氷狐と人魚
【諸注意】※ハピエンではない(バドエンでもない)(オチを投げた)※三次創作のようなもの ※明言してないけど擬人化?擬ポケ化? ※完全パラレル・パロディ・派生、本編?とは無関係 ※最後の最後に正真正銘のよその子をお借りしています ※日本昔ばなしとかファンタジーを読んでる感覚でお読み下さい
昔々、ある山に九つの尾を持った氷の狐がおりました。狐の住んでいるのは山のてっぺんで、いつまでも地に雪が残っているようなところでした。
狐は、山の中ぐらいに住んでいる友達の狼たちの元に遊びに行くのが好きでした。ある日狐がいつものように遊びに行くと、狼たちが言いました。
「なぁ狐、俺たち今度、海辺に住んでる狼との集まりに行くんだ。お前は狐だから狼の集まりには来れないけど、どうせなら集まりの後、一緒に海で遊ばないか?」
それを聞いた狐は嬉しくなりました。狐は、海まで山を降りたことがなかったからです。
「うん、俺も行くよ!」
狐は喜んで答えました。
さて数日が過ぎ、いよいよ海まで山を降りる日になりました。狐が狼たちの後について行くと、目の前に大きな大きな青い海が見えてきました。
海の近くまで来ると、赤い狼が言いました。
「じゃあ、俺たちは海辺の狼たちと会ってくるよ」
狐は頷き、はしゃいだ様子で答えます。
「わかった。俺はしばらく海の周りを歩いてるよ!」
そこで狐は狼たちと別れ、浜辺に降り立ちました。
すっかり楽しい気持ちで歩いていた狐ですが、しかし、磯に来た辺りで、急に頭がクラクラしてきました。氷でできている狐にとって、海はとても暑かったのです。
(どうしよう、このままじゃ体が溶けちゃう)
海が暑いと知らなかった狐は、熱い岩の上に倒れ込んでしまいました。焼けるような痛みで声を上げることもできません。
狐がすっかり困っていると、
「大丈夫?」
優しい声が聞こえてきました。狐が顔を上げると、そこには美しい人魚がいました。
人魚は狐が氷でできていることに気づくと、すぐに海に潜りました。そして、太陽の光で温まっていない深海の冷たい水を掬い、急いで磯に戻りました。
人魚が狐に水をかけてあげると、狐は水の冷たさで元気を取り戻しました。
「ありがとう、助かったよ」
「うん、元気になってよかった」
そう言って笑う人魚に、狐はすっかり恋をしてしまいました。
きっとお礼をするからと、そう言って狐は狼たちのところに戻っていきました。
それからというもの、狐は人魚にお礼をするために、たびたび海へ行きました。山の珍しい花や木の実を採っては、暑くならない夜の間に海を訪れ、人魚に贈りものをしました。
しばらくそうしているうちに、ふたりはすっかり仲良くなりました。狐は人魚を山に連れて行きたいと思うようになりましたが、しかし、それを人魚に言うことはできませんでした。
「あの人魚の子と、ずっと一緒にいられたらいいのになぁ」
狐は山に戻っても、そう考えてばかりいました。
一方、人魚のほうでも、狐の住む山に行ってみたいと思うようになりました。そこである日、人魚は海辺の狼のひとりに相談することにしました。海辺の青い狼は、人魚ととても仲良しだったからです。
「狼ちゃん、狐くんの住む山に行ってみたいんだけど、どう思う?」
人魚が聞くと、青い狼は困ったような顔をしました。
「人魚はん、狐はんのとこに行くのはええけど、気をつけなあきまへんえ。あんさんは人魚やから、長いこと陸の上にいると、体が泡になって消えてまう。せやからお山に登っても、どうかすぐ帰ってきとくれやす」
人魚は大好きな青い狼の言うことに頷きました。
「うん、ちゃんと帰ってくるね」
人魚は固く約束しました。そして尾ひれを足に変えると、山を登って行きました。
さて人魚が山の中ぐらいまで辿り着きますと、木の実を採っていた狐が人魚を見つけました。その時の狐の驚きと喜びようと言ったら、この世で一番のものでした。
「きみとここで会えるなんて嬉しいよ! なあ、一緒に来てくれないかな」
狐が人魚の手を取ってそう言うと、人魚ははにかみながら頷きました。
