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【詩】雪の街角

前略
本日は名も知らぬあなたに
お手紙差し上げる次第です

あの日、雪の街角の
ブロック塀の先のところに
傘も持たずに佇んで
車に轢かれた猫の消えゆく温もりを
眺めていてくれた、あなたへ

死と同じくらいまで冷えながら
猫の最期の吐息と
くたり、とした尻尾の一振りが
薄く積もった雪にすぐ消える跡を残すのを
涙目で受け止めていた、あなたへ

わたしはその傍を、さくさく、さくさくと
ただただ転ばぬように
歩いて過ぎてしまったけれど

消えゆく命の灯が、わたしの魂に残した
小さな引っ掻き傷のような
けれど長らく消えない轍には
佇むあなたの影が、時折さして
凍てついた記憶に熱のない木漏れ日が
きらきぃらと眩しいのです

今度すれ違う時は、必ず
足を止めて、声をかけます
己の足下ばかりを気にするのではなく

寄り添い、見つめることができるように

いつかまた雪の街角で
お目にかかれますことを願いつつ
草々

・・・・・・

年末年始は流行病で家族全員倒れておりました。ようやく少しずつ動き出せそうです。
今年はいろんなものを「つくる(創る)」一年にしたいなと思っています。詩や小説だけでなく,多様なコラボも。noteでもちょこちょこ報告や告知ができたらいいなと思います。どうぞよろしくお願いいたします。


この詩は、2021年秋に出版した以下の詩集に収録しています。詩集をお手にとっていただける機会があれば幸いです。

noteみんなのギャラリーより、素敵なイラストをお借りいたしました。ありがとうございました。

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