天文学者のひとり言

天文学者です。 キーワードは銀河、銀河中心核(超大質量ブラックホール)、ダークマター、…

天文学者のひとり言

天文学者です。 キーワードは銀河、銀河中心核(超大質量ブラックホール)、ダークマター、宇宙論です。 銀河の誕生と進化、そして超大質量ブラックホールの誕生と進化。 宇宙史の中でこれらの出来事がどのように起こったのか調べています。 趣味は読書と園芸です。

最近の記事

ゴッホの見た星空(34) ひまわりの季節

梅雨も明けて、ひまわりの季節がやってきた梅雨が明け、暑さも本格化した。ただ、6月も暑かったので、真夏日や猛暑日には慣れてきた感もある。地球は確実に悪い方向に向かっているのだろう。 それはさておき、真夏だ。ひまわりの季節がやってきた。 東京のImmersive Museum Tokyoで開催された『印象派と浮世絵』展に出かけたら、ひまわりの花をいただいた。 都内のホテルにて展覧会でひまわりをいただいたが、都内の、とあるホテルのロビーで、ひまわりが飾られていた。いったい、何

    • ゴッホの見た星空(33) 浮世絵から《星月夜》?

      『印象派と浮世絵』展@東京東京で開催されている『印象派と浮世絵』展に出かけた。受付でいただいたパンフレットはファンの気持ちをそそるものだった。印象派はオランダの画家、フィンセント・ファンのゴッホ(ポスト印象派、1853-1890)の《星月夜》、浮世絵は葛飾北斎(1760-1849)の《神奈川沖浪裏》(『富嶽三十六景色』の一枚)が描かれている(図1)。 サン=レミの夜空にゴッホが見た不思議な光景1889年6月のある日、フランス南部の町、サン=レミの療養所で、ゴッホは一枚の夜の

      • 宮沢賢治と宇宙(71) 銀河鉄道の旅路

        『銀河鉄道の夜』を読みなおす数年前、宮沢賢治の童話『銀河鉄道の夜』を読んだ。私は天文学者なので、天文関係の話題が出てくると、そこで熟読モードになる。それはよいのだが、天文に関係ない話題が続くと、どうもあまり熱心に読まなくなる。これは悪い傾向だ。要するに、童話として『銀河鉄道の夜』をきちんと読んでいないことになるからだ。  最近、ふと思った。銀河鉄道はいったいどこを走ったのだろう? 「はくちょう座」の北十字から「みなみじゅうじ座」の南十字へ。これが基本の旅だ。しかし、「白鳥の

        • 「宮沢賢治の宇宙」(70) なぜ「日輪と山」は不安定に見えるのか?

          宮沢賢治の絵「日輪と山」賢治の描いた有名な絵がある。「日輪と山」と呼ばれる絵だ(図1)。 葛飾北斎の浮世絵「赤富士」に似ている?「日輪と山」は葛飾北斎の「凱風快晴」(がいふうかいせい)、別名「赤富士」で呼ばれる絵に似ていると言われている(図2)。賢治は浮世絵が大好きだったので、「赤富士」に影響された可能性は十分にある。 なるほど、全体的な雰囲気は似ている。しかし、相違点もある。 [1] 「日輪と山」では、山の頂上が中央部に近いところに来ている。しかし、北斎の「赤富士」で

        ゴッホの見た星空(34) ひまわりの季節

          宮沢賢治の宇宙(69) 青空の果ての果てには何がありますか?

          宮沢賢治の心象スケッチ〔青ぞらのはてのはて〕宮沢賢治の作品に〔青ぞらのはてのはて〕という短い心象スケッチがある。 一〇七四  〔青ぞらのはてのはて〕 一九二七、六、一二、 青ぞらのはてのはて 水素さへあまりに稀薄な気圏の上に 「わたくしは世界一切である 世界は移ろふ青い夢の影である」 などこのやうなことすらも あまりに重くて考へられぬ 永久で透明な生物の群が棲む (『【新】校本 宮澤賢治全集』第4巻、筑摩書房、1995年、266頁) 青空の向こうには何があるのだろうか? 

          宮沢賢治の宇宙(69) 青空の果ての果てには何がありますか?

          宮沢賢治と宇宙(68) 賢治は銀河鉄道から太陽を見たのか?

