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トレ録2

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アイオライトの都合も知らず

 ずしん、と腹に重く響く大地の震えに、フィールドの端にいたユキヤもこんこも足を踏ん張った。カイヤの出した二番手のポケモン、ゴローニャはユキヤがよく知るアローラの姿をしている。
 「ひえー、カイヤの奴容赦ないなあ……!」
 猛毒をその身に盛られて徐々に足元がおぼつかなくなる、セツナのニャヒート・レンに、カイヤのゴローニャ澁牢は問答無用で「ほうでん」を叩きつける。ユキヤは言葉こそ怖がっているような口ぶ

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会場外の小話

 洋館からバトルフィールドに降りる出口のそば。華やかなパーティ会場とは対照的な、人気のないこの場所に、ユキヤとアシマリのてまりがいた。てまりの高さに座り込んだユキヤが、手鞠歌を口ずさんでいる。
「てん、てん、てんまり、てん、て、まり~」
 ぽん、ぽん、ぽん…
 ユキヤの声に何とか追いつきつつ、てまりが泡の球を鼻でつく。月明かりに照らされながら跳ねるそれは、しかし次の歌詞に移る直前でパチンと弾けてし

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氷狐と人魚

【諸注意】※ハピエンではない(バドエンでもない)(オチを投げた)※三次創作のようなもの ※明言してないけど擬人化?擬ポケ化? ※完全パラレル・パロディ・派生、本編?とは無関係 ※最後の最後に正真正銘のよその子をお借りしています ※日本昔ばなしとかファンタジーを読んでる感覚でお読み下さい

 昔々、ある山に九つの尾を持った氷の狐がおりました。狐の住んでいるのは山のてっぺんで、いつまでも地に雪が残って

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きみにもう一色

「わたし、最後にユキヤくんともバトルがしたい!」
 合宿3日め、バトル大会。
 同室のカイヤとのんびり観戦していたら、クレーネちゃんに声を掛けられた。
 「……えっ、あっ!うん、おれでいいなら!もちろん!」
 まさかバトルに誘われるなんて、しかもクレーネちゃんに誘ってもらえるなんて予想してなくて、おれは思わずどもってしまった。めちゃくちゃカッコ悪い。
 「こんこ!バトルだぞ!」
 足元でカイヤのイ

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暁の氷花

【1】

――7年前、ラナキラマウンテンにて。

 麓に足を踏み入れた時には晴天だったのに、最悪のタイミングで天気が崩れてしまった。山の中腹、風雪を凌げる場所も見つからないところで、突然ラナキラマウンテンは大雪に見舞われたのだ。
 今、ユキヤは、猛吹雪の中をこんこと一緒に歩いている。
 はぁっと息をつけば、冷たい風が入れ替わりに喉に入り込んで肺を刺す。吹き荒ぶ突風と氷の結晶が肌を鞭打つ。視界は明

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さしのみ

アローラ地方ウラウラ島、マリエシティのとある居酒屋。月が照らす夜の街と比べ、店内は明るく賑やかだ。
 その一角に置かれた二人掛けのテーブル席で、初老の男性と青年が向かい合っていた。
 「ーーでさ、もうすぐ他の地方じゃアローラ観光の季節じゃん?観光客は俺達みたいにアローラで生活する訳じゃないから、アローラシャツなんかは売り物以外にレンタルもやった方が、手軽に試してもらえるんじゃないかなって思ったんだ

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見えたその色

 まだ日は高く、祭りも続いているのに、なんだか長いこと街の喧騒から離れていた気がする。

 イオちゃんと一緒にこんことスピネル君を追いかけて、セツナ、カイヤ、クレーネちゃんが睨みあう場にたどり着いて。セツナの話を聞いて、それぞれの気持ちを伝えて、そしてジラーチが笑顔で空に消えて――。

 セツナの願いが直接叶ったわけじゃないのは、ジラーチが消えた後、セツナの携帯にかかってきた電話の内容を彼から聞い

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はなばたけ

※名前は出していませんが、クレーネちゃんをふんわりお借りしています

――7年前、メレメレ島にて。

 「うわぁ……」

 そこは圧倒的な景色だった。

 燃えるような夕陽が絶壁の向こう側に沈み、空を染める。赤い空の下では新緑の葉と黄金色の花が、足元から絶壁までの地面を覆い尽くしていた。花畑のそこかしこをアブリーとオドリドリが跳ねている。夜寝る前の、一日最後の蜜集めだろう。

 こーん!

 アブ

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星に願いを

お借りしました:セツナ君、カイヤ君、イオちゃん、クレーネちゃん 

「実はオレ、今はマフィアのボスなんだ」

 「えっ!?」

 あまりにも予想外の言葉を聞いて、俺は思わず声を上げてしまった。クレーネちゃんとイオちゃんも目を見開いている。カイヤだけはただ一人動じなかった……セツナのこと、知っていたのだろうか?

 セツナはそのまま自分のことを語った。親の仕事を継ぎたくなかったけれど、ついには好きな

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能天気の決意

お借りしました:イオちゃん、スピネル君、カイヤ君、孤太狼ちゃん、セツナ君、リク君、クレーネちゃん、(以下名前のみ)ウルク君

それは、風を切る音の中に混じって聴こえてきた。

ウオオオーー……ン

「! イオちゃん、今の聴こえた!?」

「ええ……! 今のは、遠吠えやろか……」

隣を走る青紫色の髪の女性――イオちゃんに確認すれば、彼女の耳にも同じ声が聴こえたという。俺の空耳ではなかった。

俺達

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