため、そのリアクションの裏には何があるのか探求してみる価値がある。認知(例:意見を聞いてもらった)、所属(例:家族として尊重されている)、自立(例:自分で決められる)、ステータス、役割(例:妻、母親としての)の基本的なニーズが満たされない時に人は怒りを感じる。

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職場での交渉と家庭で行われる交渉には相互関連性がある。家庭で家事分担に関する交渉が行われている場合、収入の高い方がより少ない家事分担をする。一方、この交渉は「良い母親とは何か」といった社会規範に影響を受け、女性はより多くの家事分担を引き受け、職場では高い給与よりは柔軟に働けることを望む。結果として、給与の低い女性がより多くの家事を引き受けるようになる。

どうすれば良いのか。

未踏の限界を発見する:ハイレベルな経営者のポジションと、妻であり母親であることが両立不可能に思えたら、伝統的な解決方法を超えてアイデアや代案を集めてみる。

情報収集する:女性同士のネットワークで給与情報などを交換する。

ジェンダーのフィルターに意識的になる:ジェンダーステレオタイプにが原因で自分の給与が低いことが判明したら、家庭で配偶者と家事分担について話してみる。

パートナーを慎重に選ぶ:会社に個人のワークライフを話し合う文化はあるか?職場でも家庭でも、パートナーは慎重に選ぶ。

変化を起こすと周囲からの抵抗に合い、疑問視されるが、納得がいかないことは変えてゆくことが私たちの責任だ。何かを止めたり変えることで周囲がどんな利益を得るのかということは明確にしなければならない。しかし実際に職場や家庭で周囲の人たちを満足させることができれば、その満足はあなたにも跳ね返ってくるだろう。

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