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【創作】美術展で【スナップショット】


 
デジャブって信じる?
 
この光景は
前にどこかで見たことがある
ってこと?
 
そう
 
どうだろう
体験したことがないから
分からないな
 
私は今感じている
この絵に
 
この絵のこと?
これは中世の絵だ
狩りをする沢山の人たちがいて
森の中を駆けている
 
色とりどりの服を着て
馬に乗っている人たちがいる
棒を持って
犬たちがいて
暗い森の中を駆けている
 
この絵に懐かしさを感じる?
 
懐かしいとも違う
この絵の場所に
私は立っていたという
不思議な強い感覚
夢で見たことが
あるのかもしれない
 
不思議だ
この時代のこの場所に
興味がある?
 
いいえ、良く知らない
 
それなら本当に
夢で見たのかもしれない
この馬に乗っている人たちのように
君も夢の中で
森を駆けまわっていたのか
 
分からない
もしかしたら
追われている
キツネやウサギの
方だったのかもしれない
ただこの場所にいたという
感覚だけが残っている
 
他にこうした絵を
見たことがあるのかな
 
そうかもしれない
 
何か別の絵を思い出せない?
 
ああ、今思い出した
この絵、小さい頃
私がおばあちゃんに読んでもらった
絵本にそっくり
その絵本は森の中が舞台で
仲のいいウサギが二羽
夜踊っていた
そしたら
花の茎と白い花でできた
大切な指輪を落としてしまう
二羽のウサギは
必死になって
その指輪を森の中で探していた
その光景をすごく覚えている
 
その森が
この不吉な感じの森に
似ていたんだね
 
うん、そう
よかった
すっきりした
それにしても不思議だね
その作者の人と
この画家は何にも関係がないのに
 
時や場所を超えて
偶然似てしまうことがあるんだね
 
本当に
ねえ、もしかしたら
前世だとか
デジャブだとかっていうのは
こういう錯覚に過ぎないのかな
私は最初
この場所の中にいたと感じていた
今の時代に生まれ変わる前
前世はここにいたというくらいの
強い感情を覚えた
それも、結局昔見たイメージの
錯覚に過ぎないのかな
 
僕らに前世を確かめるすべがない以上
それを判断することはできない
でも、仮に
偶然見たイメージの集積を
前世や懐かしさと僕らが錯覚しても
それはちっとも悪いことじゃない
だって、僕らは偶然によって
色々なものに出会って
その中からあるイメージを膨らませて
それを大切なものと思って生きている
もし前世の記憶を持っているなら
それも一つの偶然だろう
君と僕が出会った偶然と同じ
そうした偶然が
自分にとって
必然だと感じられるくらい大事かどうかが
本当に大切なことだと思う
 
本当にそうだね
今は君のことを好きだけど
そんな強いイメージを感じられていない
でも、やっぱり大切な人だし
これから
この絵に感じたような
何かの強い思いを覚えるくらい
ずっと一緒に居続けたい
って思っている
 
そうだね
僕も同じだ
それと、この後指輪を買いに行くから
さっきの話に
少しどきっとしたよ
君が何か不安を
感じているのかと思った
ウサギみたいに落とさないように
しないとね
 
うん、そうだね
大丈夫
それは私がちいさい頃読んだ
本の中での話
私はもう子供ではないから











(終)


※【スナップショット】では
ワンシチュエーションでの
短いダイアローグや詩を
不定期に載せていきます。

※過去の「スナップショット」置き場



今回はここまで。
お読みいただきありがとうございます。
今日も明日も
読んでくださった皆さんにとって
善い一日でありますように。
次回のエッセイや作品で
またお会いしましょう。


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