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気象庁を辞めて南極に行って、今は論文を書きながらコンサルをしています

こんにちは。アスタミューゼのテクノロジー・インテリジェンス部(以下TI部)で働いている源(みなもと)です。52歳のおっさんですが、タイトルにあるように、わりと不思議な道のりをたどって、ここに至っております。今日は、おもにアカデミックなところで頑張っている・頑張ってきたみなさんに、こんなキャリアもあるのか、と気づいていただきたいと思って、noteの場をお借りしするものです。

気象庁から南極に派遣され、南極に魅せられ気象庁を退職

私は、20年あまり気象庁に勤めていました。日本最北端の稚内地方気象台で空を見上げていたり、気候変動枠組条約の関連で海外出張にいってつらい目にあったりもしました(このときの経験は、脱炭素に関係した分析に役立っています)が、気象庁でもっとも長く携わったのが地磁気の観測と研究でした。その関連で、30代のころに気象庁から南極の昭和基地に派遣され、地磁気とオーロラの観測をおもに担当しました。で、そのときの素敵な経験が忘れられず、もう一度南極に行きたいと志して気象庁を辞めてしまいました。国立極地研究所の特任助手として2度めの南極に行き、帰ってきたのが2017年3月。現地で得たデータをもとに論文博士をめざして、東京学芸大学の研究員として1年勤めたのちにアスタミューゼに入社しました。

note_源さん南極写真1

オーロラ活動の研究を続けながらも

入社後も、引き続いて南極の観測結果の解析を続けています。私の研究の目標は、オーロラ活動によって、地上で測定される電場に影響が出るかどうかを明らかにすること、です。そのためには、オーロラ以外の、例えば気象条件等による電場への影響(ノイズ)を排除しなくてはいけません。南極での吹雪が電場に与える影響についての論文が、先日受理されました
勤めながら研究活動を続けていくためには、職場に理解があることが条件になります。アスタミューゼにはアカデミア出身の社員も少なからず在籍していますし、私の他にも研究活動を続けながら働いている社員がいます。また、TI部では、シンポジウムや学会に参加することは奨励されます。コンサルタント=激務、というイメージをお持ちの方も多いかと思います。たしかに納品の前には”ねじり鉢巻”で頑張る夜もありますが、毎晩深夜まで、といった働き方ではありません。私は、勤務日を週4日にしてもらっていて、あとの3日を研究に費やすことができています。

アスタミューゼのコンサルタント/テクノロジーアナリストとして必要なこと

アスタミューゼの特徴は、自社のデータベースを活用して見解を出すことにあります。特許、グラント(科研費などの競争的研究資金の申請・報告書類)、論文、ベンチャー企業などの技術情報をデータベースから抽出して、技術的な評価を経て、コンサルティングやレポートの材料に使っていきます。例えば、洋上風力発電についてのレポートを作成するときには、データベースから関係する特許とグラントのリストを作成します。その際には製粉や風速計として用いる風車のような“ノイズ”が紛れ込まないようにデータを抽出する必要があります。このリストから、特許はスコアリングして重要なものを選び、グラントは付与金額の順に読み込んでいって、高く評価される特許、多額のお金を集めているグラントにはどのような傾向があるのか考察し、レポートをまとめていきます。

アスタミューゼで技術コンサルタントとして働くために必要なスキルとして、主に以下の3つがあると私は思っています。​

・データベースを叩く技術
 ANDとORを組み合わせて、欲しいデータを取り出すための論理的な思考力は必要です。
・抽出されたデータを咀嚼する能力
 出てきたものが求めていたものか、読みこんで判断して、さらに新しい気づきを得るために必要です
・データについての考察をプレゼンする芸
 クライアントの思いもよらなかった、以外な気づきを提示することができれば、価値=勝ち、です。

これらの技術は、アカデミアにて経験を積んだ方々の多くが、長年の苦労とともに身につけているのではないでしょうか。もちろん、向き不向きはあると思います。私見ですが、自分の専門分野一筋に、という方は(尊敬しますけど)コンサルには不向きかもしれません。いろいろな技術が気になるタイプの人のほうが、担当した案件についてのアウトプットを示すためには有利です。私自身、南極での経験が今の仕事に役立っている点としては、水、電気、廃棄物処理といった様々な技術がごく身近なところにあり、そのエキスパートから直接、お話をきくことができた(そして仕事を手伝った)事が大きいです。

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Ph.Dを取得したとしても、必ずしもやりたい研究が順風満帆に進み、全ての人が任期なしの職を掴めるわけではありません。でも、アカデミアが好き、研究が好き、そんな方にとって、アスタミューゼのTI部は積み上げてきた経験を活かせる、少し意外なキャリアになるかも知れません。

note_源さんプロフィール

※研究者としての経歴はこちらをご覧ください