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視点8_経営課題は「リブランディングからリビルディング」へ

この記事は、2018年末に室井淳司が宣伝会議より出版した「全ての企業はサービス業になる」の最終章で、書籍の内容を10の視点にまとめた内容を要約した記事になります。

2023年現在からすると5年前の記事ですが、当時から現在までに起きた変化を追うと、社会や消費の流れがどの方向に向かっているのか解りやすいと思いますので是非ご一読ください。

2023年視点からのコメントは後半に記載しています。


以下書籍本文の要約


企業は、サービスを通した顧客との対話により、顧客との長期的な関係づくりを達成していかなくてはなりません。ブランド戦略は、これまで主に顧客の頭の中に固有のイメージを醸成することを目的としたイメージ戦略に近い役割を担ってきました。

しかしこれからのブランド戦略は事業やサービスの構造をはじめ、顧客のカスタマージャーニーにおけるタッチポイント全体をいかにデザインし、企業の固有性を実現するかという役割に拡張され、事業やサービスをリビルディングする必要があります。

書籍より


 企業はマーケティングの効果効率を高めるために、ブランド戦略を確立してきました。これまでブランド戦略は、商品やサービスを販売するためのマーケティング戦略の一部に位置してきました。

ですからブランドは普遍的なように見えて普遍的ではありません。たとえ自社の事業内容やサービス構造が変わらなくても、時代や顧客意識の変化に伴い、価値を明確化しリブランディングというチューニングを施し、環境変化に対応しながら存続しています。

ブランド戦略自体も時代に合わせて様々な手法が現れてきました。その中で、現在使われている代表的なブランド戦略は、ブランドのパーソナリティ(企業らしさや人格)を規定し、その規定に合わせて様々な企業活動を行っていくという考え方です。この考え方は、ブランドアイデンティティを確立し、企業の独自性を明確にし、そのイメージを様々なメディアを通して発信することで顧客の記憶にブランドのイメージを植え付けていくという考え方からもう一歩進み、具体的な行動にまで踏み込んだ考え方です。進化した背景には、インターネットの普及により企業と顧客の直接的な会話が生まれ、企業が人として振る舞わなければならない時代になったという理由があります。

 今、企業は、2・3章で取り上げてきた、大きな変化にさらされています。企業らしさを規定して、企業らしく振る舞うことはこれからも変わらず大切ですが、今はその前に、事業自体をブランドの視点で再構築することが必要です。

例えばそれは、トヨタ自動車が自動車メーカーからモビリティ・カンパニーへ移行すると宣言したように、今の時代に顧客にとって必要なサービスは何かという視点から自社の事業を捉え直し、事業やサービスをリビルディングしていくという活動をしなければなりません。

その際の視点は、所有から利用であり、支配から接続であり、onlineでの購買体験完結であり、新たなコンセプトを起点とするコンテクストを用い、すべてのサービスを組み替え、足りないサービスを足し、接続し、新たな事業構造を形成すべきです。

その事業構造とは、例えば自動車事業や食品事業等のカテゴリーによる縦割りではなく、モビリティであれば、移動に利用できるあらゆる手段を網羅するサービスとなるように、顧客がシームレスにサービスをストレスなく利用できる構造体とならなければなりません。

例えばフーマーは、顧客に新鮮を届けるという価値達成のためにブランドイメージをメディアで伝える次元から、事業構造を価値の達成のためにデザインしていく次元にあります。物流拠点としてのリアル店舗を持ち、新鮮な魚介を提供するイメージをつくるために店内にキッチンとイートインを設け、eコマースでの注文を店内の棚から直接ピックするスタッフを配置し、配送スタッフに素早く届ける仕組みをつくり、3キロ30分で届けるために配送スタッフが店外に常時待機し、新鮮な魚介類が顧客に届けられているように、ブランドの約束を達成するために、事業やサービスをリビルディングしています。

 花屋は、花を売る業態から顧客の空間を彩るサービス業に変わることができますし、タオルメーカーであれば繊維からタオルをつくる事業から、清潔でクリーンな生活を提供するサービス業に変わることができます。

自社の事業をサービス業に置き換えた場合、どのようなコンセプトとコンテクストが生まれ、その際にシナジーを生む提携先はどこでどのようにサービス構造をつくるかを考え、実行するタイミングにきています。

書籍要約ここまで


2023年から見て

この秋、「東京モーターショー」が、「ジャパンモビリティショー」へと「ようやく」名称が変更されました。残念ながら名だたる海外自動車ブランドは殆ど出展しませんでしたが、「自動車製造業」の枠を超えて「モビリティサービス」に関わる様々な企業が出展し、産業構造の変化が浮き彫りとなったイベントでした。

私がこの本を書いた理由は、2015年から中国でトヨタの仕事をしていた頃、中国のデジタルを軸としたあらゆる産業のサービス業化の速さから、日本の遅さに対して危機意識を持ったことがきっかけでした。この本は、50代60代の日本企業のマネジメント層に伝えたいことが沢山入っています。

全ての企業がサービス業化していくプロセスは、トレンドではなく不可逆的なシフトだと思っています。サービス業化していくことで物理的な障壁を超えて他のサービス業とも接続していくことができます。

例えばモビリティサービスカンパニー化した日本の(旧)自動車会社が、海外のサービス業と接続してグローバルなモビリティサービス、さらにはモビリティを超えた体験サービスを提供する将来も考えられるはずです。

この様に企業やブランドは、自分たちの事業をサービス業に置き換えた時、顧客にどの様な体験を提供することができるのか、という視点で自社の価値を改めて見つめ直し、再設計する時代が「既に」訪れています。


この書籍は全ての視点や考察が視点10に繋がる構成になっています。視点10も是非ご一読ください。


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室井淳司