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灯りは光りて炎は揺らぐ
しまった、とマサギが思った時には遅かった。
ドォン!
朝の空気を震わす大音量。バサバサと街路樹から小鳥ポケモン達が一斉に飛び立つ。
今マサギ達が立っているバトルフィールドからマンションの方を見ると、いくつかの部屋の窓が開いた。窓から見える不思議そうな顔や慌てた顔、驚いた顔にマサギは九〇度の礼をする。
「十文字さん! どうしたんですかっ」
マンションのエントランスから、転がるようにイオが出
紅茶はないがほうじ茶はある
ダイマックスという、いまだ聞き慣れていない言葉を耳にして、マサギの反応がやや遅れた。
「……ええ」
マサギが短く答えた相手はマンションの新しい入居者である青年、スコープである。先ほど挨拶して別れたばかりだが、8階の自分の部屋から1階のマサギの部屋まで追いかけてきたらしい。
スコープはマサギの返答を聞いて口を開いた。
「よかったら、今からでも少しは話せるんだけど。どうかな」
「いいんすか
ありがとうとか、すれちがいとか
とある日。冬にしては珍しく、陽光が部屋を温めていた昼下がりのこと。
非番のマサギは、部屋の掃除をしていた。自分の後ろを、リザードのりすけがついて回っては手伝ってくれる。
「りすけ、これ玄関のゴミ袋に突っ込んでくれ」
がう
寝室のクローゼットからそろそろ限界になった古着をまとめて出し、りすけに渡す。まだ処分するものがあるだろうかとクローゼットを覗いたところで、ふと端のハンガーに掛かったスー