「わたしもあなたに会いに来られてよかった。山のことを教えてくれる?」
狐は「もちろん」と答えました。そして人魚を連れて、山の上へ上へと登りだしました。
はじめのうち、2人は今までどおり、楽しくお話しながら山を登っていました。ところが、狐の住んでいる山のてっぺんに近づくにつれ、人魚は自分の足が動きづらくなっていることに気づきました。山のてっぺんの近くは寒くて、足がかじかんでしまったのです。
(わたし、時間までに海に帰れるかな)
人魚は青い狼との約束を思い出しましたが、狐には本当のことを言えませんでした。そうこうしているうちに、時間はどんどん経っていきます。
すると、狐がようやく人魚の足がかじかんでいることに気づきました。
「気がつかなくてごめんな。ここはきみには寒すぎるんだ。もう海に帰ろう。送っていくよ」
狐はそう言いましたが、人魚はまだ太陽が空高いところにいるのを見て、首を振りました。
「ううん、ひとりで帰るよ。あなたにとって海はまだ暑い時間だから。ありがとう、さよなら」
人魚は狐に手を振ると、何とか足を動かして、山を下っていきました。
狐はしばらく、人魚の言うとおりだと思って、そこにいたままでした。だけれど、だんだんと人魚が心配になったので、とうとう人魚の後を追うことにしました。
山の中ぐらいまで降りた狐は、ふと地面に点々と泡がついていることに気づきました。一体なんだろうと思っていると、山の狼たちがやって来ました。赤い狼が声をかけます。
「狐、どうしたんだ?」
「狼、この泡は何だろう」
狐に言われて泡を見た狼たちのうち、蒼い狼が答えました。
「こら、人魚の泡やな。海辺の狼から聞いたことがある。人魚は長いこと陸におると、泡になってまうと」
それを聞いた狐はびっくりしました。慌てて狼たちにお礼を言うと、狐は一目散に駆け出します。
やがて狐は、海に続く道の真ん中に倒れている人魚を見つけました。人魚の足は尾ひれに戻っていましたが、その端は溶けて泡になっていました。
狐は人魚を抱き上げ、山を降り続けました。森を抜けて浜辺に出るや、太陽の光が狐の身を溶かし始めました。それでも狐は浜を駆け抜けます。
狐が波打ち際に来た時、海が一際大きな波を寄せました。波は狐の足をさらい、狐と人魚を水の中に引き込みました。
水の中は太陽の光で温かく、氷でできた狐の体はゆるゆると海に溶けだします。すると人魚が目を覚ましました。
「だめ、あなたは陸に戻って」
狐が海の中にいるとわかった人魚は言いましたが、狐は首を振りました。
「俺はもうきみの傍を離れない。きみがこのまま海の泡になってしまうのなら、俺も海に溶けるよ」
狐はそう言って、人魚をしっかり抱き締めました。すると海はさらに波の力を強め、ふたりを水の奥へと引き寄せました。
やがて狐と人魚の姿は、海の底へと消えていきました。ふたりの行方は、誰にもわかりません。
『えっ!?!? 続きは!!!?!?!?』
「ぅえっ!? どうしたこんこ」
昼寝していたこんこが突然飛び上がったので、ユキヤも危うく飛び上がるレベルで驚いた。彼の驚きは、たまたまチャットツールで通話していたセツナとクレーネにも伝わる。
「どしたユキヤ?」
「いや、こんこが急に声をあげて飛び起きてさ……あー、びっくりした」
「こんこちゃんが? どうしたのかな」
「さぁ……こんこ、どうした? 怖い夢でも見た?」
そう言うユキヤに頭を撫でられたところで、こんこは今まで自分が夢を見ていたことに気づいた。
ほっと安心すると同時に、思わずユキヤに飛びつく。
「え~!? ホントに何だよ、も~!」
「ホントに怖い夢見てたりしてな」
「かわいそうに、こんこちゃん……。でも、目が覚めてよかったね」
呆れるユキヤ、苦笑するセツナとクレーネをよそに、こんこは渾身の一声を上げた。
『あ~~ん! あのふたりはどうなったのよ~~~~~~!!』
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