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「私たち、ほんとよくやってるよね」(統合失調症と診断された私が、結婚・出産し、公務員になった話その27)

玉置浩二の『メロディー』が急に私の脳内に流れ出したのは、ごく最近のことだ。朝、目覚めると、突発的にこの歌を思い出した。テレビで久しぶりに聞いたとかではない。急に思い出して全部聴きたくなり、YouTubeで検索した。以下、サビを抜粋する。

あの頃は なにもなくて

それだって 楽しくやったよ

メロディー 泣きながら

ぼくたちは 幸せを見つめてたよ

失った大切な人を偲ぶ歌だと思う。私が最近、大切な誰かを失ったから、これが脳内に流れ出したわけではけしてない。本来の歌詞の意味とは大幅にズレてしまうけれど、このサビだけ、強烈に最近の私にメッセージを浴びせかけていることを感じる。

そのメッセージとは、何もなくて、充分になくて、それでも何だかんだ言って楽しくやってる、私は、私たちは、ホント、よくやってる。充分揃ってるから、幸せなのではない。不足があっても、楽しさを感じている。そんな日々のメロディーに身を任せながら、日々を営んでいる…というものである。

ハニーカモミールティーに
もっちりボール相性ええ


亡くなった、もしくはお別れした大切な人を偲ぶ本来の意味から逸れ、なぜだかこのメッセージを強烈に感じながら、今日もこの歌を聴いた。今の私に、そう聞こえるのは、私がメッセージ通りに、自分自身にも、世の中の人々にも、きっと伝えたいからであろう。そう、我々は、充分条件が揃ってるわけでなくとも、満たされてるわけでなくても、日々を、ほんと〜によくやっている。よく営んでいる。苦労がありながらも、気の進まないことを我慢しながらも、割と楽しいことを見出しながら、楽しくやっている。それを、今更ながら、ほんとにすごいことだと思うのだ。そんな日々を生きる人々のメロディーはとても美しい音色だと思うのだ。

今回は、そんなことを踏まえながら、私のおすすめの本を紹介したい。育児書ジャンルに入るが、育児に関係のない人にも気づきのある本だと思っている。しかも、イラストが多く、とても読みやすい本である。

その本とは、子育てカウンセラー、心療内科医の明橋大二・著、太田知子・イラストの『子育てハッピーアドバイス』というシリーズの育児書である。

娘が生まれる前から0歳〜3歳対象の
シリーズも読んでいた。今は小学校に上がることを
踏まえてこの三冊を読んでいる


明橋先生の優しい言葉と太田さんの愛嬌のあるイラストにほっこりする。そして、自分自身が子育てを通して、この本を通して「育て直し」「生き直し」してもらっていることを感じる。子育てしてるわけではなくとも、誰かに育てられてきた経験のある人には、読んでみて欲しいと思うくらいだ。特に育ててくれた人が「毒親」だったり、自分がしてもらいたいように育ててもらえなかった人にも、響くものがあると思う。なぜなら、私もそういう人間で、両親に不満を感じ、反抗していた時期が多々あったからだ。そんな自分が、子育てできるのか、最初は自信がなかった。しかし、そんな親に育てられたからこそ、「子どもはこうすると、絶対傷つく」という言動と「子どもはこうすると、絶対喜ぶ、愛されていると実感する」という言動をはっきりとわかっている。それが今では子育てに最も役立つ、最強の経験だったと思っている。例え模範のような親に育てられなかったとしても、子どもがされて嫌なことと嬉しいことをわかっているのであれば、そして嫌なことはしない、嬉しいことをする、と心がけるのであれば、素敵な子育てをできる可能性は大いにある。そして、この本に書いてあることも「わかる、わかる」とよく理解できる。私がこのシリーズを読んできた中で、特に響いたことを4つピックアップしよう。

①子どもに自己肯定感を持たせる子育てが大切である

これは、明橋先生の教えの基本中の基本であり、これ一つを言いたいがために、本を書いていると言っても過言ではないだろう。自己肯定感は、昨今、耳タコなワードではあるが、改めて大切なことだと感じる。

②叱るより、褒める

こんなに叱る必要あるか?というほど叱ってしまうことも時にはある。だけど、はっきりきっぱり「それは〇〇だからだめだよ」等と言うだけで済むケースもたくさんある。無駄に叱らないこと。そして叱ることを考えるより、少しでもできたら、すかさず褒めること。褒めることで子どもにポジティブなメッセージを与えられ、次回もできるようになる可能性が高い。

③他の子どもと比較しない。昨日の我が子、過去の我が子と比較すれば、我が子もどんどん成長していることを感じられる。

特に小学校以降は、学校でも何かと比較されることが増え、親も落ち込むことがある。しかし、他の子どもと比較してできる、できないを論じるより、昨日のこの子、過去のこの子よりできるようになったことを論じよう。きっと何かあるはずである。それを認めて褒めてあげよう。

