見出し画像

塔公(中国)2018


チョルテン  Chorten

 2018年の夏は理塘に行くと決まった。川蔵公路(南路)というのがあり、これは四川の成都からチベット自治区のラサを結ぶ標高3000mから4000mぐらいのチベット高原を走り抜ける天空の大動脈だ。これに沿って成都から西にひたすら走る。しかし、どこか面白そうなところで寄り道できないか?と考え地図を広げると塔公(標高3780m)が目に入った。沿線上ではなく新都橋というところで北上するのだが、それほど大きく外れるわけでない。実はここには去年にも来たことがあるけど、その時はわずか数時間だけの寄り道に過ぎなかった。しかしゴンパ(主にチベット教の寺院のこと)の裏にあるチョルテン群(仏塔のこと)はとても素晴らしく、このエリアでこれほどのまとまった数のチョルテンは記憶にないので、もし日程に余裕があれば一泊できたのにと思っていた場所だった。そして何より不思議に感じたのはこれほど立派なチョルテンがあるにも関わらず塔公には観光客がほとんど来ない静かな町で、ゆっくりゴンパや草原を眺めながらのんびりとチョルテンを撮影できるだろうという点も魅力だった。今回もやはりゴンパの裏にそびえるチョルテン群には観光客はゼロ(笑)。今回はほとんどの日程で雨にやられたがこの塔公滞在時だけは青空広がるチベットらしい天気となった。青空の下で天空に向けられた白い頂。こうやってチョルテンを眺めているとチョルテンは雪山のイメージを持って白く塗られているのではという気持ちになった。実際、色の由来はわからないけど、別の色だと全く青空との相性はよくない。やはりチョルテンの白は青空がよく似合う。



マニ石  Mani Stone

 塔公にはもう一つ見所がある。塔公より少し南の郊外にマニ石が刻まれている所がある。マニ石というのはチベット仏教の経文が彫られた石のことだ。以前に玉樹(ジェクンド)でもマニ石寺というのがあり、マニ石を山のように積み上げられたところを見に行ったことがある。そこの場合は巡礼者がマニ石を持って行って積み上げられている。つまり人間が手で持って行ってそこに積み上げていくわけだ。それに対し、塔公の場合のマニ石というのは一つ一つが馬鹿デカイ!人が持ち上げるとは考えにくいサイズなのだ。したがってこっちの方は初めからそこにある石に対して経文を刻み込んだのだろう。もちろん小さいのもあるので、こちらの方は人が持ってきたものだろうけど。このマニ石が道路を挟んで山側と川側に分かれて無数に並んでいる。ちょっとアクセスが悪いけど是非見ておきたいポイントだ。


ターゴン  Lhagang  塔公

 塔公ゴンパのすぐそばに宿泊し、翌日の早朝からゴンパでの朝の勤行を見学させていただいた。日が昇る前に当番であろう二人の若い僧侶が法螺貝を手にゴンパの入り口にやってきた。まだ薄暗い空気の中で腕時計を見ながら時間になると法螺貝を鳴らしはじめ、朝の起床時間を知らせる。独特の中低音の響きがゴンパ内にこだまし、この朝の合図から15分ぐらいであろうか、一部は眠そうな目をこすりながら赤の僧衣をまとった僧侶たちが次々とゴンパにやってきた。そうすると今まで静かだったゴンパそのものも、僧侶の気配や灯されるバターランプで起きだした感じだった。ゴンパ内で読経や祈祷が行われ、最後にバター茶などが振舞われている。約2時間の勤行で終了し、各自自分の部屋へ戻っていく。

 ところでこの塔公は町が大きくないのに多くのチョルテンやマニ石などがある。町に何か仏教的な由来があるのでは思い検索してみた。大雑把にまとめて書いてみるとこうだ。

 塔公はチベット語で「仏陀が好きな街」を意味する。唐の時代、皇帝太宗は西の国境地帯を統一したいと考え、チベット王国の吐蕃からの要求で文成公主(唐の皇女、つまり皇帝の娘)を送った。つまり政略結婚だ。その時に釈迦牟尼像も一緒に送ったのだが、塔公まで運んだ時にその釈迦牟尼像が何とこうしゃべったらしい「ここはとても幸せで美しいところだなあ!私はもうここから進まないぞ」 困った文成公主はこう言った「私はあなたをラサへ持っていかなければならないのです」 釈迦牟尼像「ならば私と同じものを塑像して、それをこの塔公に置いていってください。そうしたら私はラサへ行きましょう」 そこで早速この塔公の地で複製を作成しオリジナルをラサに運んだ。

 伝説が本当かどうかは別として、実際にラサの大昭寺と全く同じ形の釈迦牟尼像がこの塔公ゴンパに鎮座しているという。そこからの縁でラサまで巡礼に行けない者は代わりに塔公の釈迦牟尼像を拝めば同様の効果と功徳があるとまでされているらしい。

 実際に塔公は釈迦牟尼像の言ったとおり、草原の広がる美しいところだ。観光客の少ない静かなところでもある。草原では乗馬もできる(私はしなかったけど)他のエリアではちょっと話声が大きくてうるさく感じる中国人の団体もいない。もうここから進まないぞ、とまでは思わないものの、有名なゴンパの街だけでなく、せめてゆっくりとチョルテンとマニ石と草原を楽しむようなちょっとマニアックな街も旅程に入れてみるのも大人旅っぽくていいと思う。


超マニアックな海外の辺境で色々撮影しておりSNSで情報発信してます。
もし興味があればフォローよろしくお願いいたします。

ホムペ
X (旧 twitter)
instagram
threads
facebook
youtube

この記事が参加している募集

旅のフォトアルバム

一度は行きたいあの場所

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?