          夜を駆け抜ける銀河鉄道宮沢賢治の童話『銀河鉄道の夜』。この童話に出てくる銀河鉄道は夜行列車だ(表1)。 なお、銀河鉄道の出発地はジョバンニが町外れの丘の上で見た「青い琴の星」にしてある。これについては以下のnoteを参照されたい。 『銀河鉄道の夜』に出てくる太陽『銀河鉄道の夜』を読み返していたら、ちょっと気になる言葉に出会った。それは「太陽」だ。夜行列車に乗っていて、どうして、太陽が出てくるのだろうか? その箇所を見てみよう。 川下の向う岸に青く茂った大きな林が見え、そ

          宮沢賢治と宇宙(68) 賢治は銀河鉄道から太陽を見たのか?

          ゴッホの見た星空(32) ゴッホに誘われ浮世絵を楽しむ

          金沢で浮世絵の九谷焼先月(2024年6月)、金沢に出かけたとき、漆器や九谷焼のお店を見て回った。いろいろ買ってきたが、最後にお土産屋さんで九谷焼の陶版を2枚買った。葛飾北斎の浮世絵が絵柄になっているものだ(図1)。『冨嶽三十六景』の「神奈川沖浪裏」と「凱風快晴」(通称「赤富士」)である。ゴッホはこの2枚の浮世絵を見たのだろうか? そんな思いで、これらの陶板を買った。 浮世絵がゴッホの絵を変えたゴッホの初期の絵は暗いトーンのものが多かった。しかし、1886年、パリに移ったあと

          ゴッホの見た星空(32) ゴッホに誘われ浮世絵を楽しむ

          懐かしさの徒然に(9) 二つの檸檬

          檸檬 by さだまさしあの日 どうしたの? 湯島聖堂の えっ? どこ? 白い石の階段に腰掛けて 何したの? 君はひだまりの中へ盗んだ えっ? 私のこと? 知らないわよ 檸檬細い手でかざす そういえば、そんなことが・・・ それをしばらく見つめた後で どうしたんだろう きれいねと言った後でかじる 酸っぱそう 指のすきまから青い空に 綺麗だわ、きっと カナリア色の風が舞う うん、爽やか 食べかけの夢を どうするの? 聖橋(ひじりばし)から放る

          懐かしさの徒然に(9) 二つの檸檬

          バルコニアン(33) 「ギャラクシー」見参!

          「ギャラクシー」という名前の花先日、日用品を買いに、近くのホームセンターに出かけた。ご存知のように、ホームセンターには園芸コーナーがあり、花や木を売っているところが多い。私が出かけたホームセンターにも園芸コーナーがある。日用品を買う前に、入り口近くに花が並べられていたので、ざっとみてみることにした。すると、大発見があった。なんと「ギャラクシー」という名前の花があったのだ。 ギャラクシー、galaxyは銀河という意味だ。Galaxyの場合は、私たちの住んでいる天の川銀河のこと

          バルコニアン(33) 「ギャラクシー」見参!

          宮沢賢治と宇宙(67) 銀河鉄道に乗る前に、なぜ青い琴の星が出てくるのか?

          『銀河鉄道の夜』は誰のために書かれたのか?宮沢賢治の童話『銀河鉄道の夜』は誰のために書かれたのか? まず、この問題を考えてみたい。詳しくは述べないが、『銀河鉄道の夜』は妹のトシのために書かれたという考えが多数派を占めている(他には、盛岡高等農林学校時代の友人、保阪嘉内、そして盛岡中学校時代の友人、藤原健次郎が挙げられている)。 賢治は1924年の夏頃、『銀河鉄道の夜』を書き始めた『討議 『銀河鉄道の夜』とは何か』入沢康夫、天沢退二郎、青土社、1976年、131頁。【新】校本

          宮沢賢治と宇宙(67) 銀河鉄道に乗る前に、なぜ青い琴の星が出てくるのか?

          バルコニアン(32) 桔梗じゃなく、カンパニュラ?

