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ゴッホの見た星空(33) 浮世絵から《星月夜》?
『印象派と浮世絵』展@東京
東京で開催されている『印象派と浮世絵』展に出かけた。受付でいただいたパンフレットはファンの気持ちをそそるものだった。印象派はオランダの画家、フィンセント・ファンのゴッホ(ポスト印象派、1853-1890)の《星月夜》、浮世絵は葛飾北斎(1760-1849)の《神奈川沖浪裏》(『富嶽三十六景色』の一枚)が描かれている(図1)。
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サン=レミの夜空にゴッホが見た不思議な光景
1889年6月のある日、フランス南部の町、サン=レミの療養所で、ゴッホは一枚の夜の風景画を描いた。それが《星月夜》だ(図2)。
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《星月夜》には、いくつかの明るい星と月が描かれている。どの星座か特定するのは難しいが、星空の風景という意味では問題ない。
問題は絵の中央に鎮座している巨大な渦巻模様だ。この渦巻こそ、観る人をして、《星月夜》を特別な一枚にしている。天文学者の私もこの渦巻には大いに関心を持っている。夜空にこんなに大きな渦巻模様が見えることはないからだ。
渦巻模様の解釈
《星月夜》に描かれた渦巻模様の解釈はいろいろある。以前、調べたところ、なんと八つもの説があった(表1)。
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こんなにたくさんあることに、まず驚く。そして、たじろぐ。いったい、どれが真説なのかわからない。残念なことに、ゴッホはなんの説明も残していないからだ。言えることは一つ。《星月夜》は謎に満ちた絵なのだ。
《神奈川沖浪裏》から《星月夜》へ
『印象派と浮世絵』展を観て大発見があった。それはパンフレットの表紙を見ればわかる。《星月夜》に描かれた渦巻は浮世絵に端を発している可能性があるではないか。
つまり、葛飾北斎の《神奈川沖浪裏》がゴッホに《星月夜》の渦巻を描かせたという解釈がありうるのだ!
展覧会では《神奈川沖浪裏》と《星月夜》が広い会場の壁に並んで大写しにされた(図3)。これを眺めて、「うーん」と唸るしかなかった。
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考えてみれば《神奈川沖浪裏》に描かれている大波は「逆巻く波」だった。波は先端部から落ちていくが、その姿は渦巻だ。「浮世絵」と「数学」を融合して研究している新藤茂は《神奈川沖浪裏》の大波を「北斎螺旋」と名付けている(『北斎と数学』新藤茂、東京美術、2024年、37頁)。
ゴッホは夜空に逆巻く波を描きたくなったのだろうか? 病んでいた精神に気合いを入れ、正常にしたかったのかもしれない(夜空に逆巻く波を描くのは正常ではないが)。いずれにしても、ゴッホの眼にはサン=レミの夜空に逆巻く渦巻きが見えたのだ。
かくして、《星月夜》の渦巻を説明するアイデアは九つになった(表2)。さて、どれを選ぶか・・・。
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とりあえずビールだ。「星月夜ビール」を呑むことにしよう(図4)。
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いや待て。やはり勉強が大切だ。
ということで、『印象派と浮世絵』展では「Hokusai KATSUSHIKA NOTE BOOK」も忘れずに買ったのだった(図5)。印象派も浮世絵も奥が深い。長い旅路になりそうだ。
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