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和ハーブ希望の物語

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和ハーブタロットに登場する和ハーブたちの姿や歴史から感じる希望の物語
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#詩

10月「ハマナスの実に寄せて」

10月「ハマナスの実に寄せて」

夏に紅紫色の花を鮮やかに咲かせ、秋に結実するハマナス。
海辺に育ち、花は青い海を背景に1日だけ咲いて、散っていく儚い一日花。
一方、実はたいへん固く水も吸わず、落ちてもすぐには発芽しないガンコ者です。

ある日、実はぽとりと落ちて、長い海の旅に出ます。
「私の土地はどこかい?」「私が住まう砂浜はどこかい?」
新天地を夢見ながらも、自らの意思だけで辿り着けない希望の土地を目指して。

波に揺られて、

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9月「和薄荷に寄せて」

9月「和薄荷に寄せて」

ハッカ(薄荷)とはいわゆるミント(Mint)のこと
スース―する清涼感は、とても気持ちいい。

紀元前4000年前のエジプトから、
ハッカは気が遠くなるほど長く、世界中で愛されて、
日本でも紀元前60年頃には、栽培が始まったといわれる。

人の手から手へ、
どこまでも人の暮らしに浸透していったハッカ。
その過程で交雑を繰り返し、いまや600種を超える。

なんと順応性の高い、人に従順な植物だろう。

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8月「葛の花に寄せて」

8月「葛の花に寄せて」

クズの花は、蔓と少し大きめの葉の間から顔を覗かせ、
紫色の房を空に向かって咲かせます。

あまりに繁茂しているので草刈りを始めると、
蔓がほかの木々や草と絡み合っていて、
どこから手をつけたものか迷ってしまいます。

もちろん、クズはそんなことはお構い無しに
元気いっぱいに、
眩しい陽を浴びてきらめいているようです。

そんな中、
甘い花の香りが漂ってくると、
私は過ぎ去りし真夏を思います。

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4月「春嶺の彩‐野生のサクラ、ヤマザクラ‐に想う」

4月「春嶺の彩‐野生のサクラ、ヤマザクラ‐に想う」

暖かい日が増えてくると、山の芽吹きが始まる
薄黄緑色~白っぽい黄色が山をおおう

そのなかに、ぽつりぽつりと
赤茶色の葉と白い花が、織りあうようにピンク色の樹冠を作っている
野生のサクラ-ヤマザクラだろう
他にも、わたしの住む地方では
オオシマザクラ、エドヒガン、マメザクラなども見かける

毎日のように山を眺めているが
野生のサクラたちはみな、思い思いのタイミングで花開く
一気に咲く木もあれば、の

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3月「ヨモギが芽吹く頃に」

3月「ヨモギが芽吹く頃に」

早春の森を歩いていると、足元に芽吹きはじめたヨモギを見かける
指先でつまむようにそっと触れる
薄黄緑色のとても柔らかい葉
和菓子のような―誰もが良く知っている―春らしい香りがする

ヨモギは草餅に炒め物、汁物の薬味など料理に
煎じてお茶やうがい薬に、そしてヨモギ蒸しと、薬草としても利用される
また、葉の裏には毛が生えていて、それをあつめたのが艾(もぐさ)

日本にヨモギがやってきたのは平安時代

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2月「2月の花―梅―」に想う

2月「2月の花―梅―」に想う

立春のころには咲いている梅の花、
もう少しで春が来ると感じる人は多いだろう

弥生時代ごろに日本にやってきて、
奈良時代末の万葉集には119首詠まれている
現代でも、梅見、梅酒に、梅干し、梅雨と身近にあって、
私たちの暮らしに、心に入り込んでいるのだ

学問の神として祀られた、かの菅原道真公には
梅にまつわる伝説がある

「公が太宰府へ左遷の折、
庭の桜は悲しむあまりに枯れ、
松は公を追って空を飛

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1月「松竹梅-松の生き様に寄せて」

1月「松竹梅-松の生き様に寄せて」

年の節目になると、ああもうこんな時期かと思う
年初ともなれば、新しい抱負や具体的な目標を掲げ
今年こそはと揚々とした気持ちになるものだ

年神さまを迎え祀るための門松に、松竹梅の正月飾り
松・竹・梅と縁起良いとされる植物たちが並ぶ

いずれも雪や寒さに耐えながら、
常緑の松、色褪せず育つ竹、残雪のころに花開く梅と、
美しくたくましく健やかな姿こそ慶びと
心を寄せた人々の想いが込められているそうだ

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12月「年の瀬に橘から思う」

12月「年の瀬に橘から思う」

師走、12月2日〜6日のころ
七十二候では「橘始黄(たちばな始めて黄ばむ)」という。
橘は古い時代から日本にあるミカンの一種。
かつてはミカンを総称してそう呼ばれていたそう。

そのまま食べるには酸っぱいが、爽やかで香り高い。
文化勲章の意匠であり
「不老長寿」「悠久の繁栄」「栄誉」を願う縁起のよい常緑低木である。
その実が黄色く色づき始める。

暮らしでは年の瀬を感じ始めるころ。
数多の人が1年

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11月「チャノキ(茶の木)に寄せて」

11月「チャノキ(茶の木)に寄せて」

チャノキの花は、白く小ぶりで、葉の影に俯くようにして咲く。
そんな花姿からか、花言葉は「追憶、純愛、謙虚、思いを辿る」などがある。

チャノキはいわゆる「茶」だが、その花をみる機会は意外と少ない。
広大な茶畑が、白い花畑になることはない。
葉に栄養を行き渡らせるため、蕾のうちに刈り取ってしまうらしい。

また、チャノキは栽培が広まった結果、山間に自生しているものも多い。
人里離れた場所でチャノキが

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