マガジンのカバー画像

三分小説

3
明日ノ澪の三分小説
運営しているクリエイター

#短編小説

【三分小説】命綱

【三分小説】命綱

僕はね、今も昔も、はっきり言って生きづらいんだ。
今から話すのは過去にあったできごとの、ひとつ。
辛かったら、途中で読むのをやめてもいいからね。

靄のかかった冬の薄明かり。
芳醇な香りが辺りに漂っていると錯覚するくらいに濃い夕方。

中学3年生の僕はひとり、下校途中の高校生たちが行き交うのを、橋の上から眺めていた。

彼らは未成年という名の下、支配され、みんなどのように息をしているのだろうか。と

もっとみる
【三分小説】バス停

【三分小説】バス停

蟹クリームコロッケが一欠片落ちた。
そしてわたしは1か月前、
新しいアルバイトをはじめた。

___________________________________________

決まって黒猫が横切るバス停。
わたしは週6日
夕方になると
日曜日の夕飯を作るような気持ちで
大きなバスを待つのだ。

店の前に着く頃には、
街は琥珀色に輝きはじめている。
暖かそうに見えるが、心は冷たかった。

もっとみる