野球グラブの名工に学ぶ『コト消費』への対応
日経電子版の記事【野球グラブ、名工の絶妙「型付け」 鳥谷選手らプロ愛用】は、選手のニーズに徹底的に応えるグラブのブランド「久保田スラッガー」の心に残るリポートです。
そもそも、消費者一人ひとりが各々の体験価値を追求する『コト消費』の時代に、細分化されるスモールマスな市場を見極め、ユーザーのインサイトに肉薄したイノベーティブなプロダクトを作ろうとすれば、それは、プロダクトアウトなモノの売りっ放しであろうはずはなく、プロダクトの入口である消費者のインサイトと、出口であるフィードバックにおいて、『ユーザーとの密接な関係性のあるエコシステム』が不可欠である、と考えられます。
記事のケースは、まさに、このような『ユーザーとの密接な関係性のあるエコシステム』の下での経営のあり方について、一にカスタマイゼーションという範疇を越えた普遍的なエッセンスが、文字通りその一行一行にちりばめられているようです。さっそくピックアップしてみると――
▶『コト消費』への対応
①「(記事より)親指部分の中に入っているプラスチックの部品を削って
戻す。一目見て親指付け根の膨らみが気になった」
⇨プロダクトの(部品の)微修正を欠かさない。
②「(記事より)水につける湯もみ型付けは、顧客の要望から生まれた」
⇨ユーザーの要望があれば、タブーとされる技法に挑むことも厭わない。
③「(記事より)コンマ何秒の差でアウトかセーフかが分かれる」
⇨用途に合わせた機能に徹底的にこだわる。
④「(記事より)長い距離を走ってボールを追うので「グラブが抜けそうに
なる」」
⇨実際の使用時、極限の状態でのプロダクトのトラブルにも備える。
⑤「(記事より)阪神、オリックス、西武、ソフトバンクに担当者をおいて
いる」
⇨同一の担当者で継続的に顧客に対応する。
⑥「(記事より)ホームゲーム開催日には練習中のネット設営を手伝い、
道具の使用感を聞くなど選手とコミュニケーションを取る」
⇨実際の使用現場でユーザーとコミュニケーションを取る。
⑦「(記事より)男性社員の全員が職人」
⇨社員全員がモノづくりに造詣がある。(製造・メンテナンス・顧客対応
といった工程を一人でシームレスにこなす。)
⑧「(記事より)常に改良を加えて新しいグラブを作りたい」
⇨現状に安住せず、常に変化対応し続ける。
この記事の事例は、一企業の特殊ケースなどではない、『コト消費』の時代の『ユーザーとの密接な関係性のあるエコシステム』の下での経営のあり方についての教科書のようです。
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