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「視野」ってどうしたら広がりますか?

最近なんとなく「視野をもっと広げないとなあ」と思っています。
でもよく考えると、「視野を広げる」って、実際にどういうことでしょうか?単純に「見えているものが増える」というだけではないのですよね?
「視野が広がる」とはどういうことか、視野を広げるにはどうしたらいいか教えてください。

ご質問ありがとうございます。

「視野を広げなさい」とか「視点が増える」とか、「視座が変わる」など言いますよね。どれも結局のところ「見える景色が広がる・増える・もしくは質的に変わる」ということを指しているかと思います。

しかし確かに、物理的に見える景色が増えることだけを指しているかと言うとそうでもないですよね。

では、「視野」や「視点」にはどんな種類があるのか、どうやってそれを増やしていけるのかをご紹介します。

「視野」は見ている景色の範囲、「視点」は何かを見つめる主体のある場所もしくは注目する範囲を指しているということで、ここでは「ものごとの見方や考え方を広げていくこと」をまとめて「視点を増やす」と呼んでいきます。


1. 見えるもの・見えないもの、わたし・わたしたちという軸

まずはご質問にも書いていただいた「見えているもの」に関係する視点というのがあります。具体的には、「目に見えるもの」と「目に見えないもの」の2種類の軸(視点)です。

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「目に見えるもの」は、外側のもの・計測可能なもの・直接調整可能なものとも言えます。

「目に見えないもの」は、内側のもの・計測不可能なもの・直接調整することが不可能なものです。

そしてもう一つの大きな軸(視点)は「個」と「集合」です。これは、「わたし」と「わたしたち」とも呼ぶことができます。

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2. ものごとを捉える4つの象限

これら二つの軸を重ね合わせると、4つの象限ができることになります。

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個×目に見えないものは、自分自身の主観的に体験すること(I)
個×目に見えないものは、自分自身の客観的に捉えられること(It)
集合×目に見えないものは、組織や集団の中で主観的に体験されること(we)
集団×目に見えるものは、組織や集団の中で客観的に捉えられること(Its)となります。

アメリカの思想家、ケン・ウィルバーは自身の提唱するインテグラル理論の中でこれらの4つの象限を「ALL Quadrants(オール クアドランツ)」と呼び、「全てのものごとは4つのどの象限からも捉えることができる」としています。

3. ものごとは4つの象限から捉えることができる

たとえば、日々の業務のパフォーマンスをもっと上げたいと思ったときは

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左上のI(自分自身の内面)の象限に注目すると、「モチベーション」や「仕事に対する考え方」のようなものが改善できるかもしれません。
右上のIt(自分自身の外側)の象限に注目すると、「体の調子」や「普段食べているもの」、「日々の行動」が改善をするということもできます。
左下のWe(集団の内面)の象限に注目すると、上司や同僚との関係性や組織自体の雰囲気を改善することが考えられます。
右下のIts(集団の外側)の象限に注目すると、「職場環境」や「社内制度」を改善することによってパフォーマンスが上がる可能性もあります。

このようにあるものごとを良くしたいと言っても、どの象限に注目するかによって、取る選択肢や行動が変わってくるのです。

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組織全体のパフォーマンスを上げるために「仕組みや制度を変えよう(右下:Its)」と言う人もいれば、「ビジョンをつくろう(左下(We)」、「行動指針をつくろう(右上:It)」、「一人一人の主体性を上げよう(左上:I)」という人もいますが、これらは「組織のパフォーマンス」に影響を与えているものが何かと言うことに関して4象限のうちどこに重点を置いているかという違いからくるものなのです。

これらはどの象限が際立って重要というわけではありません。また、例えばコーチングが行動促進やビジョンの浸透にも活用できる・ビジョンの共有が一人一人のモチベーションアップにつながるなどといったように、ある取り組みが複数の象限に対して影響を与えるということもあります。

大切なのは、全象限の状態について考慮に入れ、そのときどきに適切なアプローチをする選択するということです。

しかし、現代社会で、特に組織においては「効果を計測する」ということを重視することから、右側の計測可能な領域に重点が置かれる傾向にあります。

それが効果的な場面もありますが、見えるもの・計測可能なものだけに常に注力して行動や仕組みを変えることばかりに力を入れていると、人の心が疲弊していったり、関係性が悪化していることに気づかず、結果として組織全体のパフォーマンスが落ちてしまうということが起こってしまいます。

また、目に見えないものばかりに着目していると、そもそも改善すべき構造上の欠陥があるということに気づかないままになってしまうという場合もあります。

4. 視点を増やす=注目する象限を変える

人は普段、これらの4つの象限のうち、どこを重点的に考えるかという思考の傾向がありますが、「視野を広げる」ということは、「普段自分が重点的もしくは無意識的に考えているのと違う象限でものごとを考えてみる」「全象限で考えてみる」ということだとも言えるでしょう。

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具体的には、まず普段自分がどのような思考をしているのかを客観的に捉え、それがどの象限に着目した思考なのかを分類した上で、その象限とは違う象限の視点で考えてみるという訓練を繰り返すことがおすすめです。

人と意見が合わないときも、「この人はどの象限でものごとを考えているのだろう」と注意してみると、目的や同じでも、方法として注目する象限が違うだけだということに気づくかもしれません。

「視点」の種類として4象限の考え方をご紹介してきましたがいかがだったでしょうか。

次回は、もう一つの「視点」の考え方である「一人称視点」「二人称視点」「三人称視点」についてご紹介します。

                          a w a i 佐藤 草

参考:
インテグラル理論 多様で複雑な世界を読み解く新次元の成長モデル
ケン・ウィルバー著 加藤洋平監訳 門林奨翻訳
インテグラル・シンキング 統合的思考のためのフレームワーク』鈴木則夫著

*個人的にいただいたご相談を元に相談者の許可を得て、ご相談内容を編集したものに回答を記載しています。通常のコーチングセッションでは、お悩みの相談をお受けすることやアドバイス・セッション内容の公開は行なっておりません。

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