バーが好きです。
プロの手による美味しいお酒が好きです。
静かに流れるピアノ・ジャズが好きです。
ちょっと大人な、落ち着いた雰囲気が好きです。
しかし、何より僕を惹きつけてやまないのが、
「バーテンダー」の存在。
村上龍はバーテンダーを司祭に例えました。
確かに、あの神聖なる「落ち着いた非日常」を生み出しているのは、
カウンターを隔てた聖域の主たるバーテンダーに違いありません。
残念ながら最近は、コロナ蔓延によりバーから足が遠のいてしまいました。
仕方なく、家でウイスキーのロックを傾ける日々。
しかし、足りない──。
背伸びをしてちょっと高めのお酒を購入し、
Spotifyでお気に入りのプレイリストを静かに流し、
照明を落として雰囲気を整えてみても、何かが足りない。
そう、足りないものは、バーテンダーでした。
◆◆
本文は、「全オトバンク『週刊少年ジャンプ』同好会」に属する
我が同志・たなかくんよりバトンを引き継ぎまして、
「私のオーディオブック体験」という連載テーマに則り
「お酒×オーディオブック」という新境地を一人開拓せんとした
Mr.パイオニア・izakiによる一晩の挑戦の記録です。
izakiはこんな顔をしております。
◆◆
さて。
「バーテンダーがいないならオーディオブックに喋らせればいいじゃない!」
※便乗元:「運動する機会がないならバターコーヒーを飲めばいいじゃない!」
の精神で、バーテンダーを思わせる渋くてお洒落なオーディオブックを探す旅が幕を開けました。
これがなかなかどうして、楽しいではありませんか。
お気に入りの一杯をお供に、
ふわっと思いついたキーワードをaudiobook.jpで検索。
これはと思う作品のサンプルをクリックしては、
ああでもない、こうでもないと独り言ち、
ビビッと来た暁には酔いに任せてエイヤとポチる。
※本企画のお供にして日本の誇り「サントリー 山崎」
そんな千鳥足の旅の末に辿り着いた、
「izaki presents お酒に合うオーディオブック Best3」。
アルコールとナルシズムの芳香化合物を、
どうぞ存分にお楽しみください。
第三位:『佐治敬三と開高健 最強のふたり』
バーテンダーとの会話といえば外せないのが、
お酒に纏わる蘊蓄(うんちく)です。
・・・ありましたとも。蘊蓄系オーディオブック。
それがこの、『佐治敬三と開高健 最強のふたり』。
日本における酒類/飲料業界の最大手「サントリー」、
その伝説的社長である佐治敬三と、
彼に見込まれ頭角を現した開高健(後の芥川賞作家)。
会社の頂点と一兵卒の間に成立した水入らずの友情を起点に、
お酒に関する蘊蓄が出るわ出るわ。
ちなみに、トータルの再生時間が15時間を超える大作ですが、
全部聴く必要は全くありません。
ストイックさは酒飲みに不要です。捨てましょう。
興味のあるエピソードをかいつまんで聞く。それで良いのです。
さて、今晩のつまみは何にしようか。
そんなノリで、お好きなトラックをタップしてみてください。
第二位:『パリのすてきなおじさん』
バーにはいろんな方がやってきます。
外国からやってきた方とお話できる機会も多いです。
とりあえず聞くことにしています。
「今までの旅先でどこが良かった?」
その回答として評価が二分されがちなのが、インドとフランスです。
パリやフランスという単語には、漠然とお洒落なイメージが漂います。
一方で、「実際にパリへ行くとがっかりした」という話を聞くことも。
意外と町が汚い、治安が悪い、フランス人はプライドが高い、etc.
そこで、この『パリのすてきなおじさん』の出番です。
パリへ行ったことのない僕でも、その二極化が生じる理由をありありと理解できました。
仕事が何であろうが、出身がどこであろうが、宗教がどうであろうが、
一人一人のパリジャンの中に、確固たる哲学があるのです。
多様なアイデンティティが同居する街、それがパリなのでしょう。
このオーディオブックは、街を歩くおじさま方を取材しながら、
絵画、ファッション、音楽、ワイン、食、民族、宗教、歴史など、
様々な視点を通してこの美しい「芸術の都」について語るエッセイ集です。
渋いナレーションも素敵です。
お好きなワインをお供に、是非。
第一位:『愛しのジャズメン』
バーと言えば、やはりジャズだと思うのです。
中二時代に村上春樹を読んで「やれやれ症候群」を発症したところの僕は、
Bump of ChickenやEXILEにハマる同級生を尻目に
Miles DavisやBill EvansのCDを買い集めてはiPodで楽しみ、
「ベースが良い…」(と言えば通ぶれると思っている)と一人呟き
夜な夜な悦に浸るという寂しい青春を送っておりました。
いまだにこの持病には改善の兆しが見受けられません。
むしろ、偉大なるSpotify先生によって古今東西の良演が
日日に新たに又日に新たにレコメンデーションされてしまう現状、
病状は悪化の一途を辿っております。
そんな私情丸出しの選考基準を通した結果の
栄えある第一位がこちら、『愛しのジャズメン』。
Art Blakeyが隣人、Marsalis兄弟と一緒にバスケをしたという、
分かる人が聞けば腰を抜かしそうなNY生活を送ってきた著者が、
一流ジャズミュージシャン達との面白エピソードの数々を
その巨匠の名盤とともに紹介するのが本オーディオブック。
ミュージシャン自身のセリフはちゃんと本人の声色に寄せていく
ナレーターさんのスタイルもプロのこだわりが感じられて最高です。
紹介された名盤をSpotifyで流しつつ、
その名演とは裏腹の意外な逸話にニヤリとしながらグラスを傾ける。
現代における金曜夜の過ごし方としては
最も素晴らしきものの一つと言えるのではないでしょうか。
◆◆
皆さまも是非、お気に入りのドリンクを片手に、
「貴方だけのバーテンダー」を探す良き旅を。
さて、次回は『九州の大地が生んだ大酒豪(?)』、イトウさんによる執筆です。
乞うご期待。
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