          淡いピンク色の花をつけた桔梗前回のnoteで、淡いピンク色の花をつけた桔梗を紹介した。寒い冬を乗り越え、二年越しに咲いた花。この花を見たときは感動した。 ひょっとしてカンパニュラ?しかし、本当に帰郷なのだろうか? 一抹の不安はある。何しろ、よく見る桔梗色(紫色系)の桔梗とは雰囲気が違うからだ(図2)。 そこで、図鑑を調べてみることにした(『新装版 園芸大図鑑』ブティック社、2022年)。すると大発見。「カンパニュラ」という花があった(図3)。桔梗科の花だ。別名は「ベルフラ

          バルコニアン(32) 桔梗じゃなく、カンパニュラ?

          「宮沢賢治の宇宙」(66) 「日輪と山」のユニークな解釈

          「日輪と山」の絵の謎宮沢賢治の描いた有名な絵「日輪と山」は不思議な雰囲気を醸し出している(図1)。 賢治はなぜこの絵を描いたのか? そもそも、賢治は何を描いたのか? いろいろ議論されてきている。その最大の謎は、日輪の色である。 賢治の好きな日輪の色は「白」日輪は太陽のことだが、賢治は日輪という言葉が好きだったようだ。作品には10回以上も使われている。例として短歌三首を挙げておく。 しかみづらの山のよこちよにつくねんと白き日輪うかびかゝれり 雲たてる蔵王の上につくねんと白き

          「宮沢賢治の宇宙」(66) 「日輪と山」のユニークな解釈

          宮沢賢治の宇宙(65) パシフィックの謎

          ランカシャー、コネティカット州、そしてパシフィック『銀河鉄道の夜』の第9節、“ジョバンニの切符”のところで、突然、耳慣れない地名が出てくる。ランカシャイヤ、コンネクテカット州(『【新】校本宮沢賢治全集』第11巻、筑摩書房、1996年、151頁)、そしてパシフィックである(同、154頁)。  じつは、この話の前にタイタニック号の悲劇(1914年4月14日に沈没し、千数百人の尊い命が奪われた)と思われる記述がある。タイタニック号の悲劇が起こったのは北大西洋である。このことを考慮

          宮沢賢治の宇宙(65) パシフィックの謎

          バルコニアン(31) 椿に実がなった

          三年前に買った椿ある日、椿を見たら、実が二つもなっていた。こんなことは初めてなので驚いた(図1)。 この椿は歌舞伎座の地下のお土産売り場に設けられていた園芸コーナーで買ったものだ。針金の誘引で枝が整えられた、高さ20センチぐらいの鉢植えだった。 買ったのはもう三年前のことだが、その後バルコニーに置いてあるだけで、特に注意を払っているわけではなかった。ただ、冬には2輪ほどの花をつけるので、それをみるのは楽しみにしていた。花の形状を見ると、「侘助(わびすけ)」という種類の椿の

          バルコニアン(31) 椿に実がなった

          バルコニアン(30) 去年の忘れもの、淡いピンクの花が咲いた

          気になる鉢植え冬の間、草花は休む。そのため、葉っぱだけになった鉢植えも出てくる。バルコニーの片隅に、そんな鉢植えがひとつあった。 「何の花だったろう?」 鉢植えの葉っぱを見ても思い出せない。とはいえ、冬でも葉っぱは元気にしている。時折、水遣りをして、花の咲く時期を待っていた。 なんと、淡いピンクの花が咲いた!6月中旬になると、花の蕾が出てきた。これは楽しみだ。 そして、花が咲いた。なんと、桔梗ではないか!(図1) 花の色は紫の桔梗色ではない。淡いピンクの花だったのだ

          バルコニアン(30) 去年の忘れもの、淡いピンクの花が咲いた

          バルコニアン(29) オオ! シオカラトンボ!

          トンボの来るバルコニー我が家のバルコニー(マンションの6階)に、今年初めてやってきたトンボはクルマトンボだったという話をした。 このクルマトンボは、その後も、バルコニーで場所を変えながら休んでいる(図1)。可愛いものだ。 また、ムギワラトンボもやってくるようになった(図2)。今年もトンボの季節がやってきた。 オオ! シオカラトンボ一昨日の夕方、和室からバルコニーに出た途端、トンボが飛び立った。すぐ近くだ。動きがあまりにも敏捷なので、クルマトンボやムギワラトンボではない。

          バルコニアン(29) オオ! シオカラトンボ!