「やっぱり、ママじゃなきゃダメなんだね」の本当の意味とは?
「やっぱり、ママじゃなきゃダメなんだね」
この言葉って、否定的な意味合いで使われることが多いですよね。
夫が子どもをあやそうとしたけど、うまくあやせなくて子どもに言い聞かせるようにこの言葉を使い、妻をイライラさせたり。
ぼくもそう思います。
だけど、東京学芸大学の元教授であり「ちゃんと泣ける子に育てよう」の著者である大河原美以さんは、著書のなかで「母と子には生物的な絆がある」と書かれています。
そして、「わたしは母性を信じている」とまで言います。
男性の家庭への関与率が低いことが問題視されている今の社会では、ちょっと物議をかもしだしそうな話ですよね。
でも、著書「子どもの感情コントロールと心理療法」を読み解くと、そう単純な話でもありませんでした。
「女性には母性がある。女性は男性より育児をやるべきだ」
という単純な話ではないんです。
今回のアツの夫婦関係学ラジオでは、この話を深堀りしてみました。
子どもが10カ月くらいになると、後追いが始まりますよね。トイレのなかにまで子どもが入ってきて、ぜんぜん一人になれない経験をした方は多いと思います
ぼくも妻もそうでした。
これはなぜなのかというと、子どもは10カ月頃になると、誰が母親なのかが分かるようになるからだそうです。
母親が目の前から消えてしまうと(ただトイレに行っただけなんだけど)、子どもは強い「不安」を感じます。ひとりで生きてはいけないからです。
そして、自分の命を守るために、「大声で泣く」という唯一の能力を発動させるんです。
この「大声で泣く」という行為は「愛着行動」と呼ばれています。
トイレから母親が出てくると、子どもは安心して泣き止みますよね。
子どもが「不安」で泣き、母親の顔をみて「安心」する関係は、「愛着システム」と呼ばれています。
この愛着システムがきちんと育つことによって、子どもは幼児期以降に感情をコントロールできるようになると言われています。
愛着システムは、子どもが母親を求める愛着行動と、母親が子どもを守ろうとするボンディング(動物的なつながり)によって成立すると言われています。
ボンディングとは、生物としての絆や動物的なつながりと言われており、出産した女性と子どもの間に存在する特別なつながりのことです。
妊娠22週から生後7日間の間には、母親は「乳児の目で見え、乳児の耳で聞こえる」という体験もするそうです。(全員じゃないと思いますが)
出産後も母と子の感覚はつながっていて、そのボンドがあるからこそ、子どもの命を本能的に守れると、大河原さんは言います。
ただ、そうは言っても、ずっと子どもを抱っこし続けるわけにはいかないですよね?
トイレにひとりで入れない。お風呂にも満足に入れない。ご飯だってかきこむように食べるしかない。
そんな生活、いくら子どものためとはいえ、普通にしんどいですよね。
親としては手がかからない子どもの方が楽だから、ぼくらは「大人しい子」が「よい子」だと思いがちです。
そこで必要とされるのが、ぼくら夫なんです。
母親と子どもの間に、ボンド(生物的な強い絆)が出来上がっていると、父親では泣き止まないことがあります。
そこで、母親と競うように子どもをあやすのではなく、「妻と子どもが向かい合えるように妻をサポートする」のが夫の役割なんです。
大河原さんは夫の役割を「母と子の安定した関係性を守ること」としています。
母親の子宮のなかで育った子どもは、母親と密着することで、もっとも効率的に「安心」を得ることができる。
子どもが不安になったときに、効率的に「安心」を得られる関係をボンドが保証しているのだ。
大河原さんはそう言います。
ならば、ぼくら夫はそこになにができるんだろう?
少なくとも、母と子が愛着システムを作るのを見ているだけではないはずです。
妻が心やすらかに子どもと向き合えるように、妻の負担を取りのぞくことが夫の役割なんだろうなと思うんです。
それは、皿洗いかもしれないし、洗濯かもしれないし、授乳かもしれないし、長期の育休を取って、妻の身体と心を休ませることかもしれない。
少なくとも、家事育児をやることが目的ではないことは確かです。
妻が心おだやかに子どもと接することができる環境を作ること。
それが、ぼくら夫の務めなんだろうなと、ぼくは思うんです。
今回の「アツの夫婦関係学ラジオ」では、「母子の愛着を育むボンディング」について、お話ししました。
母性の正体とはなんなのか?
ぼくら夫の役割とはなんなのか?
ぜひ、お聴きください。
■アツの夫婦関係学ラジオ
#438 母と子の愛着を育む”ボンディング”とは?
※「アツの夫婦関係学ラジオ」は毎週月曜木曜の朝5時配信です。
参考文献:子どもの感情コントロールと心理療法
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