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女性評論家ルーシー・リパードは、「アートの非物質化」を分析した

ルーシー・リパード(ルーシー・R・リパード/Lucy R. Lippard、1937- /US)
アメリカのライター、芸術批評家、活動家、キュレーター。リパードはコンセプチュアル・アート(Conceptual art/前衛芸術運動、また、日本語では、概念芸術) での「芸術の非物質化」を分析した、60年代後半の批評家の一人であり、フェミニズム・アート(アートでの女性解放思想)の支持者でもある。

ルーシー・リパードの「芸術の非物質化-1968」は、コンセプチュアル・アートを理論構成をより補強したと言える、この時代の代表的なテキストだ。
この「芸術の非物質化」では、ルーシー・リパードは、オブジェ(object/物体)の概念を否定するような1960年代美術の非物質的な観念性を指摘し、その過程で美術作品は、「非視覚的」で「超概念的」な傾向を強めると述べている。そして、このテキストが、モチーフ(アート表現の動機づけ)を与えたのは、友人関係にあったソル・ルウィット(Sol LeWitt,1928- 2007/US)の制作であったと考えられる。ソル・ルウィットの実践は、数学的定理や幾何学的原理によってコンセプチュアル・アートとミニマリズムの双方を架橋(かきょう/かけわたし)した。
(註)マイケル・フリード(Michael Fried、1939年 - /US-美術評論)は、ミニマリズムの芸術について、ロバート・モリス(Robert Morris,1931-2018/インスタレーション-レディメイドも活用した)やドナルド・ジャッド(Donald Judd,1928–1994/US)の作品に見られる観念の実体化こそを批判した。そして、ルーシー・リパードもまた、ロバート・モリスのミニマリズムを定義するうえで、その形態的な単純さよりも、むしろデュシャンに通じるような観念性の方向性に注視しているのだ。余計に、難解になってしまった・・
要約して、かんたんにまとめると、ルーシー・リパードの論考は、「非物質性・概念性」という論点から、コンセプチュアル・アートとミニマリズムとの境界が曖昧に受容されていた、1968年当時の状況を生々しくドキュメントしていると言う事だ。
ルーシー ・リパードのミニマリズムへの後押しは、そのアーティストにとっての影響は大きいだろう。

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略歴- Lucy R. Lippard
1958年、スミス大学(Smith College)
1962年、ニューヨーク大学(New York University)で芸術史MA
1958年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の図書に勤務。
そして、ルーシー ・リパードは、夜勤をしていたソル・ルウィット(Sol LeWitt,1928- 2007/US)とMoMAで出会う。ダン・フレイヴィン(Dan Flavin, 1933–1996/US)、ロバート・ライマン(Robert Ryman,1930-2019/US)、アル・ヘルド(Al Held ,1928 -2005/US-画家-Hard Edge) 、ジョン・ポーソン( John Pawson,1949- /UK-ミニマリストな美学で知られる建築家)もこの時期に美術館にいた、その時期だ。
1966年以降、フェミニズム、芸術、政治等に関する20冊以上の書籍を出版し、文芸批評家や芸術団体から多くの賞と称賛を受けた。
このポイントは、コンセプチュアル・アートが出現する、この時代の議論を作り出せるルーシー・リパード の学識は、芸術制作と批評の時代における、同時代の理解は、彼女が重要な立ち位置にいた、と言うことだろう。
1976年、ルーシー・リパード は、ソル・ルウィットと、非営利のPrinted Matter、Inc.(アーティスト・ブック-コンテンポラリー・アート)を共同設立する。
そのリサーチはコンテンポラリー・アートの学識と研究論文の基礎を形作ったと言えるのは、この時からだろう。
それは、美学にいわゆる政治性を浸透させ、倫理的な視点のないものを、ある意味、軽視しているのかも知れない・・
かんたんにまとめると、アート制作(極)が非物質化へと向かうと言うことは、見る側の視点(極)の広がりを与えたと言う事だ。


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