AYANO

日本とイギリスでちょっとだけ映画分析の勉強をしてました。おすすめと考察記事を書きます。…

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日本とイギリスでちょっとだけ映画分析の勉強をしてました。おすすめと考察記事を書きます。基本的にネタバレ込みなので鑑賞済みの人向け。 好きな監督はリンチと王家衛とジムジャームッシュ。

最近の記事

【考察】『ボーはおそれている』にみるトラウマとそのセラピー

*この記事は最後まで無料で読めます 待望のアリアスターの最新作、『ボーはおそれている』を早速観に行ってきた。映画館と物販の列はハイキューグッズを持った人で溢れていたが、その人混みをかき分けて大島依提亜さんの素敵なパンフレットも無事にゲットできて満足である。 この『ボーはおそれている』(“Beau is Afraid”)は、アリアスターの短編 "Beau"が元ネタになっている。過去のアリアスター短編7作を観ることができるこの “I HOPE THAT PEOPLE FEEL

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    • 『きのう何食べた?』という幸せ

      『きのう何食べた?』は、たぶん、1番好きな日本のドラマだと思う。観るたびにじんわりと心に染みて、ついつい笑顔になって、そしてたまに泣かされてしまうドラマだ。テレ東深夜帯ドラマは良作が多いとつくづく思う。(ちなみに2番目に好きなドラマは、『まほろ駅前』シリーズである。) 先月からシーズン2が始まり、金曜日が待ち遠しい日々を送っている。 シーズン2開始に合わせて、シーズン1と映画版を観直していたのだけれど、 改めてお互いを深く思っている愛と幸せに溢れているこの作品が大好きだと再

      • 香港の空気に魅せられて

        先日、王家衛の『若き仕立て屋の恋』を観に、はるばる吉祥寺へ足を運んだ。そして、これでいわゆる王家衛の作品はおおかた観終わってしまったことになる。 ある監督の作品をひととおり観てしまうと、達成感と共に寂しさに襲われるのは、結構あるあるなんじゃないかと思う。 そして私は今まさに、その達成感と喪失感に呆然としながら、王家衛映画から好きな曲を流しながら、余韻に浸るなどしている。 一旦今までに観た王家衛作品を振り返ってみようと思う。 『今すぐ抱きしめたい』 『欲望の翼』 『恋する

        • 映画史と共に振り返る『バビロン』

          『ラ・ラ・ランド』のデイミアンチャゼルの最新作、『バビロン』を観てきたのですが、私にとっては映画の勉強してきてよかった〜〜と思える映画で大満足でした。 でもレビューや批評を読んでいると結構「好き嫌い分かれる」なんて批判的な意見も多かったので、私なりのバビロンの解釈を書こうと思います。 タイトルロールまでのパーティー 『ラ・ラ・ランド』から薄々思っていたのだけれど、デイミアンチャゼルは本当に映画そのものが大好きなんだなということを、『バビロン』を観て改めて感じた。それ故に、

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          【考察】ラストナイト・イン・ソーホーをフェミニズム映画として観る

          明けましておめでとうございます! さて、今年初めて観に行った映画は、エドガーライトの『ラストナイト・イン・ソーホー』でした!エドガーライトは大好きなイギリスゾンビ映画、『ショーンオブザデッド』で知って以来、サイモンペッグとニックフロストとのタッグ時代から大好きだったのですが、なんだかんだ映画館で彼の作品を観たのは今回が初めてです。 最近は初期のコメディ感とは雰囲気が違っているけれど、やっぱりエドガーライトは面白い!流石の構成力(案の定ミスリードに騙された…)、おしゃれな音

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          不可能を可能にしたヴィルヌーヴ版『DUNE』

          ホドロフスキーが錚々たるメンバーを集めたにも関わらず制作を諦め、デヴィッドリンチの自他共に認める黒歴史。その後も紆余曲折あって、「映像化不可能」とさえ言われた『DUNE』。そのヴィルヌーヴ版が満を辞してついに公開!ということで、先日ようやく『DUNE』を観に行ってきた。 ここまできて流石に失敗はできないだろうけど、まあどんなものかヴィルヌーヴのお手並を拝見しようじゃないの…なんて気持ちで観たことを謝りたい。失敗どころの騒ぎじゃない、想像を遥かに凌駕する壮大で重厚な映像にただ

          不可能を可能にしたヴィルヌーヴ版『DUNE』

          映画『ライトハウス』におけるメタファーとオマージュの考察

          『VVITCH』の監督であるロバートエガースの最新作『The Lighthouse』。制作からしばらく経っているのに日本で公開されないなあと思っていたら、先日遂に公開がスタートした。きっと、アリアスターを始めとする新進気鋭の映画監督達の名作の多くがA24から生み出されているから、A24の地位と名声が上がったからだろう。今では「A24の映画なら観たい!」と多くの映画好きが思っているに違いない。 『VVITCH』もいい作品だったし(主演のアニャ・テイラー=ジョイは『クイーンズギ

          映画『ライトハウス』におけるメタファーとオマージュの考察

          リメイク版『華氏451』(2018)とトリュフォー版の比較考察

          胸を張って言えるほどの自信作ではないのであまり大きな声で言いたくはないのだが、私はとあるディストピア小説を題材に卒業論文を書いた。 留学先で受けたディストピア作品を分析する講義が大変に面白く、もし私がこの大学に通っていたら、この教授のもとでディストピア作品について卒論を書きたい、と思ったほどだったからだ。(毎週1作品を取り扱うため、次週までに予習として1本の小説・映画を鑑賞してから授業に臨まなければならず、課題はかなりハードだった…懐かしい) レイ・ブラッドベリ原作、そして

