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統合的なパートナーシップは存在するのか -インテグラル理論を通じてこれからの時代のセックスについて考える-

2019年の夏に参加したオランダ在住の知性発達科学者、加藤洋平さんによるインテグラル理論の講座の中で性に関する話題が取り上げられたことがありました。

その際に紹介された『Sex Purpose Love: Couples in Integral Relationships Creating a Better World』という本を読み始めました。

本の内容やそこからの学び・実践について今後シェアをしていければと思いますが、まずは私がなぜこの本を読もうと思ったのかについてご紹介します。

本の概要も紹介しようと思っていましたが、長くなってしまったのでそれはまた次回お届けします。

<こんな方に>
・インテグラル理論を学び、統合的実践をしていきたいと思っている方
・意識の成長や全人的な成長に興味がある方
・パートナーとより良い関係を築いていきたい方
・パートナーとともに統合的実践に取り組んでいきたい方
・現在パートナーはいないが、よい関係を築けるパートナーに出会いたい方
・身体的な快楽を味わうだけのセックスに違和感を感じている方

*インテグラル理論や統合的実践の詳しい説明などは割愛しています。詳しくはこちらの書籍および加藤洋平さんの講座等を活用ください。

1. 自己紹介

私は現在、オランダのハーグという街に暮らし、オンラインでコーチングセッション等を提供しています。

私の専門は大きくは言葉と意識で、認知の構造そのものの成長とともに、心や身体をととのえ自分自身との深いコミュニケーションを取ることを後押ししています。

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2. 統合的実践をデザインする

そんな中、私自身、自己の深い変容のために様々なことに取り組んできました。

と言っても、意識の成長というのは急いでたくさんのことをやればいいというものでもないので、「今見える景色をじっくりと味わう」というのが日々取り組んでいることでもあります。

インテグラル理論の講座の中では「統合的実践をデザインする」という取り組みがあり、その中で私も現状を整理し、強化する分野などを検討しました。

こちらはそのときに作成した現状を整理するためのマトリックスです。

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統合的実践には個人でできる取り組みや、共同体や社会、自然と関わる取り組みなど、様々なことを取り入れることができます。

3. 統合的実践に欠かせないパートナーシップとセックス

私たちが日々行なっているあらゆることは統合的実践として活用することができますが、改めて考えてみると、一番身近にあるもののとても偏っているのがパートナーシップでありセックスだと感じました。

ここで言う「パートナーシップ」とは、婚姻関係に関わらずお互いにお互いを自分にとって大切な存在だと認め合い、共同生活もしくは関係性そのものを維持することに合意し、建設的に取り組んでいる関係のことを指します。

また、ここで言う「セックス」とは、狭義では肉体的に触れ合う行為ですが、広義ではパートナーと共に過ごすプライベートな時間全般のことも指すと私は考えています。(「スウェーデンではセックスの時間が長い」と言われていますが、それには食事や休憩、語らいやマッサージ等の時間も含まれているそうです)

インテグラル理論では世界を4つの象限で見る提案がされています。

内と外の象限

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個と集合の象限

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内と外、個と集合を掛け合わせた4象限

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この4象限をセックスにあてはめてみるとこのようになります。

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<セックスの4つ捉え方>
①生殖:子どもを作るため
②快楽:感覚的な満足を得るため
③再生:身体的な健康や相互理解などウェルビーイングのため
④自己変容:自己を超えた大いなるものとの交信

*再生は全象限にまたがるものですが、便宜的に共同的・外的なものに分類しています。

4. セックスで関係性を深めることができなかった結婚生活

私は大学の研究室で知り合った男性と26歳のときに結婚し、31歳で離婚をしました。

離婚の原因は私がやりたいことがあり、公務員である夫を福岡に残して東京に単身赴任をし、関係性が希薄になっていったことでした。

しかし今思えば、東京に行く前からセックスの頻度もかなり減っていました。

思い返せば当時の私はセックスを快楽もしくは生殖のための行為としか見ていなかったように思います。そして、肉体的な交わりを含め、共に過ごす時間の中で関係性そのものを深めていくことができなかったことが離婚の根本的な要因だったと思います。

当時すでにコーチという仕事をしていましたが(東京に行ったのもコーチ・エィというコーチングファームで働くためでした)その頃の私は精神的にはとても未熟で、セックスだけでなくコミュニケーションや人間そのものを表面的なものでしか捉えることができていませんでした。

結婚したことも離婚したことも後悔はしていませんが、自分のやりたいことを応援し続けてくれた夫が本当に心に思っていることには耳を傾けることができなかったということは申し訳なかったと感じます。(だからこそ、今はひとりひとりの深いところにある言葉にならないものと向き合うことを大切にしています)

