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発達障害と成熟

 「発達障害者は子供っぽい、考え方が幼い」と言われやすいことに対し、当事者の界隈ではそれを劣等感に感じ、自虐的に語る風潮が見受けられます。例えば「精神年齢が実年齢の2/3歳」などと言っており、自分も言われると劣等感を感じますし、成熟に対する何らかの思い入れがあるのでしょう。

 確かに、言語化が苦手、社会性が乏しい、俯瞰して物事がみれない、変に頑固、後先考えずに動く、自己管理が苦手などと、社会生活をする上でマイナスに作用することが多くあります。

 知人から発達障害の成功者として、ビル・ゲイツ、エジソン、イーロン・マスク、米津玄師などの著名人を例に挙げ、「障害があっても努力で成功している偉人を見習ってあなたも頑張れよ」のような謎の励ましを受けることがあります。
 しかし、社会の需要にマッチした偉業を成し遂げる人は少数派であり、偉人を引き合いに出されても、一介の当事者として「それ再現性あるの?」と思いますし、大方の当事者は偉人を目指していないでしょう。

 定型発達者側からすれば、発達障害当事者に「定型発達者の大谷翔平や新垣結衣も努力して成功しているのだから、あなたも努力すれば成功できるよ」と言われたら、きっと嫌な思いをするでしょう。

 話がやや逸れましたが、発達障害と成熟に関連する文献を見つけることができず、また益田先生の動画を参考にさせていただきました。 

人格=体質・知能×経験値×疲れ×環境…etc

 この図式を見て「なるほどな」と思いました。知能の影響、経験値の差、環境要因があるのは納得ですが、さらに「疲れ」を入れてきたところが面白いと思いました。確かに疲れていると前頭葉の機能が低下し、パフォーマンスが落ちそうです。

「これまでの経験を言語化し、次に応用できるか?」というのが成熟の度合いだと思います。経験というのは「経験値」で、言語化や応用は「知性」の問題だと思います。

 ASDや知的障害を抱えていると、経験を言語化すること、抽象化して応用する事が機能的に苦手と言われています。そして経験値はその人の育ち次第では「不安」が強いことで、挑戦への恐れから成功体験も必然的に少なくなり、さらに不安と自信のなさから、全く挑戦しなくなり、経験値が一向にたまらない悪循環もありそうです。

 ASDの特性としての“こだわり”は不安の強さの表れと主治医に言われており、自分の治療も不安の改善をターゲットにしています。

 そのため、ASDを抱えていると不安の強さから新しいことへの挑戦が乏しく、機会の少なさから経験値が貯まらないことに加え、経験しても言語化や抽象化の困難さがあり、成長や成熟が同じ経験をした同年代と比べて遅れる側面がありそうです。

 ただ、成熟というのは、主観的で、恣意的、人の価値観に左右されるものなので、人から一方的に成熟を求められる事に違和感を感じます。

 それでも主体的に成熟を試みる行為は続けていきたいです。なぜなら幼稚なままでいることは年齢を重ねるほどに、どんどん「生きづらさ」が増すと感じるからです。

 成熟に明確な指標はおそらく存在せず、人それぞれの価値観に左右されるため、基準を設けるのは難しいです。無理のない範囲で研鑽を重ね、成熟を目指すことで自分にとってよりよい適応的な生き方を獲得していきたいです。


※参考動画


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