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雪柳 あうこ
2023年11月26日 11:27
詩と暮らすことにしたのは、数年前の春からです。その春、わたしは陽気に当てられぐったりとしていました。そんな時、窓からふと、ひとひらの詩が飛び込んできたのでした。ひらひら、ひら、り。窓の内側に吹き込んできた詩を、手のひらに収めました。薄桃色の詩は、見た目の美しさとは裏腹に、少し乾いていました。わたしは硝子の容器に水を張り、詩を浮かべてみたのでした。すると、詩は楽しそうにくるくると硝子の中で回りま
2023年5月27日 18:54
月の耳を見た。月が、普段はしない動作で額の筋雲をかき上げて、それから僕の方へとほんの少し振り返った時だった。あ、と思わず声を上げた僕の視線に気づいて、月は顔をわずかに赤らめた。顔の割に小さな耳は、先がほんの少し尖って見えた。……小さいし、形も悪いから、コンプレックスなの。月は呟いて、すぐに手近な雲で耳を隠してしまった。なんとなく気まずくなって、またね、とその夜の月は早々に帰ってしまった。ずっと