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「1月31日は愛妻の日。素敵な奥様へ」

朝のあわただしい中で、視界にちらっと入ってきたこのメッセージ。

前日夜に衝撃的なアクシデントに見舞われた私は、早朝8:30のオープンに間に合うように8:20に並んだ。そう、病院に。

最寄り駅の改札出たところに8:30から開いているクリニックがある。予約は不要とのことで、我が家のダウン症児を保育園にダッシュで送り、これまた仕事が始まる直前にダッシュして文字通り駆け込んだ。

症状は「やけど」。

そう、まさかの熱湯をかぶるという。人生でこんなにひどいやけどをしたことは初めてかもしれない。名誉の負傷・・?

そもそもことの発端は、先週くらいから若干体調が怪しい我が家のたー坊先生。彼はダウン症という強烈な個性をもって2年5か月を迎える。彼の体調不良は本当に困る。鼻水を両鼻から垂らし、保育園に迎えにいくといつも両鼻がカッピカピ。防寒して外にでても寒い風に吹かれた瞬間。たー坊先生は「きゃー!」と奇声を発する。そう、かれは昔からめっぽう風に弱い。

そんなたー坊先生をいまお風呂にいれたら、体調はだいぶ陰りますわよ、と若干2年の私のつたない経験が全力でアラートを発している。私自身も2023年が明けてからというものの、本当に体調不良との戦いが続いている。のどがいたく咳が出るのもあって潔くお風呂をあきらめたわれら母子。ただ、保育園に行っているし、そとは寒かった。そこで閃いた。そう、足湯しよう。

早速バケツにお湯を入れていそいそと準備。たー坊先生ははるかとおくでおもちゃで遊んでおられるので、いまのうちにためたお湯に熱湯を注いで温度を熱めにして、そして一気にたー坊先生を連れてきて、足をひたす。

そこまでのシュミレーションは完ぺきだった。
唯一まさかの計算外は、彼の移動スピード。最近ますますシャフリングでお尻をフリフリするようになった彼は、キョンシーのように、そして昔遊んだホッピング(懐かし!)のように、すごいスピードで移動される。

遠くで遊んでいたはずのたー坊先生だったが、お水が大好きすぎてすごい勢いでこっちに向かってやってきた(らしい)。
何とも気づかないアホな母は、ルンルンと愛情をこめてバケツの縁に熱湯を注いでいたその瞬間。たー坊先生が横からダイブ。その瞬間、バケツの縁にちょろちょろと注がれていた熱湯が入ったケトルがゴンとずれた。その瞬間、なんとケトルでジョロジョロ注いでいた私の右手が、私の左手の甲にじゃぼじゃぼと熱湯を注いでいるではありませんか。

一瞬何が起きたかわからなかった。
が、次の瞬間、熱すぎて飛び上がった。目が飛び出るかと思った。
ダイブしてニコニコしていたたー坊パイセンは、その絶叫に驚いて超ギャン泣き。
いや、絶対にこちらが泣きたい。が、何とかこらえてプルプル耐えつつ、あとには引けないので、たー坊先生を余裕な顔して座らせて、バケツに足をつからせた。

たー坊先生、足湯が大好きすぎて、両足を入れた瞬間、
「はううう~」と笑顔でため息をつかれる。
それが見たくて熱湯を注いだのにまさか自分の甲に注がれるとは!
うめきながらも水道水を流したが、そんな流ちょうな時間はなく、保冷剤を出してきてタオルにくるんで手に当てていた。

19:00ナウ。20:30から仕事の約束がある。ご飯も食べさせないといけない。
足湯から離そうとしてキーキーとドスを聞かせて猛反対する先生を横目に、ヒリヒリズキズキの左手をよそに何とか顔に張り付いた笑顔のまま、たー防先生を着替えさせて、ご飯をたべさせ、絵本を読んで寝かしつけた。

にしても痛い!どう考えても痛い。何もしなくても痛い。
やけどってこんなに痛いんだ。。しかも痛さが何というかねちっこいというか、いやらしい。ちくちく、ズキズキ、ズンズン。
寝るときになっても痛すぎるから目をつぶっていたらいつの間にか寝落ちした。

そして運命の日の朝。痛すぎて病院にいくことにした。駅前の予約がいらないクリニックに。向かっていたら入ってきたメッセージ。

「1月31日は愛妻の日。素敵な奥様へお花を送りませんか」と。

横切ったお花屋さんに書かれたメッセージ。そうか今日は愛妻の日なのか。そんな日にこんないやらしい痛みと戦わなければならないなんて。
抗生物質やら痛みどめやら塗り薬やらをたらふく処方され、帰宅した。
あまりにもイライラが収まらないので、旦那さんに嫌がらせラインをば。

「今日愛妻の日らしいよ。知ってた?素敵なお花を買ってきて」

旦那さんは全然この一連の背景なんぞ知らないもので、無邪気に
「愛妻の日なんてあるんだ!了解よ」と返事された。

やけどの痛みでイライラマックスな夜。そして翌日朝。
そのイライラがついに脳天を突き抜けた。大した理由じゃない。たまたま旦那さんが靴下ぬぎちらかしていた、とか夜中によなよな麻雀をしていたとか、どうせそんなこと。でもだって、こちとらやけどで痛みマックスですから。
なので、完全に八つ当たりの一環で朝起きてお花がないことを激詰めさせていただきました。「え、愛妻の日だからお花買うっていったよね?」、「なんで買ってないの?」、「あー、そういう感じ?」「そういうのでいいわけ?」「へー、あ、そう。そんなもんなのね」ネチネチネチ。

だって、やけどがネチネチ痛むわけですから。
もはや、肩が当たって「どこみてやがる?!」レベルですらない。だって痛みでイライラマックスですから。痛み止めが処方された意味がようやく分かった。痛み止めは夫婦を救う。愛妻を救う。

初めて知った「1月31日 愛妻の日」

イライラマックスの奥さんと、とんだとばっちりをうけた旦那さん。
その日の夜、「これはよくわからないけどやばい(めんどくさい)!」と思ったのか、素敵なお花を買ってきてくれた、非常に危機管理能力の高い、もとい優しい良い旦那さんなのでした。

痛い。きわめて痛い。
ガーゼが付いてるとまだまし。イライラましまし。
あー癒しっ子。でも何か悪そうなこと考えている
躍動感!右足にご注目。
愛妻の日の翌日のお花
素敵すぎるー!愛妻の日、万歳!


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