          リメイク版『華氏451』(2018)とトリュフォー版の比較考察

          【感想】『燃ゆる女の肖像』にみる美しさ

          もうこのサムネを見ただけで色々思い出して、ああ良い映画だったなあ、としみじみしてしまう『燃ゆる女の肖像』。年末に素晴らしい映画を観ることができてよかったです。今回はこれといった解説がなく恐縮ですが、カンヌで脚本賞とクィア・パルム賞を受賞し、あのグザヴィエ・ドランが絶賛したのも納得の、美しくて繊細なこの映画の素晴らしさを徒然なるままに語っていこうと思います。 絵画のような映像美本作は、画家であるマリアンヌが、エロイーズの肖像画を書くために彼女と過ごした2週間足らずの日々を回想

          【感想】『燃ゆる女の肖像』にみる美しさ

          『ミッドサマー』は「変態のためのオズの魔法使い」?

          “Is it your Mamma Mia?” we asked. “Yeah, sure, I’d say so,” he laughed. “It’s a Wizard of Oz for perverts.” アリ・アスターはとある海外メディアのインタビューで『ミッドサマー』について聞かれた際、こう答えたそうです。変態のみなさん、ごきげんよう。ミッドサマーシリーズ第3弾です。 『ミッドサマー』はアスターにとっての『マンマ・ミーア』か?と尋ねるインタビュアーもなかなか

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          『ストーリーオブマイライフ』に込められた愛 -1949年版との比較を通して

          公開前は観ようか迷っていた 『ストーリーオブマイライフ』でしたが、いかんせんリメイクの仕方が素晴らしくて愛に溢れていて観に行ってよかったと思えたので、考察とは言えませんが過去作との比較を含め記事にしようと思います。 迷っていた理由は、あまりにキャストが豪華すぎて、きっとディズニーの実写リメイク版的な、「まあ普通によかったよ〜」みたいな作品なんだろうなと思っていたから。 だってシアーシャローナン、エマワトソン、フローレンスピュー、ティモシーシャラメ、ローラダーン、メリルストリ

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          【考察】『デッド・ドント・ダイ』の良さが分かるなら、あなたはまだゾンビじゃない

          1年前から日本公開を待ち望んでいた『デッド・ドント・ダイ』(以下DDD)、コロナによる公開延長を終えてやっっっと観てきました! 大好きジムジャームッシュ×大好きゾンビ映画、キャスト陣もこれでもかというくらいのジムジャームッシュファミリーと期待大でしたが、期待を裏切らない、噛めば噛むほど味の出るスルメゾンビ映画。懐古的かつ先鋭的、メタ要素とオタクネタ満載の「分かる奴だけ笑えればいい」スタイル、それでいて皮肉たっぷり。割と期待はずれだった某ランドの続編と違い、味わい深いクラシッ

          【考察】『デッド・ドント・ダイ』の良さが分かるなら、あなたはまだゾンビじゃない

          【考察】 失恋映画として読み解く『ミッドサマー』 ②

          前回は『ミッドサマー』の構成を失恋映画としての文脈で、アリ・アスターのインタビューを交えながら考察しました。この記事では、アリ・アスターこだわりのメロドラマ的要素に焦点をあて、分析していきます。 メロドラマ的要素とはつまり、ダニー、クリスチャン、ペレの関係。 ちなみに、通常盤だと会話がカットされている分「カルト的文化を持つホルガ村の恐怖」に焦点が当たるようになっていますが、ディレクターズカット版では会話(特にクリスチャンが絡む会話)のシーンが多くなるため、より人間模様が分

          【考察】 失恋映画として読み解く『ミッドサマー』 ②

          【考察】 失恋映画として読み解く『ミッドサマー』 ①

          さて、ディレクターズカット版含め3回観に行った、2020年の映画暫定1位、アリ・アスターの『ミッドサマー』について考察していこうと思います!ミッドサマーはシリーズ化する予定。ネタバレしてるので、未鑑賞の方はご注意を! 🌞全編明るいホラー?「明るいことがおそろしい」という触れ込みだった『ミッドサマー』。前作『ヘレディタリー/継承 (2018)』のホラー監督という印象もあってか、『ミッドサマー』は前代未聞の全編青空ホラーなんて謳われていましたが、鑑賞後の素直な感想は「ん?ホラー

          【考察】 失恋映画として読み解く『ミッドサマー』 ①

          「ナイト・オン・ザ・プラネット」 と ジム・ジャームッシュについて

          早速ひとつめのおすすめ映画を紹介します。 第1作目は、ジム・ジャームッシュ『ナイト・オン・ザ・プラネット (1991)』にしようかな。 原題の “Night on Earth” の語呂が良くて、プラネットではなく「ナイトオンアース」といつも呼んでいるのだけれど、私がジム・ジャームッシュ作品の中で1番好きな映画です。ジム・ジャームッシュ初心者でも比較的観やすいのではないかしら。 あらすじと概要この作品は5話のオムニバス形式で、それぞれの舞台は ロサンゼルス、ニューヨーク、

          「ナイト・オン・ザ・プラネット」 と ジム・ジャームッシュについて

          自己紹介と好きな映画

          はじめましての方ははじめまして、AYANOと申します。以後お見知り置きを。 かねがね好きな映画の感想や考察をどこかにまとめたいなと思ってはいたものの思い切ることができず、Filmarksなどにちまちま書き溜めていたのですが、このコロナで自粛で暇なときを使うほかない!と思い立ち、ついにnoteを登録しました。ここでは個人的におすすめしたい映画や考察を記事にしていく予定です。 ということで、少しばかり私の話を。 大学時代はメディア研究と文学を専攻とし、留学先のイギリスではち

          自己紹介と好きな映画