4. 快楽や生殖としか見なさないセックスに違和感を感じてきた

結婚の前後で様々なパートナーシップやセックスを経験しましたが、どれも基本的には快楽を求めるもので「どこか心は満たされない」ということを感じてきました。

決して相手が自分のことを無下に扱っていたとか、セックスを軽んじていたということではありません。

少なからずお互いの人間性に魅力を感じ、共に時間を過ごしたいと感じた上でのセックスでしたが、「快楽としてのセックスのやり方しか知らなかった」ということだったのかもしれません。

同時に、相手に対して魅力や愛情を感じつつも、寂しさを埋めるためであったり、ストレス発散であったり、本当に純粋な動機だったかというとそうでもなかったこともあるのも事実です。

そして「セックスにはもっと他の側面もあるのでは」ということを、漠然と感覚的に感じながらも35歳くらいまでの時間を過ごしてきました。

5. 私たちはセックスのイメージに囚われている

私の中では、日本では(他の国のことをよく知っているわけではありませんが)女性も男性も、セックスを心から楽しみ、肉体的な満足を超えて深く味わうことができている人はとても限られているように思います。

基本的には男性が強く、女性が弱い立場というところに、双方が自ら身を置いている。そんな風にも感じます。

そしてその根底には、「セックスはこういうものだ」という強烈かつ幅の狭い(狭い中でバリエーションは豊富ではあるのですが)認識を植え付ける教育や物理的な機会が多いという要因があると感じています。

学校教育の中ではセックスの生殖的側面しか語られない一方で(私が高校生のときはそうでしたが、今は多少状況が変わっているのでしょうか…)、実社会の中ではセックスは快楽を満たすものとしてプロモーションがなされている。それ以外も、あるとしても「セックスは健康にいい!」「幸せホルモンが出る!」というくらいではないでしょうか。

そんな中では生殖と快楽、もしくは生物学的側面でしかセックスを捉えられなくなるのは必然とも言えるでしょう。

それで本当に心が満たされているのであればいいのですが、そうではないというのが実情ではないでしょうか。

6. パートナーシップがさらに重要になってくる時代にセックスについて改めて考える

こんな風に書いていますが、私自身、「心から喜びを感じられるセックス」や「精神的な深まりを感じることができるセックス」ができるようになってきたのはここ数年のことです。セックスが個人の肉体的・感覚的な満足だけでなく、精神的なつながりや双方の自己変容をもたらすものだという感覚もだんだんと持ててきたというくらいです。

少しずつですが、人間が生きていくことや世界に開いていくことに対して、セックスはとても重要な役割を果たすとともに、深い幸せをもたらしてくれるということを実感しています。

現在の世界の状況、そして今後の行く末を考えたときに、一番身近にいるパートナーとの関係性というのがますます重要になってくるのではと思います。

それは「これまで目を背けていたものから逃げられなくなる」ということでもあるかもしれません。

パートナーシップにも様々な形があり、必ずしも生活を共にしたり、その相手が異性であったり、一人であるとは限りませんが、人が、より本質的なものに取り組む機会が増えていくということを考えると、そこに残るものの一つがパートナーとの関係性ではと感じます。

7. 土台にあるのは自分自身とのパートナーシップ

ここまでさんざん「他者とのパートナーシップ」について書いてきましたが、その土台にある一番大切なものは「自分自身とのパートナーシップ」だと思っています。

セックスは相手との関係性を深めるものであると同時に自分自身との関係性を深くするものであり、統合的な取り組みとしてのセックスは自分自身を深く知り、癒し、愛することにつながっていくでしょう。

パートナーの有無に限らず、「性」は、自分自身の「生」に向き合う取り組みであり、人生をより深く、彩り鮮やかなものにしてくれるものです。

今後、『Sex Purpose Love: Couples in Integral Relationships Creating a Better World』を通じて自分自身の在り方や自分自身との関係性を深めるとともに、内容や学び・実践等についてご紹介していくことを通じて、一人一人の方が自分や大切な人とのパートナーシップについて考え、自分らしいあゆみを進めることの後押しになればと思っています。

本の内容に入る前の前置きが長くなってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございます。

Integral Human Science Lab では、統合的実践として活用できる取り組みや、心身を自分でととのえるためのワーク等をご紹介しています。

メールマガジンでは通常の記事ではお伝えできないお話等もお伝えしていきますので、統合的実践や全人的な全人的な成長にご興味がある方はぜひご登録ください。

一緒に性と生をさらに自然で輝くものにしていきましょう!

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Illustrated by HISAKO ONO






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