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ローイクラトン(タイ)2009
ローイクラトン Loy Krathong
タイの灯篭流しともいわれるローイクラトン。灯篭流しの幻想的な光景に日本の灯篭流しの光景がだぶるが、タイの方は 「農業の収穫に感謝し、川の女神(コンカ)に祈りをささげるお祭」 ということのようなので、日本のように灯篭そのものに死者の魂などの意味合いはない。仏教がメインの国で形は似ているが灯篭の意味合いが全く異なっている。つまりタイの方は意味合いとしていわゆる収穫祭としての方向性であって先祖供養的な日本のとはかなりベクトルが違う祭りとなっている。それにしても水面に浮かぶ多くのクラトン(タイ語で灯篭)は日本人からするとどことなく魂を象徴する炎というか供養の炎のようにみたいに見えてしまうは仕方ないことだろう。日本人には仏教的祭事と炎というのが伝統的に先祖供養のものとして結びついているような気がする。
このローイクラトンの発祥はスコータイだという。13世紀、王妃が川の女神コンカへの祈りをささげ、バナナの葉で蓮の花の形をしたクラトンという灯篭を川へ流したことが始まりという。きっと当時は農業としての川の役割が極めて大きかったと思われる。現在まで続くこの伝統は規模が大きくなり、今やタイ全土で大規模な一大祭りとして進化した。チェンマイではイーペン祭りとよばれ、コムローイと呼ばれる熱気球を飛ばす。この無数のコムローイが空を舞う絶景が有名なので非常に悩んだが、灯篭を流すというちょっと伝統的(?)な光景が見れるんじゃないかと期待し、無数のコムローイ(既に有名で写真も出回っているし)ではなく発祥であるスコータイでこのローイクラトンを撮影してみることにした。
スコータイ
スコータイ遺跡を中心とする歴史公園で大規模イベントとしてのローイクラトンが行われる。他のところでも個人的にクラトンを流す人は当然いるだろう。スコータイ歴史公園で歩き回ると目立つのは3代目大王ラームカムヘンの像。この歴史公園内のいたるところで目にするこの大王の時代にスコータイ王朝の黄金期となった。調べるとタイ文字の制定、上部座仏教の保護、商売の自由化、相続税の廃止、周辺国との同盟。少なくとも帝国主義的に武力で領土を広げようとしたわけではなさそうだ。結構意外なのは犯罪被害者の国王への直訴制というのもあって温情主義的な施政を行っていたという。ポークン(父)と呼ばれ、いまだにタイ国民に人気のあるラームカムヘンは自ら仏教の信者となり(当時は一部がスリランカに上部座仏教留学していたらしく、タイでは盛んではなかったらしい)ブッダの教えを広めた。今のタイ仏教の元はこのラームカムヘン大王のおかげなのだ。軍事力で国民を押し付け他国を侵略して栄えたわけではない大王にはある種の理想郷に近い思いがあるのだろう。
スコータイのローイクラトン
ここでは少なくとも当時は三日間ほどの日程で様々な催し物が行われる。元々は灯篭を流すための祭りであったと思うが、現代になってミスコンテストやクラトンコンテストやパレードやミュージカルショーなどイベント盛りだくさんの近代的な祭りに変貌していったようである。ここで行われているイベントをちょっと簡単に紹介してみようと思う。
クラトンコンテスト
自然の素材で作られたと思われるクラトンは見た目の造形だけでなく、ちゃんと水にクラトンとして浮くかまで審査される。
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タイ古典武術
こちらはどちらかといえば外国人向けのイベントだろう。実際に見ている人は外国人が多かった。
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スコータイ時代の再現
当時の服装や髪型の村人が当時の様子を再現しているエリアがある。食事や機織りなどの再現もあった。クラトン売り場があり、多くの様々なサイズのクラトンが並び夕方になると買い求める地元民でにぎわう。
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マスクダンス
こちらは様々なイベントで行われるものでローイクラトン特有ではないのかも。
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パレード
踊り子やら色々出てくる結構長いパレード。昼間のメインイベントだ。ここで気になるのはオレンジ色の服に黒いマスクをかぶった不思議な人物。これは実はアイフォイと呼ばれるスコータイ地方のみのキャラクターで、昔に実在した人物がモデルらしい。どうやら少し知的障害があったという。そのアイフォイは寺に住んでいて村人にいたずらをしたりしたが根がいい人で当時の村人に慕われていたという。
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ミュージカルショー
スコータイというよりもラームカムヘン大王の生涯を紹介する内容となっていたように思う。当時としてはド派手で大規模な演出で結構ビックリした記憶が。
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その他にも公園内の寺院では様々な儀式があって見ていると厳かな気分になってくる。托鉢などは観光客ではなく地元民が基本的に行っていると思われローイクラトンとは直接関係ないかもしれないが、この期間内において盛大で大規模のが行われていた。
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灯篭流し
夜になると仏像やパゴダにはロウソクやらイルミネーションで飾り立てられ暗黒に浮かぶ幻想的な光景となっていた。川辺には多くの人が集まり、次々と灯篭に灯りを点け川の流れに浮かべている。人々は川に浮かぶクラトンに祈り捧げていくのだ。漆黒の流れに浮かぶクラトンは収穫そして水神の感謝の気持ちの表れだ。当時の人は暗闇に浮かぶ灯りに感謝の気持ちを載せていた。川辺を離れ沖に流されていく灯は暗闇の中で見えざる水神の手によって運ばれていくようだ。今年はコロナで祭りそのものがどうなったかわからないが、大規模の祭りはないにしろ個人で灯篭を流す人はいるだろう。コロナで世界の観光地は大打撃を受けた。スコータイとて例外ではないだろう。今年のローイクラトンには収穫の祈りだけでなくコロナ収束の願いも込められているのかもしれない。
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