④大人も自分を褒めながら、認めながら子育てしよう。大人にとっても「甘え」は必要である。

子どもは「甘え」と「自立」を繰り返しながら、巣立っていく。「自立」するためには、充分な「甘え」が必要である。このシリーズには10歳までは充分甘えさせることが必要だと書いてある。(あくまでも目安として)また、大人になっても、例えばスナックのママに愚痴ったり、同僚と飲みに行ったり、家族に話を聞いてもらったり、誰かに大人なりの「甘え」をしている。それは大人にとっても大変必要なことである。甘えられる存在がないと、アルコールや買い物、スマホ、ドラック等の依存症になってしまうこともある。そして現代社会では、核家族化などもあり、甘えられない人がとても増えている。

甘えと自立を繰り返しながら
この子も育っていくんだろう


冒頭の話に戻る。私たちは満足になくて、充分になくて、条件が揃ってなくて、不満も我慢も多々あって、それでも何とか楽しくやれているのは、きっと誰かや何かに「甘えることができる」からではないだろうか。子どもの頃のように、それで満たされているからではないだろうか。それが明日を生きる活力になっているのではないだろうか。もしかすると「メロディー」の歌の中の、失ってしまった大切な人も、その人にとって甘えられる大きな存在だったのかもしれない。だから、あの頃何もなくても、それでも楽しくやれていたのかもしれない。経済的な充足や、ステイタスや、諸々の条件が整えられていなくても、誰かに何かに「甘えられる」。それはその人をとても強くするのではないだろうか。少しでも、他人に話を聞いてもらえたり、気持ちの良い挨拶を交わせたり、一緒に飲みに行くや食事するでもいい、家族と食卓を交わすでもいい、友達と遊ぶでもいい、友達がカラオケに付き合ってくれた、でもいい。もしくは推しに癒されたとか、推しのライブに行けて発散した、とか、整体やマッサージに行ってコリがほぐれた、とか、美容院に行って髪を整えられた、とか、そういうのでもいい。そういう日々のささやかな「甘え」である。挙げればキリがない。私たちはきっと数々のものに「甘えて」成り立っている。身を委ね、抱きしめてもらい、頭を撫でてもらうように、きっと何かに少しでも心理的に物理的に「甘えさせてもらって」生きている。『子育てハッピーアドバイス』に書いてあるように、「充分甘えること」が「自立」に繋がっていく。またシャキン、と一人の大人として立ち、日々を営むための大切な栄養素になる。「甘え」と「自立」を繰り返しながら生きるのに、子どもも大人も関係ない気がするのだ。

最近、私は職場の先輩とランチしたり飲んだりして、楽しい時間を過ごして「甘えさせてもらった」。娘とスキンシップして娘に甘えられながら、ほんとは私も「甘えさせてもらった」。旦那に愚痴を言い、旦那に気持ちを吐き出して「甘えさせてもらった」。休日に、行きたかったイベントにママ友親子に付き合ってもらい「甘えさせてもらった」。

挙げればほんとにキリがない程、私も甘えている。甘えたり甘えられながら、私たちは日々のメロディーを奏でて、何とか楽しくやっているのではないだろうか。それは、地球における人間模様の、美しい醍醐味の一つである。

しかし、誰しもが上手に甘えられるわけではないことも感じる。甘えられる対象がいない、見つけられないという人もいる。特に男性は、気持ちを吐き出したり、感情的になったり、誰かに頼ることを「男らしくない」と言われそうで、なかなかできないという人もいる。そういう人が、「この人(対象)に甘えられそうだ」と一度思えば、まるで依存するかのように、それに傾倒するというのも、よくあるケースだと聞く。しかし、ささやかなことでも「甘え」は転がっていると思うのだ。お店を利用する、食事を食べられる、交通機関が円滑に進んでいる…そのような日常当たり前に過ごす中で、私たちは意外と多くの人やものに「甘えて」生きている。特別な誰かや何かではなくても、まるで透明人間がエスコートしてくれているみたいに、たくさんの対象に支えられて生きている。それを実感したアラフォー女は、歳を重ねたこともあるからか、ただただ感謝が込み上げてくる。涙もろい秋を過ごしている。

私たちは、ほんとに、よくやっていると思う。統合失調症だった私は、自分ばかりが辛い目に遭って、周りばかりが恵まれていると感じていた時期があった。しかし、働くようになり、歳を重ね、多くの人々と巡り合い思うのは、幸せばかりの人は、一人もいないということだ。課題のない人は、一人もいないということだ。みんな平気そうな顔をしている裏で、たくさんの不条理を抱えて生きている。それに例外はない。少なくとも、私が巡り合った人々を見る中で、それに例外は一つもない。みんな平気そうな顔がとても上手なことに感心を覚えるくらいだ。ああ、ほんとに私たちはよくやっている。そんな生きとし生けるものに、賞賛を送るために一筆書いた。そんなあなたも、私も、ほんと〜に日々をよくやっているよね‼️ほんと…おつかれさまです😌

ゆっくりできることも「甘えさせてもらってる」。
感謝感謝🙏

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