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インプランタブルデバイス~人間と機械の融合が加速~

 日経電子版の記事【コンピューターを服用、「インプランタブル」が普及
注目IT、2020年先取り予測(下)】は、体に着ける『ウェアラブル』のさらに先を行く、体に入れる(埋める)『インプランタブル』なデバイスの進化に関するリポートです。一読して、そこには重要な意味が秘められているのではないか、と感じました。


 そもそも、体に機器を埋め込む事には、人間として自然な抵抗感=『怖さ』があります。ペースメーカーや人工関節など、その必要性によって埋め込む場合を除いて、自ら進んで『インプランタブルデバイス』という選択肢を選ぶ人は非常に少ないはずです。しかし、そのような状況は、『インプランタブル』テクノロジーの進化によって、体に埋め込む事に抵抗感の少ない『安心・安全』というUX(ユーザーエクスペリエンス)を達成できたなら、話が変わってきます。

 『インプランタブル』への抵抗感が薄らいで、誰もが当たり前のように『インプランタブルデバイス』を体に埋め込むようになった時、そこでは何が起こるのでしょうか――


(1)人間と機械の融合が加速する

 例えば、いくら人間とAIを直結させたら人間の処理能力が飛躍的に増大すると言っても、そのようなBMI(ブレーンマシーンインターフェース)の為に、侵襲性(生体を傷付ける程度)の高いデバイス、脳に埋め込むようなデバイスを取り付ける事には大きな抵抗感が伴います。そのような抵抗感が取り除かれ、ストレスフリーに『インプランタブルデバイス』を体に埋め込めるようになった時、AIとのBMIを希望する人が急増しても不思議はありません。
 ストレスフリーな『インプランタブルデバイス』は、人間と機械の融合を加速させ、『人間拡張』や『アンチエイジング』など、『機械との融合によって人間の能力を高めよう』という進化のベクトルが勢いを増すと考えられます。


(2)『インプランタブル』による医療革命

 『インプランタブル』な手法が最も効果を発揮しそうな分野が医療やその周辺領域である事は疑いようがありません。記事などから、考えられるものとして――

① 『デジタルメディスン(センサーを埋め込んだ薬)』による投薬管理。

② 『インプランタブルデバイス』による体調・健康管理。

③ 『ナノマシン(ナノボット)』による治療。

④ 『インプランタブルデバイスをめぐるエコシステム』(ナノ
 テクノロジー・バイオテクノロジー・ロボット工学など)による研究の
 活性化。

⑤ 『インプランタブルデバイス』を活用した臨床試験。

⑥ その他、『インプランタブルデバイス』による美容、など。

 考えればまだまだ可能性がありそうで、『インプランタブル』な手法は医療現場にパラダイムシフトをもたらすのではないでしょうか。


(3)法的課題

 『インプランタブルデバイス』は、直接体に入って、ユーザーと密接に関わりながら、データのやり取りを行います。当然、その安全性、個人データ保護、誤用・悪用防止など、多岐にわたる法整備、管理体制、受け入れ準備が必須となってくるはずです。

 法が現実に追いついていない、といったことが許される分野ではないのではないでしょうか。かと言って、法的な議論に長々と小田原評定を続けていては、開発競争に後れを取ることも明らかです。


 こうして見てくると、『インプランタブル』のテクノロジーは、私達人類の社会に大きな変化をもたらし得るイノベーションである、と思われます。今から社会的な議論を深めておいても、決して早過ぎることはないのではないでしょうか。

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